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ふぁっふぁ!

プールに行った数日後には花火大会に行きました。

今年はなかなか予定が合わなかったせいか、キュッと纏まって予定があります。

その前後が凄く暇なんだよね。遊んでくれる子が居ないの。


「ふんふふ~、ふんふふ~、ふんふんふふっふ~」


夏休み終わり間近の平日昼間。

お父さんは勿論仕事。お母さんも最近新しく勤めだしたパート。光希は部活。

課題は全て終わらせたし、なんなら始業式に持っていく荷物の準備も終わらせてあります。


ふと思い立ち、一人ノリノリで鼻唄歌いながら、キッチンでお菓子作りをしています。

ちなみに私は、ピアノは弾けるが微妙に音痴です。

誰もいないからこその、鼻唄なのである。

だから、音もなく家に入って来て声も掛けずにソファに座って私を見てるの、止めて貰えませんか、亮くん。


「……いつからいたの、亮くん」

「晶子が体でリズム取りながら卵割り始めたくらいからかな」

「それ最初からじゃないかなっ」


普通の顔して言わないで恥ずかしい。

亮くん的には、普通に玄関の鍵を開けてリビングのドアを開けて。音は出ていたらしいです。

集中してたっていうか、鼻唄に夢中だったっていうか…。


「今日は何作ってるんだ?」

「シフォンケーキに挑戦してるの。上手く出来るか不安だったから、皆の居ない時に、気付かれないように作ろうと思って……」


結局見つかっちゃったけどね。

シフォンケーキって、わりと難しいのよね。

前に挑戦した時は、生地が膨らまないし、あのふあっふあな感じが全くない出来だったのです。

あの時はなぁ、光希のこれじゃない感が……言葉にされなかったけど、しょんぼりした雰囲気と下がった眉が……。


「だから、今度こそは光希におっ! て言わせてやるんだからっ」

「あれはあれで、ちゃんと旨かったぞ?」

「亮くんは、贔屓するから~。ちゃんと不味いとか違うとか、言わないとダメだよ~」


私や家族の作ったものはもちろん、昔、調理実習でかなちゃんが失敗しちゃった、焦げてるのにベチャベチャしてるチャーハンを旨いぞって言いながら完食したからね。

かなちゃん本人すらマズッ! って吐き出したやつを。

暫くは、亮くんは味覚音痴かと思ってしまってましたが、あれ、素で身内贔屓なんだよね、多分。


さて、気合いを入れてかき混ぜた生地を型に流して、空気を抜いて、温めておいたオーブンへ入れます。

あとは時々様子を見つつ、出来上がりまで待ちです。


「もう夏休みも終わっちゃうね~」

「だな。二学期は体育祭と文化祭か、また忙しくなりそうだな」


紅茶を淹れて、亮くんとソファでまったりします。

夏休みといえど、平日昼間は情報番組やドラマの再放送くらいしか放送していないので、テレビはつけてません。


体育祭は良いとして、文化祭かぁ。

他校の人呼んでも良いのかな? 私も亮くんのところの行ってみたいし。

日にちが被らなければいいなぁ。

他愛ない話をしながら時間を潰していれば、部屋に甘い匂いが立ち込めてきました。

そろそろ出来上がりますかね?


「ん~、もうちょっとかなぁ」


竹串をプスッと刺してみたら、先端にちょっと生地が着いてきました。

生ですね。危険危険。

オーブンのタイマーを調節して、もう暫く、今度はこまめに様子を見ながら焼いていきます。

中まで火が通ったら、オーブンから出して逆さまにして冷ますのよね、確か。

上手くふあっふあになるといいなぁ。





結果、シフォンケーキは成功しました!


「ふあっふあ! ふあっふあ!」

「光希、口の中のを飲み込んでからにして。お母さん、生クリームの追加は無しです。お父さん、ビールと一緒に食べないで」


夕食後、充分に冷めたケーキにトッピングの生クリームを添えて出したら、皆喜んでくれました。

喜んでくれるのはいいんだけど、それぞれに色々呆れてしまいました。

亮くんには亮くんの家族用にホールで持たせたので大丈夫。

今日は夕方に帰りましたよ、亮くん。

なんでも、敦さんが家族会議がどうとかなんとか……。何かお話があるようです。


「晶子も腕をあげたわねー。本当、美味しいわぁ」

「うん、甘さもちょうど良いし、というか、甘くないから酒のつまみになるぞ」

「ケーキはスイーツです! 酒の肴にしないでよ!」

「姉ちゃん、ふあっふあ! まじふあっふあ!」

「光希はそれしか言えないのっ?」


あれ可笑しいな。

八等分にしたシフォンケーキ、あと一つしか残ってない。

いつの間に皆二つ目食べたの!?

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