学生の本分
学生の本分は、勉強です。
私は無理でしたけどね! ヤマ勘当たれば結構……
中学では運動部は朝練があるらしい。
かなちゃんが寝坊できないっ。と嘆いていたけど、寝坊しないのは、常識ですよ?
今のところは寝坊ないみたいだけどね。
授業も本格的に始まり、私にとっては一度習った筈のものなんだけど……真面目に取り組んでます。
やっぱり忘れてる部分が多いというか、ちゃんと授業聞いてなかったんだろーなぁ、って実感しました。
「テスト……」
「早いよね~、まだ五月だよ」
かなちゃんがテスト範囲のプリントを握って項垂れている。早苗ちゃんは窓の外を見ている。
現実逃避が酷いな、早苗ちゃん。
「かなちゃん、プリントぐちゃぐちゃだよ。早苗ちゃんも遠い目しないの」
一年の一学期の中間テストなら、ほとんど小学校の復習問題だから、そんなに構えなくても大丈夫だと思うよ?
慰めるように言ってあげれば、早苗ちゃんはそうだね。と正気づいたけど、かなちゃん? なんで固まったままなの?
「……え? マジで?」
「しょ~こちゃ~んっ 勉強おしえて~っ」
問うように呟けば、かなちゃんがガバッと起き上がって抱き付いてきた。
本当に、マジで?
テスト週間は部活がなくなるので、授業後にかなちゃんと由紀乃ちゃんと三人で私のクラスで机を囲む。
早苗ちゃんは家のことを少しでも手伝いたいから、と帰っていきました。
テスト範囲のプリントを見て、教科書を開いてかなちゃんに差し出す。
「かなちゃん、数学はここまでだよ。え~っと、六年生の算数の範囲が最初の三ページ分に書いてあるから……」
何処が解らない? と聞けば、しばらくペラペラと教科書を見ていたかなちゃんが、机に教科書ごと突っ伏した。
「……かなちゃん?」
「わかりません……」
「かな、あなた……バカ?」
「うわぁぁ~~んっ!」
由紀乃ちゃんの一言で、かなちゃん撃沈。
嘆いてないで、ちゃっちゃとやってしまおうよ~。
かなちゃんの頭は思ったよりアレでした。
ちょっと気になったのが、由紀乃ちゃんが最近、かなちゃんを呼び捨てで呼び始めたこと。
聞いてみたら、かなちゃんがあまりにおバカだから、呼び捨てで充分。だそうだ。
頑張れ、かなちゃん……。
かなちゃんにテスト範囲を教えて復習を一通り済ませたお陰か、私も由紀乃ちゃんもテストが軒並み八十点を越えました。
本来なら、私は全教科満点取らなきゃなんだろうけど、引っかけ問題とか、ケアレスミスとか、意外とあってちょっと落ち込んだ。
早苗ちゃんもだいたい八十点前後、かなちゃんも、数学がちょっと低かったくらいかな?
因みに、亮くんは全教科九十点軽く越えてます。想定内です。
「あら~、幸先良いスタートじゃない。ここから落ちていくのかしら?」
「ちょっ、お母さん!? なんてこと言うのよっ」
お母さんにテスト用紙を見せて自慢したらこれだよ。
自分の娘をどう思ってるのかなぁ?
「だって、亮太君の点数見た後じゃ、ねぇ?」
「亮太くんすごーい。お姉ちゃんに全部勝ってるね」
「うぐっ」
光希の無邪気な一言が、胸に刺さるわぁ。
確かに、私、二回目なのに…でもでも! 百点ばっかり取れるわけないしっ! これでも頑張ってるんだよ!
「ちょっとしたミスが多いな。最後にちゃんと見直すようにすれば、次はもっと上がるさ。でも凄いと思うぞ。今回は俺は得意な範囲だったってだけだからな」
「亮くん……ありがとう」
頭をポンポンと撫でられて、複雑な涙がでそうになった。




