文化祭、準備中
二学期です。
早いですよね、何故かもう文化祭の準備が大詰めですよ。
……可笑しいな。つい最近テストが終わったばっかりなのに……時間足らなすぎませんか?
「ねー! 暗幕もう一枚ちょうだーい!」
「おい誰だよガムテ片付けてねーやつ!」
「暗幕こっちもたりねー!」
「生徒会室にいって! 申請すれば三枚はもらえるはずー!」
「床にガムテひっついたーっ!」
「根性で外せーっ」
「ギャーッ! ずれた~!」
「上から白ぬっちまえ!」
阿鼻叫喚です。
うちのクラスの出し物は、喫茶店です。
勿論ただの喫茶店ではありません。
教室を暗幕で覆い、店員が仮装をして接客する、ホラーカフェとなりました。
灯りは各所に飾られたキャンドル (LED)です。
LEDの光が思ったより明るくてホラー感が若干落ちてますが、動き回るのを考えるとこれくらいが丁度良い気もします。
「神代さん、生地出来たよ~」
「こっち終わったから場所使ってー」
「こーげーたぁ~!」
「ココアまぶせ!」
「チョコが分離した~!」
「バター固いっ!」
私は調理班の皆と喫茶店で出す物の試作をしてるのですが、こっちもこっちでドタバタしてます。
作るのは日持ちするクッキー四種、ベイクド系ケーキ二種、タルト系二種です。
紅茶と珈琲は当日淹れるし、ジュースはペットボトルです。
高校生なんてこんなもんです。
「…そういえば、私達って当日も裏でコーヒー淹れたりクッキー盛り付けたりするだけよね? 仮装する意味…」
「林さんそれ言っちゃダメなやつ」
「まぁ、裏方も楽しもうって事じゃない?」
「作業しにくいやつは無しでお願いしまーす」
試作品が一通り出来上がったので、試食と言う名のおやつタイムです。
一応、前日に大量に作る予定ではあるけど、足らなくなると困るので当日は様子を見ながら足りなさそうなのを作っていく手筈です。
なので、私も裏方のみです。接客はいたしません。
一緒に裏方をするのは、仮装の意義を考えてる林さん、とにかく動きやすくローコストを考える安藤さん、仮装する気満々の関さん、作るより食べるのが好きな金田さん。それから私を加えた女子五人と、意外と手先が器用な男子五人がアシスタントに付きます。
お菓子作りって、結構腕の筋肉使うしね。
当日のシフトはまだ決まってませんが、まぁ内装を作ってる子達も何人か裏方に回ってくれるらしいので、余裕はありそうです。
「みんなは文化祭、誰かと回る約束してるの?」
「私は友達と。まぁ時間が合えばだけどね~」
「私はお母さんとお兄ちゃんが来るって言ってたなぁ」
関さんは、お母さん達に仮装を見せびらかしたいため、まだどんな仮装かは内緒にしているらしい。
林さんは友達と、安藤さんは彼氏が一つ上の学年にいるとか。
安藤さんの発言に、女子が一斉に食いつきました。
男子の肩がビクッて揺れたよ。
「安藤さん彼氏いるのっ!?」
「どんな人? 写メとかある?」
「いつから? いつから?」
関さんと金田さんの圧が凄いんですが、顔近すぎ無いかなぁ?
安藤さん若干反ってるよ、背中。
「えっとね、中学が一緒で。私も彼も陸上部だったのよ。で、陸上部って、ほとんど男女合同で練習するの、機材とかの関係でね。で、片付けとか一緒にしたり、帰る時、送ってもらったりしてて……こう、ね」
「まーじぃかっ! あまずっぱーいっ!」
「いいねいいね! 先輩後輩が、心を通わせ、いつしか恋が芽生えちゃうなんて!」
あまずっぱーいっ! とか叫びながらクッキーをバリバリ頬張る金田さん。
頬に手を当ててうっとりしつつ体をくねくねさせる関さん。
「林さん、あの二人っていつもあんな感じなの?」
「いや~、多分興奮マックス状態だわ。ね、ところで神代さんは? 文化祭誰と回るの?」
一人冷静…我関せずな態度でクッキーを味わってる林さん。
二人は放って置いても大丈夫だと言われたので、私も気にしないことにした。
安藤さんも、ノロケが始まったのか、何か話が盛り上がってるみたいだし。
「うーん…それがさぁ、文化祭の日にちが被っちゃって、来れないみたいなんだよね~」
「あら、他校の子? それは残念ね。じゃあ誰とも約束してないの?」
「ううん。弟が来るし、別の学校の子達は大丈夫らしいから」
首を振ると、林さんは何故か私とは違う方をちらりと見て、残念ね。と呟いた。
何が残念なんだろう?
林さんにも言ったように、文化祭の日程が被りました。亮くんの学校と…。
仮装するホラーカフェだって、決まった時に伝えたら凄い難しい顔で何か考えてたのが、スッゴく気になる。
とりあえず、学校行事だし、サボらないように念はおしておいたけど…大丈夫、だよね?
亮くんはこれないけど、かなちゃんと長谷部君は来てくれます。由紀乃ちゃんは残念ながら部活の試合があるんだって。
で、光希はもちろん来ます。早苗ちゃんのクラスは展示らしいので、一日一緒に回る予定にするんだろうなぁ。
「そういえば~、神代さんも、彼氏いるらしいじゃなーい?」
「えっ、何それ知らないっ」
「へ?」
「前に~、学校まで迎えに来てたって、目撃情報がありま~す」
金田さんのテンションがヤバくなってるよ? どうした? 安藤さんのノロケは終わったの?
ジリジリと近付いてくる金田さんと関さん。そこに追随する安藤さん。
……純粋に怖いです。