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時代遅れの剣豪  作者: 群龍猛
第一章 Σ(シグマ)惑星で大暴れ!
8/16

Episode7 隠された狙い

このEpisodeは、後半に残虐な描写が書かれています。

苦手な方は、読み飛ばして下さい。

 仄かに黄色い光沢を放つ、ノルドイド人の独特の両腕の鎌の刃先が、鮮血の飛沫を上げて人間の胸部に食い込んだ。人間の胸部が肋骨の折れる音と共に引き裂かれる。

 引き裂かれた人間は、ビクビクと引き裂かれ続ける間、全身を痙攣させていた。

 両眼は白目を剥き、口からは白い泡を噴き出している。

 肉は音もなく、縦に切られた。そこから大量の真っ黒な血がこれでもかと吹き出てきた。

 切られた胸部の間にノルドイド人の別の細い鋏のような腕が突っ込まれた。ポコポコと音を立てながら切り裂かれた胸部から血が溢れ、肺の臓器が間から赤くまさぐられるのが、見えた。

 それを眼前で、ただ何も出来ずに膝を付き見せられるグラエツは、余りのグロテクスさに目を背けた。人間の血の匂いが充満する。

 痙攣していた人間いや、地球連邦政府中央情報局局員は、既に口から白い泡を交え、血を吹き出しながら息絶えている。

 その異様な光景にこの施設に数体いるノルドイド人が色めき立っている。血の匂いに興奮しているのだろその口々らしきところから薄緑色の液体が垂れ下がっている。

「ききき」

 膝を地面に付いたグラエツ全権大使の耳に例の不快なノルドイド人司令官の笑い声が入る。すると、胸部に突っ込まれていた細い腕が引き抜かれ、その先端には人間の真っ赤な血を滴り落す、心臓が引きずりだされた。

 それを横目に見たグラエツは、再び異から異物がせり上がり仕掛け、咄嗟に両手で抑えた。

 引きずり出された心臓は、気のせいだろうかグラエツには微かに動いている様に見えた。

「なんとも食欲をそそるではないか、この赤い色に生物である臭い。ききき」

 とノルドイド人司令官は、取り出した心臓をまざまざとその飛び出た黒い球の目を赤い心臓に向けると、奇声を最後に上げ、その血が滴る心臓を口に詰め込む。

 心臓が潰され、ピチャピチャと噛み砕かれる音が響く。

「この下等な蛮族どもめ……」

 あまり残虐な行為にグラエツは、目を背けたまま思わうづ呟いた。

 その呟きが耳に入ったのか、ノルドイド人司令官の青い甲羅がピタリと止まり、黒くその球形の目をグラエツ大使に向けた。

「下等だと!」

 ノルドイド人司令官甲高い鳴き声を上げるとのと同時に、耳に取り付けられている貝式の翻訳機が抑揚なくその怒り反応をグラエツに伝えた。

 口から人間の血を滴らせ、その青い甲羅に生えるようにように伸びる六本の足が、先程、心臓を引きぬいた遺体を踏み潰し、グランツに荒々しく近づいた。

 三メートルはあろうかという青い甲羅が不気味にグランツ全体に陰を作り、司令官はその細い腕の鋏を、目を背きやや怯えるグランツ大使の胸ぐらを挟み込み、引き上げる。足が中に浮いた。

 その異様に黒い二つの球形の眼球が、グイと顔の真正面に迫った。

「この水袋の下等生物が、この我らを下等など口にするとは許せんな! 所詮、お前らは、我らが餌に過ぎぬ。見ての通り、我がこの刃を突き刺せば、いとも容易く貫かれ、赤い水を垂れ流す。我らの様な頑強な甲羅もない弱き劣等生物が! ここで、生きたままその心臓をくり貫いて、食してやろうぞ! ききき」

 黄色に光る刃の鎌をグランツの眼前に突き出し、その先端を心臓付近にノルドイド人司令官が突き立てる。黒い球体の眼球は、怒りによるためか、赤く変色をし始めていた。

 グランツの額から頬を伝って顎から冷や汗が一滴落ち、湿気の多いこの施設の地面に広がる。

 鎌の先端がググと胸部に強く刺し込まれる。白い外交用正装服の上からでも自分の胸の皮膚にその鋭利な鎌の先端が押し込まれる感触が伝わる。

 不用意に自分の本音を口にしてしまった事が、死期を早めてしまうことを、まさかこんな結果で実感しようとは思いもよらなかった。


 と、更に怒りに黒い眼球を真っ赤に変色させたノルドイド人司令官が、奇声を上げた途端、グラエツの浮かんでいた体が、不意に尻から地面に落ちた。

 首元には、先程まで胸ぐらをはさみ持ち上げていたノルドイド人司令官の細い甲羅に包まれた腕がぶら下がっている。その腕の根元から緑色の液体が、ドロリと粘着したまま垂れ、グラエツ大使の服に垂れた。

