これで、終わり
私の`後悔´が全て終わった。
光希の死。
途中で止めた習い事。
手を抜いた勉強や全力なんて出したことなかった運動。
両親の離婚。
適当な料理や壊滅的だった裁縫。
早苗ちゃんの自殺。
光希は生きてるし、両親は未だラブラブで。ピアノは満足いくまで習ったし、簡単な鞄や服なら縫えるようになった。
早苗ちゃんは生き生きして毎日笑顔で。
新しい友達を作ったり、行ったことのない場所にも行ったり、食べたいものを食べたり。
……まぁ、はなちゃんの性格が変わっちゃったり、木内君が変な目立ち方しちゃったり、しなちゃんがトランスフォーム (笑)しちゃったりしたけども。
`前´よりもとても充実した人生を送れたと思います。
……………
…………………
……………………と、私的には振り返り感慨に耽りたいのですが、それは無理になってしまいました。
何故か?
…亮くんに、バレました。
何が?
…全て。
「……つまり、晶子の`今´は`二度目´であり、`前´と`同じ´人生だ、と? しかも、晶子の`死´は確定しているから、`大学一年´で`終わる´と……」
椅子に座り腕を組んで私を見下ろす亮くん。静かな声に恐怖しか感じないのは私だけですか?
ちなみに私は床に正座しております。
本日は両親が夫婦水入らずのバカップルデート。
光希は部活のち早苗ちゃんち。
……激オコ亮くんと私、二人だけでございます。
助けがいないっ!
なぜこうなったかと言いますとですね。
亮くんがうちに来ました。普段通りです。
両親も光希も出掛けていきました。普段通りです。
亮くんが真剣な表情で私に話し掛けてきました。普段とは違います。
「晶子、高校卒業したら、結婚するぞ」
「…………………は?」
どうかしたのかと声を掛けようとしたら、先に言葉を発されたんですが、言われた言葉が意味不明すぎて数秒間は固まってしまいました。
しかも変な声が出ちゃいましたよ。
「亮くん? 何を言ってるの?」
しかもよくよく言われた言葉を思い返すと、するぞ。って言ったよね?
ぞ。って、断定系ですよね?
私に問いかけてすらいない文だよ。
「光希達が結婚するのは、早くても光希が高校を卒業してからだろう? だったら、俺達も卒業後直ぐに結婚式挙げた方が、光希もやりやすいだろう」
さも当然のように言っていますが、まず前提が可笑しいよね?
「……私と亮くんって、付き合ってたの?」
何時から? あれ、私いつの間に彼氏が存在していたの?
というか、亮くん私のこと好きだったの!?
色々自分の中で驚いていたら、亮くんはちょっと呆れた表情で眉間に皺を寄せてため息を吐きました。
なかなか器用なことをするね。
「何を今更。……まず、俺が何とも思ってない人間と一緒に居ると思うか?」
「……黙殺しますね」
「俺が信用してない人間の料理を食べるか?」
「……見向きもしないね」
「俺が好意のない人間の世話をするか?」
「しないね…って、世話ってなにさ~、いやお世話されてる自覚はあるけどね」
一問一答を繰返し、納得してしまいました。
亮くんが好きでもない人とこんな長時間‐十年以上‐一緒にいるとか、有り得ないです。
そっか~。亮くん、私のこと好きだったのかぁ。
「………へぁ」
ボッ、と音がしそうな勢いで、顔が熱くなった。
多分今、私の顔は耳まで真っ赤だ。いやむしろ首まで。
だってすごい、熱い。
「……やっと自覚したか。でだ、結婚式なんだが、兄貴がやっと説得したらしくてな。兄貴達の式が来年の秋ごろになるから、まぁ俺達は卒業したらすぐかな」
「………、ハッ! いやいやいやいやっ! ちょっと待とう! ていうか待って!」
とんとんと話を進めていく亮くんを慌てて止める。
呼ぶのは早苗ちゃん達だけだから小さい式場、ってそーいうこっちゃなくてですね!?
「私結婚とかしないよっだって死ぬしっ!」
……パニックのまま叫んでしまいました。
ハッとしたけど、今更口を塞いでも遅いですね。
亮くんの眉間に、尋常じゃないほど深い皺が刻まれました。
「………は?」
ヒィッ恐い!
亮くんから一度も聞いたことない低い声がした!
「晶子?」
「っ」
低い声で名前を呼ばれるけど、口を塞いだままぶんぶん左右に首を振る。
まぁそんなことで諦めませんよね。
近付いてくる亮くんの表情と雰囲気が恐すぎるっ!
…………恐怖に負けた私、全てを一から説明しました。
そして、冒頭の亮くんの出来上がりです……
……いきなりクライマックスに突入で、作者が一番驚いています……