手芸って多種多様
家庭科部に決め、入部届けを出し終わり、部活が始まりました。
作るものは本当になんでも良いようで、先輩達はミシンを使って服を作ったり毛糸で編みぐるみを作ったり、針? でサクサクと羊毛フェルトを刺していたり。なんか紙紐? みたいなのでカゴ編んでる人もいる……
多種多様過ぎる気がする。
なんでも良いって言われると、逆に何を作ろうか迷ってしまって、手芸屋さんで簡単な作製キットを買ってきた私です。
周りを観察しながらゆっくり手を動かしていれば、横の席に人が来た。
「えっと…神代、さん? 隣座っていい?」
「え、あっ、どうぞどうぞ! 確か、木内君、だったよね?」
同じ一年の、木内君。
二、三年生には男子部員が数人ずついるけど、今年は木内君一人みたいだけど、まだ話し掛けづらいのか、所在なさげだよ。
「木内君は何作るの? いろんな布持ってるけど…」
「僕はテディベア。端切れでそれぞれのパーツの柄を変えるんだ」
「へぇ~、カラフルなのが多いね」
「姪っ子が出来たから、なるべく濃くてカラフルにすると、赤ちゃんに分かりやすいんだって。神代さんは、ちりめんの根付け?」
ちまちま縫ってる手元を見られて、何を作りたいかまだ決まってなくて。と笑えば、最近はいろんなキット出てるよね。と笑ってくれた。
そっか、縫いぐるみかぁ。次作るの縫いぐるみにしようかな? ウサギとかいいよね。
木内君と時折お喋りしながら作業する。
うん。新しい友達出来た、って認識でいいよね? 友達って思って良いよね!?
木内君と楽しく部活を終えて、流れで一緒に帰ることになった。
自転車通学ではないらしいけど、帰り道が途中まで一緒だったのです。
小学校一緒だったらしいよ。クラスが一緒にならなかったから、関わりがなくってお互い知らなかったけど。
「しょーこちゃーんっ!」
「あ、かなちゃん。今帰り?」
「そうだよ。あ~でも、今日は他の友達と約束しちゃった」
かなちゃんが校庭から走り寄ってきた。部活後だからか、顔が赤い。暑いのかな?
一緒に帰れないや。と少ししょんぼりしたかなちゃんだけど、私の隣の木内君を見て目を瞬かせた。
「あれ? 木内君だ」
「知ってるの?」
「野崎さんとは、五年生の時に一緒だったんだ」
「木内君、転入生だったの。何回か隣の席になったし、仲良いんだ!」
そっか~。と頷いたけど、仲良いってかなちゃんが言ったのに対して、木内君が少し苦笑したよ。
かなちゃん、きっと何時ものように笑顔で押せ押せでお喋りしまくったんだろうね。まぁ、嫌そうにはしてなさそうだし…良い、のかな…?
遠くでかなちゃんを呼ぶ声がして、かなちゃんは慌てて走っていった。
手を振って見送り、私と木内君も歩き出す。
駐輪場まで一度寄って自転車を引きながら、木内君との分かれ道までお喋りしながら歩く。
木内君ちは女系家族? お母さんの方もお父さんの方も、姉妹ばかりで昔から手芸品やら布地やらミシンやらが日常に溢れていたから、木内君自身も手芸が好きになったんだって。
「学校とか友達の前とかじゃ、そういうのが一切出せなかったけどね」
「そっか~。でも、家庭科部の先輩にも男子いるし……っていうか、さぁ。先輩達の作品が凄すぎるんだけど……」
「あ~、僕も思った。展示してある作品でしょ? レース編みとか細かすぎて目がチカチカしたよ……」
部活見学の時に見た作品の中でも、三年の男子部員が作ったというレース編みのカフェカーテンとテーブル用のセンタークロスは……あれは、職人の域だと思う。
木内君も同意見だったらしく、分かれ道までずっとその先輩の話になってしまった。
「あ、私こっちなんだ」
「そっか。じゃあまた明日の部活で」
「うん、バイバイ」
分かれ道で一度止まり、明日の部活のことを少しだけ喋ってから、手を振って別れた。
自転車に乗り直して漕ぎ始める。ものの三分で家に着きました。




