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亮くんが去り、女の子達のテンションがまた上がり始めたけれど、私は集合の時間です。

ささっと移動しました。

今頃かなちゃんと早苗ちゃんが面白可笑しく私と亮くんの関係を捏造しているのだろう。………もう諦めた方が良いのかしら?


借り物競争は、走って途中にある長机に二つおりの紙が広げてあり、好きなものを選び、そこに書いてあるお題を探してゴールする。いたってシンプルなもの。

障害はいっさいありません。


「位置について、よーい」


前の人達の走る様子を見ながら待っていれば、すぐに自分の順番になる。

パンッと軽い音を合図に走り出す。

あまり本気で走る気はないのです。

テテテ、と擬音が付きそうな気軽さで走り、近くにあった紙を取る。

さて、何が書いてあるかしら?


「…麦わら帽子…?」


ちょっと、待って?

中学の運動会は、保護者参観なしですよ? 生徒は、男子は運動帽だし、女子はタスキっていうか、ハチマキ? だし。

先生誰かかぶってるの?

無いものは、書かれないよね?


校庭をぐるりと見回す。

見た限りでは、帽子をかぶってる先生はいるけど、麦わらではなさそう。


「麦わら帽子……」


そうだ! たしか、用務員さんが木の剪定してる時にかぶってた!

教員席に走り出す。 走りながら視線を巡らせて、用務員さんを見つけた。


「あの!」

「お? 私に用かな?」

「はい。あの、麦わら帽子、貸してください!」

「麦わら帽子か、ちょっと待ってな」


用務員さんはにこにこしながら、イスの下に置いていた袋を取り出す。

大きな麦わら帽子が出てきました。

きっとお題を聞かされて用意されていたんでしょうね。じゃないと、誰も麦わら帽子なんて持ってこないだろうし。


「はい。頑張って」

「ありがとうございます!」


手渡されて一度頭を下げてから、すぐに走る。

何人かがすでにゴール近くに走っていってる。

けど、多分ビリではないから、良いかな。


ゴールをして、係の先生にお題の紙と麦わら帽子を渡し、オッケーを貰って順位の列に並ぶ。四位でした。

借り物は本当に色々あって、体育で使うマットや拡声器、テニスラケット。コンビニのビニール袋、なんてお題もありました。

変則なものだと、担任の先生と二人三脚をしてゴールをしてきた人もいました。


「ふぅ~」

「おつかれ~」

「残念だったね、晶子ちゃん」

「ありがとー、疲れたぁ」


クラスに戻って一息。労われて苦笑しつつ、次の競技の応援をする。

後は応援だけで終わりかな。

女の子数人とお喋りしながら過ごせば、あっという間に終わりました。


閉会式をして片付けを簡単に済ませ、解散になります。

さぁ帰ろう、と荷物を持って早苗ちゃんと靴箱まで行けば、亮くんが待っていました。

うん、分かってた。お父さんが迎えにくるって言ってたから、亮くんも当然一緒なんだよね。……私何も聞いてないけどね。

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