オートファジー
「オートファジーって凄いよな」
「ああ」
吉良は2度頷いた。
なんだったけ?
内心の疑問を悟られない様に。
「あ~、OFな」
「OFって略してるのか?」
「おお、そうだ。
まだ、まだ甘いなお前は」
えッ、略さないの?
とりあえず、セーフ。
それにしてもなんだっけ?
オートファジーって。
「やっぱり時間をかけないとな~」
「それはそうだよ」
吉良は何かと探りながら、頭をフル回転させる。
「今はすぐに結果を求めるからな~」
「それにしても、菌を使うなんて驚きだな~」
菌ってなんだ?
今話題の腸内細菌?のことか?
「確かに、今は除菌、殺菌ブームなのにな。
さすがだな、あんなふうに菌を使うなんて」
必殺、オーム返し。
「酵母菌。
タンパク質をアミノ酸に分解して」
あ~、あれか。
吉良は推理した。
時間がかかる、
菌、
タンパク質をアミノ酸に分解。
今はやりのあれか。
『美味しん坊』には2、30年前に出ていた。
「俺はまだなんだけど。
お前は?」
「俺?」
「美味いらしいな」
熟成肉、と吉良は言おうとした。
「ちょっと待ってくれ」
吉良は振り返り、出入口の隣にあるテレビを見つめる。
日本人、ノーベル賞受賞のニュースが流れていた。
「ノーベル賞に乾杯!」
吉良は二人でジョッキを合わせた。