 ノルドイド人司令官は、奇声を張り上げながら後ずさっていた。掴みあげた腕が何かに切断されたようであった。

 湿った施設に馬が歩く際に響くような馬蹄の音が鳴り響いてきた。

「お前に大使を殺して良いなどの権限は、与えた憶えはないが? いつから、偉大なる主人であるガヴァファル人の命を無視して良いとかになったのだ?」

 声の主が施設の別の入口から馬蹄を響かせて、威圧的空気を纏って入ってきた。言葉は、明らかにノルドイド人の不快な奇声ではなく、重音で威厳に満ちた物だった。

 耳についた翻訳貝が、その声とも歌声とも聞くことが出来る言葉を地球語に翻訳する。

 そして、その容貌は、地球で言うケンタウルスのような姿であり、全身が銀色の鱗のような物に包まれ、頭部と胴は鱗で繋がっている様に見える。頭部には人間のような目が六つあり、左右に三つづつ縦にならんでいた。その異様な容貌の胴からは四本の腕がウネウネと伸びている。その内の一本が、長く伸びノルドイド人司令官の腕を叩き切ったようであった。

「おお! 偉大なるガヴァファル帝国カバナ騎士団団長ウィドール様。これは、この水袋種族……いや、テラ人共に我れらが、帝国の偉大さと知らしめ……」

 今度は、青い甲羅の司令官が怯えいるように、今まで赤く怒りを示していた眼球を黒い色にもどし、奇声が小さく微かに震えているようっだった。

「ふん。テスト航行で来て正解だったようだな。己等の欲望のまま、自らの母星に育ったあらゆる生物を食い尽くし、海の底で共食いするしかなく、死滅するのを待つのみだったお前たちに、宇宙で活躍の場を与えたのは、我らガヴァファル人だということを忘れるな。命に背くなら、それ相応の報いを得ることを肝に命じよ!」

 更に、もう一本の腕が、鞭の様にしなり地面を激しく、叩いた。

 それに青い甲羅のノルドイド人司令官は、頭を垂れるように後ろに下がった。

「大使殿。申し訳ありません。こ奴らは、まだ知性を得てから時が立っておらず、礼儀というものをまだ分かっておらんのでな」

 六個の目が同時に馬上から見上げるように尻餅をついたまま、何が起こったのか解らぬまま、下半身は馬そのもので、上半人は四本の細長い鞭のような触手と胴に生やし、全身が銀色の鱗に包まれた異星人を見上げた。

 ガヴァファル人。ノルドイド人を知性体に進化させた。北銀河連合とは、休戦中の強大な帝国の中心種族。

「帝国は、北銀河連合とは休戦協定を締結しているはず。この暴挙は、協定違反ですぞ!」

 座り込んだままのグランツは、声を張り上げた。現在、北銀河連合が戦争継続中なのは、ベリオン星系での領土問題で争っている西銀河共同体とである。

 そもそもガヴァファル帝国領土とベリオン星系では、離れすぎており、帝国が関係する事案ではない。更に言うと介入してもなんの見返りもえるようなものではない。

「この宇宙での協定などは、紳士協定。表に出ない限り問題にはなりますまい」

 鼻先で笑うようにガヴァファル人は、まさに見下すように答えた。

「わからない。なぜ、地球を態々、狙う必要があるのだ。我らは……」

 グラエツは、疑問に感じている事を馬上とも言えるガヴァファル人に質す。

「答えるつもりはない。大使殿を牢獄へお送りしろ。くれぐれも、殺さぬように」

 両脇をノルドイド人の兵士に抱えられ、グラエツは立ち上がると6メートルはあろう、ガヴァファル人を睨んだ。この奇妙な動きは、ガヴァファル人が裏で動いている。

 最終的目的は分からないが、その第一段階で地球が兵力をベリオン星系へ出撃させた後、がら空きになった地球を奇襲を掛け占領。そのあとは、ノルドイド人司令官が言ったように人類を彼らの餌にさせる。かつ、海に大量な産卵をさせる。

 ノルドイド人は、短期間で生育し、物量兵士生産としてはこの上もない戦力になる。

「しかし……」

 牢獄への通路を戻る最中、グラエツはそれがどうも本来の目的とは思えない。

 何か別の狙いがあるとしか思えない。なぜなら、地球などこの宇宙では、まだまだ発展途上中の一種族でしか無い。脆弱な種族である。何かあれば、直ぐに滅亡しかねない。

 戦局や今の宙域の勢力図を変えるような存在ではないのだ。

 しかし、ガヴァファル人は、あのワームホール発生装置なる禁忌の機械を使ってまで、ある意味危険を犯そうとしていた。

「この侵略作戦には、別の狙いがある……」

 それがグラエツが考え出した結論だった。最終的な答えは難解ではあったが。

このEpisodeは、拉致された全権大使で起こった話を中心に書いています。

ちょっと短めです。


誤字脱字がありましたらご指摘下さい。

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