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思い出すのに苦労しました。思い出、ないけど…
前の人生から何も学んでないことが分かった。まぁそれは置いておいて。
再びバスに乗って、今日の観光の目玉、というか見学をする東大寺に向かいます。
バスの中は朝と違ってわりと静か。お腹が膨れたところにバスの振動で、半数近くが寝てしまいました。
「かなちゃんが寝るのは分かるけど、まさか亮くんまで…」
はい、亮くんも寝ちゃいました。
家で光希と遊んで、疲れて寝ちゃう。っていうのはたまにあるけど、まさかバスの中で寝ちゃうとは。
「しかもねかたが……」
私の肩に頭を寄せて、もたれ掛かるようにして寝てますよ。
顔近っ! 寝息が聞こえるし、たまに首辺りに寝息がかかるし……
亮くん、恐ろしいスキルを持ってるわ。私より女子力っていうか、乙女シチュエーション再現力っていうかが高い!
………うん、ちょっと落ち着こう。なに言ってるか解んなくなってきた。
由紀乃ちゃんはかなちゃんを窓際に押していた。もたれ掛かられて、重い! っていってたよ。
静かな車内でぼーっとして過ごし、二時少し前に着きました。奈良、東大寺です。 亮くんを起こし、周りの子達も起こしてバスを降りる。
奈良公園をサクサク歩いて、東大寺南大門でガイドさんの説明を聞く。
左右の金剛力士像は、三ヶ月で仕上げられたとかなんとか。
説明が終わればまた歩き出して、有名どころの奈良の大仏がお目見えです。
「でっかいね~」
「指一本で、私達潰されそう…」
「ちょ、なんつー喩えをっ!」
かなちゃんが妙なことを言って長谷部君が突っ込んだ。
つまりはそれだけ大きいってことだよね。ほけ~っと見上げていれば、亮くんに下顎をぐいっと押された。
「口開いてる」
「んん、ありがと」
ビックリした。普通に言葉で言ってくれればいいのに。
そして亮くん、君のとなりの長谷部君も大口開いてるよ? あ、無視ですか。
かなちゃんと長谷部君は、柱の穴を通り抜けるという。
確かこれ、大仏様の鼻の穴と同じ大きさじゃなかったかな。
言い伝えあったよね? どんなだったか忘れちゃったけど。
「晶子ちゃんもやらない?」
穴の向こうから這い出したかなちゃんに誘われたけど、やめておく。前の修学旅行の時にくぐったからなぁ。
やるって言っても、きっと亮くんに止められるかな、今日スカートだし。
クラスごとに異動しながら、広い場所で集合写真を撮り、次は正倉院と三十三間堂を見学です。
三十三間堂では自分に似た顔を探してみたけど、無理でした。多いしね。
ガイドさんの説明そっちのけで真剣に探したんだけどなぁ。
見学が終われば、今日宿泊するホテルへ異動です。
「じゃあ、部屋に荷物を置いたらロビーにすぐ集合してくださいね~。夕飯の時間が少なくなるから、素早く動いて。一般のお客さんの迷惑にならないように!」
解散! と先生に言われ、部屋の鍵を持ったクラス委員を先頭に動き始める。
自然と背の順になるのはなんでだろうね?
ちなみに私の背は平均だよ。真ん中あたりです。
「荷物は壁際?」
「全員のお布団ひくんでしょ、あっち側は?」
「ねぇ、襖の奥のスペース、テーブルとイス寄せちゃえば入るんじゃない?」
女子ばっかだからか、部屋に入った途端にてきぱきと荷物を置く場所を話し合い、邪魔にならないようにかためて置いていく。
ちゃんと、お風呂に行くのを考えて着替えとタオルを出してから、って所が女の子っぽいよね。計画的だよ。
ロビーに戻り、クラスごとに点呼をしたら夕飯になる。
レストラン会場に行って、直ぐに食事開始。今回はクラスごとだから、女子に囲まれてますよ。亮くんは男子と一緒。
和気あいあいとご飯を食べました。美味しかったです。
あとはもう、お風呂入って明日のために寝るだけです。
朝早いからね、皆さっさか寝ちゃったよ。……バスでさんざん寝たのに、一番早く寝たのはかなちゃんでした。




