久々のおでかけです
あっという間に三学期が過ぎ、すぐに二年生になりました。
春休み? そんなのただちょっと長めの連休じゃないですか。
クラスは、皆バラバラになってしまいました。
遊木君が、しなちゃんのことを物凄く心配していました。
「コイツが新しいトランスフォーマー(腐女子)を増やしたりしたら……」
「大丈夫だよ、遊木君。しなちゃんと私は違うクラスだから、増え方も倍々だねっ!」
「いっこも大丈夫じゃねぇっ!」
サムズアップするはなちゃんもはなちゃんだけど…
遊木君、語彙力がはなちゃんに侵食されてるよ…?
トランスフォームは、生態変化だからね? 女の子が腐った系のオタクになることじゃないからね?
というか遊木君、大分印象が変わっちゃったね。
「遊木君がそのうち胃に穴開けそう…」
「私は地味に十円ハゲだと思う…」
「早苗ちゃん、それはさすがに…」
「じゃ、蕁麻疹?」
二年生の階の廊下でガヤガヤと喋ってるはなちゃんと遊木君と、はなちゃんに新しい本を渡されて話を聞いてないしなちゃん。
それを離れた場所で観察してる私と早苗ちゃん。
ちょっと変な図ですね。
ふと時計を見れば、もうすぐ予鈴です。クラスに入りましょう。
あの三人? 目立ってますので、関わらない方向で。
私が一組、早苗ちゃんが三組。しなちゃんが四組ではなちゃんが六組。遊木君は二組です。
見事にバラバラ。二年は修学旅行もあるんだけどなぁ。流石に他クラスの子とは班を組めないから、残念だけど仕方ないです。
「あ、おはよー神代さん。また一年よろしくー」
「おはよう関さん。結構皆バラバラになっちゃったから、友達が居るって安心するよ~」
教室に入れば、気付いてくれた関さんに手招きされました。
唯一、女の子では唯一一緒になれたのです。
男子は数人同じクラスだった人がいたけど、ほとんど話さなかったし。関さんが居てくれて本当に良かった。
ボッチとか嫌です。
「まぁ選択授業が一緒とは限らないけどね~」
「えっ!? ……ちなみに、私は完全なる文系ですが…」
「あは、残念。私理系選択だわ~」
「Oh……」
関さん…そんな楽しそうに笑わないで。
え~、女の子って大抵文系じゃないの? 偏見? だって数学とか最早暗号化してきてるよ?
「昔から数独とかロジックとか好きでね~。今は科学が楽しいわ」
「ぁ、別世界の人だわ~」
関さんは頭脳明晰な女史さんでした……。
「…でね、関さんと一緒の部活の子もいたんだ。その子、小山さんっていうんだけど、小山さんも選択は文系だったから…」
日曜日。亮くんと遊びにやって来ました。
久し振りに亮くんの部活が休日にお休みとのことなので、ちょっと遠出して隣の市にまで来ちゃいました。
水族館がリニューアルオープンしてたので、亮くんとならお母さんもオッケーしてくれたし。
残念ながら早苗ちゃん達は用事や部活で無理でしたがね。
「わぁ、すご~い!」
「でかいな」
水族館を入ってすぐ、真正面に床から天井までのガラス水槽がありました。
上は吹き抜けなんでしょうか? キラキラと光が波打っていて明るいです。
水槽の中にいるのは、イルカ? 白イルカって書いてありますね。
亮くんをひっぱり、早歩きで水槽に近づきます。迫力凄いです。
亮くんと手繋ぎはすでにデフォルトですね。
何も思わない……いや、むしろ亮くんが居るのに手を繋がないって方が既に違和感? まぁほら、水族館ってちょっと暗いし、休日だから人も多いし、はぐれると困るし?
「そーいえば、亮くんと二人だけで出掛けるの、もしかして久し振り?」
「あぁ、そうだな。近所のスーパーとかはよく行くが、遊びに出掛けるのは……何時ぶりだ?」
「えーっと……」
何時だ? ………、うん、思い出せない程度に久し振りなのは分かったわ。
「まぁほら! 今日は二人だし、久々にまったり過ごそう! ね!」
何故か焦る私。
亮くんはちょっと苦笑して、改めて手を繋いで歩き出しました。
…なんでちょっと妙な罪悪感とかを感じてしまうんだろうか…? 不思議だ。
白イルカの次は小さめの水槽が通路の両脇に並んだエリアです。
カラフルな魚が沢山居ますね。
「テトラフィン。クマノミ。ん? あっちにイソギンチャクがいるよ!」
「へぇ、イソギンチャクも結構色んな色があるんだな」
「ね~。ピンクのと肌色っぽいのと、赤みがつよいのと…あ、ウミウシ!」
「これは……ウニ?」
右にふらふら、左にふらふら。
亮くんの手を引いて見て回って、二十メートルもない通路を三十分以上かけて見て回りました。
そして、中央には巨大な水槽が鎮座していました。
アジやイワシは勿論、サメやエイ、ウツボも居ます。ブリやタイやカワハギや…
美味しそう…。
「亮くん! ペンギン! ペンギン可愛い!」
イルカショーよりもペンギン水槽が一番好きな私がいます。
あ、ちゃんとイルカショーは観ましたよ。絶対に濡れない一番後ろの席で。