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新学期になりました

夏休み後半は、ほぼ毎日病院へ通うことで消化されてしまいました。

おばあちゃんちも、旅行もなくなっちゃったよ、ちくしょう。

まぁ、亮くんと敦さんがちょこちょこと様子を見に来てくれたりしたから、退屈ではなかったんだけどね。

宿題がギリギリになってしまいました。


「うぁ~…夏休みが終わっちゃったぁ」


本日は始業式です。

背中の痛みもなく、痕もきれいさっぱりなくなりましたよ。良かった良かった。

痕があると、お母さん達が悲壮な顔するからね。


教室の自分の席でだら~、としていると、友達がクスクス笑いながらおみやげくれました。

クッキーです、ありがとうございます。


私が襲われたことに関して、学校に報告は行ったらしいけれど、学校側と警察、両親との話し合いで保護者のみへの説明となった。

無闇に怖がらせてしまうから極力子供には伝えないように。と注意事項として言われたらしい。

誰にも言われないし聞かれないってことは、親から聞かされなかったからだろうね。


今更気付いたことだけど、毎日通院していたの、あれってカウンセリングってやつだったんだろうなぁ。お医者さんとお話ばっかりだったし。ん? カウンセラーって言うんだっけ?


「晶子、調子悪いのか?」

「ん~、違うの。夏休みが終わったのが悲しいの」


亮くんは私がちょっとでもため息吐いたり俯いてると飛んでくるようになってしまった。

過保護過ぎないかなぁ? あんな場面見られてたら、無理ない、のかな?


へら、と笑った私に、亮くんも微笑む。

うん、微笑む! 微笑み!!

なんか、敦さん見て思ったんだが、桑崎家の男性は男前紳士が揃いすぎてないかな?

表情とか、ちょっとした仕草が大人っぽすぎて照れる。


そして友達の、私と亮くんを見る目がキラッキラしてて怖い。

付き合ってないっていうのはもはや誰も信じてくれなくなった。どうしてこうなったんだろうか?





「いってきま~……す?」


玄関開けたら、亮くんがいた。へんな場所で言葉が切れてしまったじゃないか。


「亮くん? あれ、光希は今日お父さんと野球の練習行ったよ?」

「知ってる。晶子は、今から出掛けるのか?」


約束は特にしてないらしい。

じゃあなんで家の前に立ってるんですか?あれ、私何か約束してたっけ?


本屋さんに行く。と言えば、一緒に行くと言われた。

う~~ん………あれかな。過保護になっちゃった余波? 凄い子供扱いされてる気がしないでもない。

でもまぁ、亮くんとは変に子供っぽくしなくても良いし、楽といえば楽な相手です。


特に断る理由もないので、亮くんと二人で本屋さんに向かいます。


実は亮くんとお母さんが連絡取り合って付いてきてたとか、私ほずっと後に知りました。

心配かけていたみたいです。一人でふらふらするのは自重しないけどね。


「本屋って、駅前のじゃないのか?」


商店街の奥へ歩いていく私に、首を傾げる亮くん。

ふっふ~ん。やっぱりあの本屋さんは穴場的なものよね。優越感があるのは私が単純だからかな。


「商店街にあるのよ。とっても素敵な本屋さんなの」

「そうなのか」


にっこり笑って言えば、亮くんもちょっと笑った。

授業のこととか、友達のこと、亮くんの剣道や私のピアノ。亮くんといると、不思議と話題がなくならない。

お喋りしながら歩けば、すぐに目的の本屋さんに到着する。


「…なんか、昔の店みたいだな」


店を見上げて言葉を探す亮くん。

多分ノスタルジーを感じてるんだよね。クラシカル? とか、小学生の語彙じゃでてこないもの。

貶そうとはしていないからか、どう言えば良いか分からないみたい。


興味深そうにキョロキョロ視線をさ迷わせる亮くんを促して引戸を開き中へ入っていく。

亮くんから感嘆のため息が聞こえた。


ふふ、同じものを、同じように感じてくれるのって嬉しいわ。


「おや、いらっしゃい」

「こんにちは」

「こんにちは。今日は友達も一緒かい? 良いものが見つかるといいね」


ひょい、と棚から顔を覗かせた店主のお爺さん。

挨拶をすれば、亮くんを見て笑みを深くしてうんうん、と頷いた。

お爺さんと少しだけ会話をして、児童書のコーナーへ向かう。


「何を買うんだ?」

「夏休みにお父さんに買ってもらった本がシリーズものだったみたいでね。出来れば続きが読みたいんだ」


児童書の中でも大判のハードカバーのコーナーをじっくり見ていく。

シリーズものなら、多分背表紙が一緒の色だと思うんだよね。

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