思い立ったが、吉日です。
季節は変わり、初夏です。
由紀乃ちゃん達も亮くんも、光希も部活が忙しそうで、なかなか電話すら出来ない感じになっております。
早苗ちゃんも、今日は部活に出るから、と学校へ行ってます。
休日なのに、やることがないです。
「お母さ~ん、暇ぁ~」
「晶子、とりあえずソファに寝転がるのは止めなさい。宿題は?」
「無い~、ひーまー」
せめて宿題があれば、午前中くらいは時間が潰せるのに、今週はどの教科も宿題が出ませんでした。
予習は一通り昨日の夜やっちゃったし、暇だよう。
私の部活? 基本土日はありません。
「……お菓子でも作ろうかな」
「あら、じゃあ光希と亮太君にはちみつレモンでも差し入れしたら?」
「差し入れ?」
「二人とも、明日も部活でしょう? 暇なら少しは運動しないと、夏に向けてね」
お母さん、暗に太ったって言いたいんですね、分かります。
はちみつレモンって、お菓子になるのかなぁ?
疑問に思ったけど、することもないし、素直に言う通りにしようかな。
ついでに型抜きクッキーでも作ろう。一番楽だし。
部屋着から外に出ても良いような服に着替えて、財布の中身を確認して携帯を持って、エコバッグも忘れずに。
商店街の方が安いので、そっちに行こうと思います。
「あ、ついでにみりんと料理酒よろしくね」
「また、重い物を……」
みりんと料理酒を買い、クッキーの材料とレモンと蜂蜜を買って、ヨタヨタしながら家に帰ると、玄関の所で亮くんが立ってました。
まさに今、玄関を開ける瞬間でした。
亮くんは私に気付くと素早く荷物を持ってくれます。ありがたい。レモンがかなり安くて、ついつい買いすぎたんだよね。
「おかえり亮くん。今日はちょっと早かったね?」
「ただいま。三時から他の部が練習試合するらしくて、一時半には終わったんだ」
「そっか~、お疲れ様です。荷物ありがとー」
亮くんの手が塞がり、私の手が空いたので、玄関を開けるのは私です。
キッチンに荷物を置いてもらいました。
亮くんはリビングの方へは行かず、私の買ったものに興味があるのか、袋を覗いています。
仕草がちょっと可愛い。
笑いそうになりながらも袋の中身を取り出していきます。
みりんと料理酒は、いつもの場所に片付けて。
クッキーの材料と、レモン、蜂蜜、あと、せっかくだからクッキーの型を新しいのを買ってみました。
「レモン? 」
「うん。はちみつレモン作ろうかなと思って? お母さんが、明日も亮くんと光希は部活だし、私、やることなくて暇だし、差し入れ的な?」
ふぅん、と頷く亮くんを横目に、早速はちみつレモンの方を作ることになりました。しっかり漬かった方が美味しいからね。
亮くんが私の斜め後ろに立って手元をじっと見てるのは、何でなんだろうか。
私の料理の腕を心配してる? いや、手料理いつも食べてるし、きっとすることがないからだよね?
はちみつレモンをタッパ四つ分作り終わったら、ついでにクッキーに取りかかります。
洗濯を取り込んでたお母さんが、食べたいから早く作って。と言って洗濯物を畳み始めたからです。手伝ってはくれないようです。
「ただいま~。ん? 何作ってるの?」
「「「お帰り」」」
クッキーを焼き始めたら、丁度光希が帰ってきました。
作っているから気づかないけど、相当甘い匂いがしてるみたいです。
「暇だから、クッキー作ってみたの。もうちょっと掛かるかな」
「先にシャワー浴びて着替えちゃいなさい。出来立てを食べましょ」
お母さん、良い笑顔ですが、貴女何も手伝ってないですからね?
自分も作った。みたいな言い方になってるよ。
出来上がった分をお皿にザラッと出して、第二段をオーブンへ投入します。
お母さんが紅茶の用意をして、光希が戻ってきたら、四人で早速味見です。
「うん、美味しい」
「砂糖は少な目にしたから、亮くんと光希でも平気でしょ?」
「晶子が作ったもんなら何でも大丈夫だぞ?」
「うまぁ~。姉ちゃん、これ明日部活に持っていって良い?」
三人ともパクパク食べてくれます。
焦げもないし、上手く出来ました。
そして、ちょっと大量に作りすぎたので、光希に部活に持っていって貰って、あと亮くんちにお土産ですね。
ちゃんとお父さんの分は取ってあるので大丈夫ですよ。