状況確認、把握して決意
ド素人の初作品です。お手柔らかにお願いします。豆腐メンタルな人間です。
ストック無し、行き当たりばったり、遅筆のダメ人間です。
誤字脱字や方言指摘してくださると嬉しいです。
但し防御力1、HP1のザコです。
バイト帰りに近所のコンビニ弁当片手にアパートに帰る。
一人暮らしにも日々のルーティンにも慣れた頃、いきなりそれはぶっ壊された。物理的に。
耳障りな音を響かせながら、眩しい光を向けられた。何、と思う間もなく、全身に衝撃。多分飛んだ。
私は車だかトラックだかに体当たりされて20にもならない人生を終えた。
「…終えた、よね?」
覇気のない呟きがしんとした病室に響く。
とりあえず状況を整理しよう、私の精神の安全のために。
私は神代晶子。母親と二人家族で、大学進学を期に一人暮らしを始めた。
大学近くの居酒屋でバイトをした帰りに、夕食用にコンビニ弁当買って大通りの明るい道を選んで歩いてて…
「車に引かれて、死んだ…」
んでもって、だ。
今現在の私は、神代晶子。両親と弟の四人家族で、保育園生。
明日(もう今日か)ある遠足が楽しみ過ぎて、数日前からハイテンションになってて、風邪だと気付かず拗らせてぶっ倒れた。
うん、どういうこっちゃ?
「あ~、うん? う~ん、はぁ」
頭をひねって記憶を整理して、何となく解った気がする。
「私、産まれ直した。ってこと?」
生まれ変わったとか、前世の記憶が蘇った。とかじゃない。
私が`私´として、一度終えたはずの人生を一からやり直してるんだわ。
高校の時に友達が話してた小説にあった、退行ってやつ?
「あはは~、笑えない…」
思い出したわ。小さい頃、弟が死んで、両親の仲が壊れて離婚した。他にも、嫌なことも悲しいことも、全部かは判らないけど、思い出した。
「こうなったらヤケよ。起こること分かってるんだから、防ぐことは出来るはずよ」
死にたくなかったとか、原因がなんだとかぐだぐだ言ってられない。グチグチ言っても泣いてももう戻らないのは理解できる。
後悔だっていっぱい、やりたかったこともいっぱいある。同じ人生ってことは、死ぬ時期も多分、一緒。だったら、したいことをする。
「後悔一個も残すものかっ」
薄暗い病室で、私は一人拳を高々と振り上げた。
1日経って、朝来た看護師さんがお母さんはすぐ来るからねー。と小さい子に言うみたいに笑顔で諭し、あぁ私マジで保育園生なんだな、と謎の感慨に耽ってしばらく。
看護師さんもいなくなり、お母さんもまだ来てない今がチャンスだと、私の後悔というかやりたかったことと、やればよかったと思ったこと、阻止したかった出来事を時系列で紙に書き出してみた。
「結構あるなぁ」
側にあったA5サイズのメモ帳が埋まるくらいは書いた。内容は途中で投げ出した習い事もあれば、弟の死、なんて物騒なものまである。
何時起きたか正確に覚えてないものがあるから、時期を見極めるのが大変そう。
まぁどうにかなるわよね。っていうか、こうやって客観的に見ると、私の人生波乱万丈じゃない?
紙を小さく畳んで、お母さんが持ってきたのであろう、私のお気に入り(だと思う)兎のぬいぐるみが着ている服のポケットに入れておく。
ここなら、誰も勝手に触らないから見つからないと思うし。
「おねーちゃっ」
「晶子、具合はどう?」
「おかぁさん、こうくん」
病室のドアが開いて、弟の光希とお母さんが入ってきた。
私はしゃべり方を少し舌足らずにする。保育園生って、こんな感じだったよね?
「おねつもうないよ。げんき!」
「おねーちゃっ、いっしょかえる!」
笑顔でアピールすれば、お母さんがほっとした表情になる。
そういえば、お母さんの笑顔ってあまり見てなかった気がする。
ベッドに登ってきた光希を抱きとめながら、ぼんやりと思った。
多分そんな暇なかったんだろうなぁ。私を高校、大学までいれてくれたし、お小遣いだって、周りの友達と遜色ないくらいくれていた。
今考えれば判るのに、当時はそれが当たり前だとすら気付かなかった。
「頑張ろう」
お母さんの笑顔を、光希の成長を、お父さんの優しさを、全部全部、壊さないように、私の出来ることを考えよう。
「おねーちゃ?」
「こうくん、だいすきよ」
「ぼくもっおねーちゃすき~」
不思議そうに見上げてくる光希にぎゅーっ、と声に出して抱き締めれば、光希も抱き締め返してくれて、きゃーきゃー声を上げて笑った。
「二人とも、お母さんを忘れないでよ」
「「きゃーっ」」
羨ましくなったのか楽しくなったのか、お母さんも私達二人を抱き締めてくれて、暫く三人で揉みくちゃになった。