週末の帰り道
キンコンカンコーン
今日の授業の終了を告げるチャイムが校舎に鳴り響いた。
私の周りの人達は、早々と机の上を片付けて、いそいそと教室を出て行く。
本日、週末。
金曜日の授業は、厳しい時間割でも、明日が休みだと思うと多少の我慢も出来るものだ。
だが、現在の私の心境は正反対だ。
可能ならば、土日も授業を入れて欲しい。
休日は家にいる分、お姉ちゃんからの命令の数がハンパないのだ。
私は先週の土日を思い出し、更に学校に止まりたくなった。
だが、今日はそういう訳には行かないのだ。
「美月〜!これから、美味しい物でも食べに行かない?」
節約家な清香が珍しく、私を誘ってくる。
私は授業中にしかかけない、黒いフレームのメガネをしまいながら、美味しい物という誘惑を振り払って断った。
「ごめん!今日、用事があるんだぁ…。」
これから、私はお姉ちゃんが作る年賀状の手伝いをすることになっていた。
お姉ちゃんが大学から帰ってくるまでに、
送る人の住所をパソコンに打ち込まないと私の休日はなくなってしまう。
また、どこでこんなに知り合ってくるのかというほど、彼女の送る相手は多い。
よく言えば社交的、悪く言えば外面がいい彼女は、面倒くさがりな癖にこういうことは忘れないのだ。
それに加え、私も年賀状を作らないとヤバい。
中学の時の仲がよかった友達に送るだけだが、姉のものに上乗すれば、また結構な数になる。
機械に弱い私にとって、気が遠くなる大変な作業だ。
「あら、残念。せっかく臨時収入入ったのにな〜。じゃあ、また今度、誘うね!』
「うん。ごめんね。じゃあね!」
清香に手を振って、教室を後にした。
はぁ…年賀状頑張って作らないと。
帰り道、私は考え事をしながら歩いて帰ることが多い。
家までの寒い帰路も、考え事をしていれば、意外と早く着くものだ。
それにしても、本当にお姉ちゃんの命令に振り回されているなぁ。私。
もちろん不本意だけど…住所さえ入力すれば、私の年賀状もコピーしてくれるって言ってたし。
…えぇ、それに釣られて今回の命令を遂行することになりましたとも。
だって、機械は本当にチンプンカンプンなんだもん。
文字入力くらいなんとか出来ても、コピーとか印刷とかはお手上げ状態だ。
っていうか、今月は基本的にお姉ちゃんの命令聞かないといけないからね。
成績アップのために耐える気でいたが、
今月は…まだまだ半分以上ある。
私は無意識に大きなため息をついて、とぼとぼ歩いて帰った。