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先生が来たことで、場所が体育館裏から生徒指導室? に変わりました。
長机が二つ並べてあり、私と亮くん、向かい側に女の子三人が座り、先生は間に立ちました。
「さて、複数の生徒が、体育館裏で女子の怒鳴り声がしていると知らせてきたんだが」
何があった? と先生が問う。
女の子達を見ながら言ったけど、三人は俯いたまま何も言わない。
さっきの威勢はどうした? とか意地悪はいわないよ。思っちゃうけどね。
先生は軽く息を吐くと、今度は私の方を見た。
「帰ろうとしたらこの子達に呼ばれて、連れていかれて、亮くんに近づくなとか……まぁ、色々言われました」
正直に話します。横に座ってる亮くんが恐いからね。嘘ついてもすぐバレるし。
簡潔に言えば、亮くんが、色々ってなに。と突っ込んできた。
「え~、いろいろ…」
「色々って、何?」
亮くんが真顔すぎて恐いよぅ。そんな細かいことはいいじゃない。駄目? 言わなきゃ駄目? ……はーい。
亮くんの目力には勝てません。
「亮くんの弱み握ってるとか、色目つかってるとか。えっと…ブスとか胸ないとかチビとかデブとか?」
なにぶん怒鳴るから聞き取りにくくて、分かった範囲でのことを言えば、先生は深くため息を吐き、亮くんの雰囲気がさらに恐くなりました。
亮くん、寒く感じるのは私だけですか?
あ、女の子三人も震えてるわ。
「晶子は標準…よりもむしろ痩せてるし、ブスとは思わない。身長なんて個人差だろう? 俺の弱み握るとか考えもしないだろうしな」
お前らに晶子の何が分かる? と亮くんが低い声で言った。
胸ない発言はスルーしてくれました。まぁ亮くんだからね。当然の配慮ですよね。……私の胸がないとか、肯定だから言わないとかじゃないよね?
亮くんの反論? に先生は苦笑い。女の子三人は顔色を悪くして、涙目です。
亮くん、そんな真正面から睨むのは止めてあげて。
「三人は? ええと、」
「あ、神代です」
「神代の言ったことに間違いは? ないのか」
先生は、どうすっかなぁ。と暫く考えた後、三人に今後同じことがあれば親を呼び出すからな。と厳しい口調で言って終わった。
三人は俯いたままトボトボと帰っていきました。
残された私と亮くん。先生に、次何かあれば直ぐに言うこと、呼ばれても一人で行かないこと。など注意をされました。
「もう帰っても良いですか?」
「神代、大丈夫か?」
あまりに普通の態度な私に、先生が心配そうに聞いてきた。
全くと言うわけじゃないけど、気にしてないから、大丈夫です。と頷いておく。
どちらかと言えば、漫画みたいだなぁ、とちょっと他人事みたいに思っていたりするのです。
「いやぁ、女の子って怖いね」
「神代も女の子だろうが」
「私あんなにアクティブになれません」
微妙な空気を変えようと笑って言えば、先生は呆れてから、私の話に乗ってきた。空気が読めますね。
「晶子、今日は家まで送っていく」
「亮くん?」
「あ~、そうだな。念のため一緒に帰りなさい。神代の親御さんには…」
「俺が説明しておきます」
何か考えていたと思ったら、亮くん遠回りになるよ? と言ったんだけど、送るから、の一点張り。
先生には私達が小学校から家族ぐるみで付き合いがあることを説明して、うちのお母さんへの説明は亮くんに託されました。