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意外な事実

部活で初めて作ったちりめんの根付けは、何故か当然のように亮くんの財布に付けられた。

……もう何も言わないもん。


「次はなに作ろうかなぁ~」


日曜日。ショッピングモールの手芸屋さんで何を作るか考え中です。

今日は一人です。亮くんは部活、お母さんとお父さんは光希の少年野球の試合の応援です。


「テディベアか~、型紙あるかな?」


手芸雑誌のコーナーで縫いぐるみの本を探す。

結構いろんな本がある。カバンや服は型紙付いてないみたいだけど、縫いぐるみは種類多いみたい。

じっくり見ていくと、目移りするなぁ。


「コサージュ? あ、紙紐って、これ先輩がつくってるやつかな? プラパン? ……へぇ~」


………ハッ! いけないいけない、つい熟読してしまった。

雑誌を戻して、縫いぐるみの本を手に取る。


テディベアはついていないけど、ウサギとネコの型紙がついてる。


「ウサギとネコかぁ、これにしよう」


雑誌に書いてあった布地の量、綿の量を覚えて、材料のあるコーナーに向かう。

必要な物をカゴに入れていけば、レジに並ぶころには結構な荷物になってしまった。


「重くはないけど、綿が結構かさ張るなぁ。お父さんについてきてもらえば良かった」


ちょっと後悔しつつ、頑張って帰りました。




家に帰れば、光希とお父さんだけがいた。

お母さんは? と聞けば、少年野球のママ友さん達と次の試合の差し入れを考える。という名目でのお茶会だそうです。

もう五時過ぎてるのに。


「今日はお父さんが夕食をつくるからな~」

「「え?」」


お父さんの言葉に、光希と揃って声をあげてしまいました。ほんと、ついね。

お父さんはちょっとショックを受けてしまったのか、しょんぼりした。


「だって、お父さん料理出来るの?」

「お父さんが料理作ってるの見たことないし…」


二人で純粋な疑問を問えば、益々しょんぼりしてしまった。

だって本当に、見たことないし、お母さんからもそんな話聞いたことないよ?

光希とずっと首を傾げていたら、お父さんはキッチンへ向かいながら話し出した。

……訂正。語りだした。


「お父さんが高校から一人暮らしだったことは前話したろ?」

「うん。お父さんのお父さんが海外に転勤になって、お父さんのお母さんもついていったって」

「そうそう。だから高校から自炊ー御飯作るのも、掃除、洗濯も出来るんだ。

それに、当時はバイトが飲食店だったから、そこの店長によくレシピを教えてもらったりしててなぁ。そのうち自分で色々調べたり作ったり、味や材料に拘ってみたりして……」


つまり、一人暮らしのせいで凝り性が料理に向かって花開いた。ということらしい。

手早く野菜を切りながら、お父さんの話はまだまだ続く。


「お母さんと知り合った当初は、お父さんがお母さんに料理を教えてたりもしたんだぞ? もとは不器用だったからなぁ。でも段々料理が美味くなっていって……

それが、お義母さん……お祖母さんに知られてなぁ。

どうやらお母さんの家族は皆あまり料理が得意な方ではなかったらしくて、気付けばお祖母さんの家で腕を奮うのが多くなって、お祖父さんにも気に入られて。

結婚を認めてもらうどころか、婿養子にさっさと入れられたのさ」

「むこようし? って何?」

「結婚する時に、お父さんがお母さんの名字になるんだよ」


そうか。だから一回目の時と、名字が変わらなかったんだ。

そうだよ、私ずっと神代のままだよ。なんでそこ疑問に思わなかったのさ!


話しながらも着々と出来上がっていく料理にも驚くけど、今更な事実の合点に、自分の馬鹿さ加減に大分ショックをうけてしまった。

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