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*最初の、後悔*

この回は残酷な表現があります。

まぁ拙い表現ではありますが……

殺人表現、死体表現、出血などが少しでも苦手な方は飛ばしてください。

次回の冒頭で分かるようにしておきます。

パタパタと小走りで家の玄関まで向かう。

斜め掛けしているカバンから家のカギを取り出してカギ穴に差す。


「…あれ?」


空回りした。

お母さんいつもは家にいてもカギ掛けてるのに、おかしいなぁ。

ドアノブを引けば抵抗なく開いた。


「ただいま~。お母さーん、カギ開いて、」


家の中へちょっと大きな声をだしながら、カギを掛けようとツマミを触ったら、ぬるっとした感触がした。

何だろう? と手を見ると、赤い液体が指についてる。ツマミにもベッタリついてる。


(光希ってば、絵の具でイタズラしたな~。お父さんにめちゃくちゃ怒られるのに…懲りないなぁ)


後で拭いておこう。と思いつつカギを掛け、洗面所へ行って手を洗う。

石鹸できちんと赤い汚れを落として、自分の部屋へカバンを置きに階段を上がる。


(…ん?あっ、こんなところにまで絵の具垂らしてる! 光希ってば、何やって遊んでるのよ)


廊下や階段に点々と小さな赤い液体が落ちてる。ティッシュを取り出して拭いてみれば少し掠れた跡は残るけど取れる。

きっとついさっきやったばかりなんだろうな。

カバン置いたら光希に言って、掃除させなきゃ。

階段をあがって一番手前が私の部屋。その斜め向かい側に光希の部屋のドアがある。

その、光希の部屋のドアが少しだけ開いてる。


「光希?」


ちらっと見える部屋の中。光希の足が少し見える。

寝てるの?

床に投げ出されてる足に呆れたため息がでて、それからちょっと笑った。


とりあえず部屋にカバンを片付けてから、光希の部屋へ行く。

ドアが開いてるんだから、ノックなんていらないわよね?


「光希! 絵の具でイタズラしたでしょ。お父さんに怒られるよっ」


部屋に入れば、何故か真ん中で仰向けに寝てる光希。

でも、おかしい。


「こうき……?」


なんで、目を開いたまま寝てるの?

なんで、周りの床が真っ赤なの?

なんで、赤い液体がじわじわと広がっていってるの?


なんで…


「へや、こんなにぐちゃぐちゃなの…?」


まるで手当たり次第ひっくり返したみたいに物が散らかって、壊れたりビリビリになってる。

光希の傍に座り込む。


心臓がドクドク、大きな音がうるさい。

気持ち悪いくらい、自分が息を吸ったり吐いたりする音がゆっくり聞こえる。

何故か鉛のように重い体。震える腕を何とかあげて、光希の体を揺する。


「光希、こうき…」


ぐらぐら、体と頭が別々に揺れる。

目の前が何故かぼやけて歪んできた。

ちゃんと光希を見たいのに、なんで見えないんだろう?


「こうくん…起きて。……起きてっ起きてよっ光希っ‼」


ガクガク体を揺するけど、光希の目は私を見ない。天井を見つめたまま。

床を流れる赤が、私の服を染めてく。

揺する手がぬちゃ、と赤くなる。


きっと、判ってる。光希と部屋を見た瞬間に、どういうことか、理解してたの。

でも、認めたくない。認められない。

私は何度も何度も光希を呼び、いつの間にか光希にすがり付いて泣きじゃくっていた。


「光希! こうっ、こうきぃっ、起きてよっ! おっ起きて、お姉ちゃんお帰りって、おやつ食べようって言ってよっ!

ビックリしたでしょって、いたずらだって笑って! 光希! こうきぃっ‼」


いくら叫んでも、光希からの返事はなかった。





気がつけば、光希は四角い箱に入れられて、白に埋め尽くされた。

あんなに赤かった視界は、光希の周りの白と、いっぱい来る人達の黒でチカチカする。


「さ、晶子。光希にさよならしましょう」


お母さんに背中を押される。

いやよ、何いってるの? さよならってなに?

光希は私の弟でしょう? なんでさよならなんて言うの?

光希はいなくなったの? ここに居るじゃない。どこにも行かないわ。

ほら、起きてよ光希。今度のイタズラはとってもビックリしたよ。絵の具で遊んだことも、部屋で暴れちゃったことも怒らないから、だから……


……ねぇ、早く起きて、笑ってよ…光希………

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