イジメ……始まらず
「神代さん、ちょっと来てくれる」
おぅふ、クエスチョンマークがない、だと?
全部活動が休みになる日、さぁ帰ろうと立ち上がったら、知らない子に呼び止められました。
見れば、三人の女の子達が私をじっと睨んでいる。
わざわざ他クラスに訪ねてくるなら、ついでにここで用件を終わらせてくれないかしら?
まぁ、無理そうですね。仕方ない。
…嫌な予感しかしないわぁ。
「……晶子ちゃん」
「ん~、行ってくるわ」
心配そうに声を掛けてくれた早苗ちゃんにへらりと笑って、鞄を持って女の子達の方へ歩いていく。
私を呼んだ女の子が、こっち。と顎をしゃくって歩き出す。
仕方ないから後を付いていく。
こっそりため息を吐いてしまったのはしょうがないよね。
黙々と歩いていき、連れてこられたのは、まぁ定番というのか、体育館の裏側? でした。
中学校の体育館は校舎から上履きのまま行けるように渡り廊下で繋がっているため、私達も上履きのままです。
が、連れてこられたのは、裏側。つまり下は側溝以外土剥き出し。
上履きが汚れちゃうよ~。
「さて、神代さん? あんた私らの言いたいことわかるわよね?」
リーダーっぽく一歩前に出た女の子がふん、と鼻を鳴らしながら私を睨み付けてきた。
「いやいやいやいや。私あなた達のこと知らないし。初対面の人の心を読むなんて出来ないわよ」
「はぁ!? ふざけたこといってんじゃないよっ」
「あんたほんっとうに生意気!」
うわ~、なんかいきなり怒り出したよ? 理不尽だよ。
情緒不安定だよ。カルシウム不足?
……うん。ふざけるのは止めようかな。
「あんたさぁ、桑崎君に色目使うのやめてくんない? 迷惑なんだけど」
「いろめぇ?」
「小学校が同じだったくらいで、桑崎君に付きまとうなっつってんの!」
「クラスメイトだったからって調子乗ってんじゃねーよ! 自分が可愛いとか思ってんの?」
三人が代わる代わるに怒鳴り始めた。
フムフム。
聞いていれば、どうやら三人は亮くんが好きらしい。
で、普段は全くと言っていいくらい女の子と会話しない、笑顔を見せない亮くんが、運動会で私を異常なまでに構っているのを見て、ムカついたと。
まぁ好きな男の子が一人の女の子のお世話して話して笑って触れて、ってしていたら、嫉妬もするわね。
でもね?
「私が亮くんの弱み握って脅す? 有り得ないわぁ~」
「っ! うるさいっ! 絶対そうに決まってんだろ! じゃなきゃ桑崎君があんたみたいなのに話しかけるとか有り得ないっ!」
わぁ、何か今度は私を全否定する言葉が出始めましたよ?
三人が一斉に怒鳴るから全く聞き取れない。あ、胸無いくせにって聞こえた。
というかね、お三方。
いくら今日が部活無くて体育館に人気がないと言っても、まだ下校が始まったばかりですよ?
そんな力の限り怒鳴っていれば、当然声が大きくなるんですよ。
「あんたマジむかつく!」
「二度と桑崎君に近寄れないようにしてやるっ!」
「ぐっちゃぐちゃにし、」
「何をしてる」
ほーら、見つかった。
クエスチョンマークのない疑問文って、流行ってるの?
「ぁ、ぇ……か、桑崎く…」
「誰の、何をぐちゃぐちゃにするって?」
女の子達の向こう側に、亮くんが現れた。
真顔、恐い。
「亮くん」
「高柳が走ってきた」
「さすが早苗ちゃん」
着くのが早いなぁ。と思ったら、早苗ちゃんが亮くんのクラスに飛び込んで来たそうだ。
それで、校舎を出た辺りで周りの数人が体育館裏が騒がしいって言っていたらしい。それですぐに来てくれたんだね。
「で? 晶子に何の用だ?」
私の隣に移動した亮くんに睨まれ、三人はたじろいだ。物理的にも一歩退いたよ。
蛇に睨まれたカエルのように固まり声を出さない女の子達。さっきの威勢は何処へいったんでしょう。
「晶子」
「あ~、うん……何かね、亮くんと私が仲良くしてるのが気に入らないんだって。私が亮くんの弱み握ってるらしいよ」
亮くんに真っ直ぐ見詰められると誤魔化せ無いんだよ。なんでか分からないけど嘘もばれちゃうの。
だから、素直にこの子達に言われたことを報告しました。ざっくり纏めたけどね。
私の言葉を聞いたあと、亮くんは三人に向き直った。
亮くんに顔を向けられただけで、三人の肩がビクッと震えたのは気のせいかな?
「俺が誰と一緒にいようが、喋ろうが、お前達に関係無いだろ」
うわぁ、ばっさり言っちゃった。
あ、先生が走ってきました。誰かが呼んだんですかね、あれだけ怒鳴っていればそうなるよね。




