将来かぁ
かなちゃんの中で私と亮くんは付き合っているという認識になってしまった。
そしてそのまま小三になりました。
誤解は解けない…なんでだ。
そうだ。光希が一年生になりましたよ。
ランドセルを背負うって言うか、背負われてるって感じだけど。
まだまだ細くて小さな体。
毎日嬉しそうに跳び跳ねてはランドセルに振り回されています。
……早く…早く考えなきゃ。
光希を死なせない方法を……
「晶子ちゃん、つぎ音楽室だよ」
「あれ、そうだっけ? ありがとー」
席でぼぅっとしてたら、友達が呼びに来てくれた。
一緒に行こう。と教科書を出して席を立つ。
残念ながらかなちゃんも由紀乃ちゃんも、亮くんもクラスが別になってしまった。
かなちゃんと由紀乃ちゃんは一緒のクラスだけどね。うらやましい。
休み時間に遊びに行ってるんだけどね。
「晶子ちゃんはピアノ習ってるんだよね? 音楽とくい?」
「う~ん、歌はあんまり上手くないよ? 楽器も…ピアノ以外は微妙だよ」
歩きながら他愛ないお喋りをする。
今授業で習ってるのは、鍵盤ハーモニカ。いわゆるピアニカです。
ピアニカは、ピアノの簡易版って感じだから上手く出来てる。
それもあって、音楽ならなんでも上手だと思われていたらしい。
音痴ではない、と思いたいな。
三年生になったことで、だんだんと男女差がはっきりしてきた。
今までは男女いっしょにわちゃわちゃと遊んでいた休み時間も、男女別れるようになったし。
男の子は主に外でサッカーや、校庭のすみにある遊具で遊んでる。
女の子は教室内でお喋りが主かな? グループで固まりつつある。
私はその日その時により喋る子が変わる。固定グループを一人で行ったり来たりしてる感じです。別にぼっちとかじゃ、ないよ?
「光希」
「あ、お姉ちゃん」
登校はいつも一緒に行く光希と私。だけど下校はたまに別になっちゃう。
まぁ光希も、クラスの子達と仲良くなったみたいだから、下校もその子達と一緒らしいけどね。
たま~に、校舎内で光希と会える。
声を掛けたら笑顔で手を振ってくれるうちの弟は、とても可愛いと思います。
あれ、ブラコンになってる?
「晶子ちゃんって弟いるんだね~、いいなぁ」
「え~?」
一緒にいた友達は、一人っ子だから兄弟がうらやましい。と笑った。
そこから、近くにいた子達も話に加わって、お兄ちゃんが欲しい、妹がいい、など話が広がっていって、将来の家族構想にまでいってしまった。
「だんなさんは優しい人がいいなぁ。いっしょにお料理したり~、買いものしたりした~い」
「わたしは子供たくさん欲しいなぁ。女の子と、男の子、3人くらい?」
晶子ちゃんは? と聞かれ、答えに窮する。
将来とか、考えたことがないし、考えられないわ。
きっと私に将来なんてない。
同じ人生をやり直せるチャンスを貰った。
光希の死や、両親の離婚、友達とのいざこざや辞めた習い事。
止めたい後悔や、懺悔は沢山ある。それを、私が死ぬ時……`あの瞬間´まで全力で潰していきたい。
「う~ん……わかんない」
だから、将来の話をされても、苦笑いしか出来なかった。
出来なかったんだけど……友達が爆弾発言をかましやがりました。
「え? 晶子ちゃんは、桑崎くんとけっこんするんじゃないの?」
「へっ!?」
「え~なにそれっ!」
「桑崎くんって、二組の?」
いきなり亮くんの名前を出されてびっくりする私に、他の子が身を乗り出してきた。
目がキラッキラしてるよ~。女の子って恋バナすきだよね~。でもそれを私相手にしないで欲しいです。
どうやらかなちゃんと知り合いらしい。話を聞くに、幼なじみっぽいですね。
ピアノの発表会で、亮くんが来て、しかも花束をくれたことまでを、何割か脚色した話を披露し始めたよ。
ちょっ、待って待って、感動して抱きついたとか、誰の話?
手をつないで帰ったとか…それ光希と亮くんだよ!
………亮くんと私が付き合っているという話は、最終的にうちのクラスの女子間での共通認識になってしまった。
まぁ、男の子達にまで広がらなかったのは…セーフ、かなぁ?