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ばたんきゅ~

光希を救う方法を考えて考えて、何も浮かばないけど、また考えて。学校も自然に見えるよう頑張って。笑顔で頑張って。


夏休みに入った途端にぶっ倒れました。


「夏バテかしらね?」

「お姉ちゃんだいじょーぶ?」


心配そうに覗き込んでくる光希とお母さんに、大丈夫。とへらりと笑って見せる。

微熱がずっと続いていて、体がダルい。

夏バテって言うか、多分知恵熱だろうな。


何かあったら内線で呼びなさい。と枕の横に電話の子機を置いて、お母さんは光希を連れて出ていった。

風邪じゃないけど、具合悪いのが移ったら嫌だしね。


「はぁ~…」


情けない。

もう時間が無いのに、私は何をやってるんだろう。

でもね。言い訳じゃないけど、半分くらいは亮くんの、言えよ。っていう視線とかプレッシャーのせいだと思うの。

亮くんの圧力半端ないからっ! 本当に!


「晶子」


考えてたら本人登場しちゃうしっ!

ナニコレ笑えない!


「あ~……亮くん、いらっしゃい」

「起きなくて良い。大丈夫か?」


肘をついて起き上がろうとしたら手で制され、素直に布団に戻る。

亮くんは勝手知ったるって感じで学習机の椅子を持ってきてベッド横に座った。

顔を上から覗き込まれ、ちょっと恥ずかしい。


「………」

「…………」


うん、会話がないかなっ!

心配してくれてるのは表情から判るけど、無言でじっと見られても困るのですが?

何か話題を…


「え、っと……」

「……お前は、何でも自分で抱えるんだな」

「へ?」


いきなり言われた言葉に、パチパチと瞬きをした。

亮くんはちょっと苦しそう? な悲しそうな表情をしてる。


「少しくらい、俺に頼ってくれても良いじゃないか……」


んん? どうした亮くん? よく聞き取れなかった。

何て言ったのか聞き返そうとしたけど、その前にドアが開き、光希が亮くんを迎えにきた。

うん、ぜひ亮くんと沢山遊んで貰いたいわ。主に外で!


他力本願なことを思いつつ、私は目を閉じて眠った。





食っちゃ寝生活をしていれば体はさくっと良くなり、遅れた夏休みの宿題を頑張ってこなし、ピアノ教室にいった日は走って家まで帰ってきて。

光希が1日野球クラブの日は少し心が楽になるけども。気を張って日々を過ごしています。


「さよなら~!」

「バイバイ晶子ちゃん」

「またね~」


教室に残ってる数人に声を掛けて、急いで帰る。

お盆休みの前ってことで、ピアノ教室も休みにはいるからか、今日は先生の話が長かった。

何時もより30分も遅いよ~!


「はっはぁっ」


運動不足ですね、息切れが早いわ。

商店街の裏道、ちょっと細くてくねくねしてるけど、こっちの方が近道になる。

カバンを引っ掻けないように胸の前に抱いて急ぐ。


あとちょっと。

最近全く夢を見なくなってしまって、凄く不安なの。

終わってしまうから、夢の出来事が過ぎてしまうから、夢を見ないんじゃないのか?


「は、はぁ~……ただいまっ」


ガチャガチャと鍵を開けてバンッと思い切り玄関を開いた。

鍵は掛かっていた。まだ、大丈夫。


だけど、返事がない。

お母さんがいるならお出迎えしてくれるのに。

手が離せないなら、声だけでもあるはず。光希の声もない。


不安に、走ったからとは違う、ドクドクと嫌な音で心臓が鳴る。


「…お母さん? 光希…?」


さっきまで慌てていたのが嘘みたいに、ゆっくりと足を進ませる。


リビングへのドアを開ける。

……いない。出掛けたのかしら?

きょろ、と視線を巡らせば、メモ用紙がダイニングテーブルにあった。

お母さんは買い物。光希は、野球クラブの友達のうちに遊びに行ったみたい。


「……はぁ、良かった…」


これなら、今日は大丈夫だよね。

思わずへたりこむ。なんか凄く疲れた気がするわ。

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