注文品が届いたようです
一週間後、家に高柳書店から電話があった。
一緒ハテナが浮かんだけど、注文した本と言われてすぐに思いだした。
『じゃあ晶子ちゃん、二時に来てね!』
「うん、じゃあ日曜日に遊ぼうね」
店主さんが早苗ちゃんに電話を代わってくれたから、そのまま本屋さんに行く日を決めて電話を切った。
「新しい友達が出来て良かったわね。何かお菓子持っていく? 一緒に食べるでしょ?」
「うん! えっと……そうだ!カステラがいいな。お母さんがたまに買ってくるやつ」
「そうね、じゃあ前の日に買っておくわ」
お父さんと光希の分も買わないと。とお母さんは笑った。
夏休みが終わってからあんまり笑わなかったから、ちょっと安心した。
学校で亮くんに早苗ちゃんと遊ぶことを言うと、何故か一緒に行くと言われた。
亮くん……まさか、早苗ちゃんに一目惚れ!?
そうか、そう考えると、あの日帰りに機嫌が良かったのも納得よね!!
早苗ちゃん可愛かったし。そっか~、亮くんにも春が……今、初秋の時季だけど。
土曜日。夕飯を食べた後に明日の用意をする。
「お金は足りるし、注文書もいれた。ハンカチと、ティッシュと、」
家のカギに防犯ブザー。お母さんが買ってきてくれたカステラは紙袋にはいってる。
斜め掛けカバンの中身をチェックしていたら、光希が横から覗き込んできた。
「お姉ちゃん、明日のじゅんびー?」
「そうよ。そうだ、光希も一緒に行く? 亮くんも来るよ?」
たしか明日は野球の練習ない日だったな。と思って誘えば、亮くんがいるからかすぐに頷いた。
お母さんに言ってくる! と部屋を出ていきました。行動早いな。
さて、一通り必要な物は揃っているから、さっさと寝よう。
お母さんにオッケーを貰った光希に、一時半には亮くんが迎えに来てくれることを伝え、寝坊しないようにお互いベッドに潜り込んだ。
翌日は光希が朝からテンション高くて、まだ行かないの? はやく行こうよ。とウズウズ。
まだ朝ごはん食べ終えたところだよ。早いよ。
とりあえずなだめて、少年野球のことを聞いてみた。そしたら、凄い生き生きしだした。
うん、お友だちやらお兄さんやら年下の子やら、一杯いて楽しいんだね。
分かったから、一回クールダウンしておくれ。ちょっと気迫が凄まじいわ。
「こんにちわ。晶子、居るか?」
「あれ、亮くん? って、早くない? まだ11時だよ?」
リビングのドアが開いて、亮くんが顔を出した。
夏の一件から暫くして、何故かうちの親から合鍵貰ってるのよね、亮くん。
そしてそれを普通に使ってるのが凄いわ。
亮くんは持っていた荷物をテーブルに置くと、中身を出してキッチンに向かった。
「母さんがパウンドケーキ貰ってきてさ。量が多いし、冷蔵でももつやつだから持っていけって。適当に入れておくから、おばさんは?」
「わぁ、ありがとー! お母さんはお父さんと駅の向こうの商店街に行ったよ」
今日はセールなんだって。と言えば、そうか。とだけ返事がきた。
お父さんは運転手兼、荷物持ちです。仲が良いのは大変よろしい!
「晶子、光希も」
「ありがとー亮くん」
「ありがとー!」
キッチンから戻ってきた亮くんは三人分のマグカップを持ってきていた。
手渡されたのは、ココアかな。そして自分もソファに座ってマグカップを傾けている。
うん。亮くんが完全にうちに馴染みすぎている。勝手知ったるって感じで私と光希の分まで飲み物淹れるって……というか、本来私がやることじゃない?
ううむ。亮くんがほぼ家族枠に入ってる気がする。
ちょっと可笑しくないか? と考えていたら、どうかしたか? と亮くんと光希に左右から覗き込まれ首を傾げられ、二人の表情が普通なので、まぁいいか。と考えを放棄しました。
ぐだぐだと三人で喋っていれば、お母さん達が帰ってきた。
三人で玄関まで出迎えたけど、やはり両親共に亮くんの存在を居て当たり前な感じの対応でした。
私が考え過ぎなのかな?
「お母さん…買いすぎじゃない?」
「え~、だってとっても安かったのよ?」
「安くてもさぁ…」
「腐らせそうだな」
「くさるのー?」
お父さんが、車と玄関を二往復したよ。
あまりの多さにため息をつけば、亮くんがボソリと呟き、それを光希が拾って首を傾げた。
子供三人に言われて、お母さんは自覚してたのか、目を泳がせた。
そんなことしたって、目の前の荷物は減らないよ。
「まぁまぁ。亮太君に、帰りに持っていって貰おう。勿論車で送るから、ね」
「はぁ、まぁ、いいですけど…」
「お父さんも、ちょっとはお母さんを怒ろうよ…」
いや、怒るのも叱るのも……ないな。
うん、この万年バカップルなおしどり夫婦には無理だわ。言ってみただけよ。




