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対照的な姉妹  作者: 星流
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至福の時は放課後



幸せだぁ…。


甘い香りに包まれながら、私は解放感を感じていた。



家にいるよりもゆっくりで自由な時間を過ごせるのが、学校って…どういうことなのか聞きたい。



今日は月に2回の料理部。

本日のメニューはカップケーキである。


手軽で持ち帰りやすいため、彼氏がいる子たちの食いつきがよかった。



私はもちろん、そんな相手はいない。



だが、これでも、天才型の姉より家事能力が高い自信はある。

だてに毎日こき使われてはいない。

むしろ、それくらい誇れるものがなければ、本当に悲しくなってくる。



「よし、出来た!」


カップに生地を流し入れて、オーブンにセットする。

あとは15分待つだけだ。



「さすが、美月、手際がいい。」

しっかり者で、この部活の部長の清香きよかに誉められると、純粋に嬉しい。


「本当。毎日、朝ご飯とお弁当作ってるだけあるよねっ!!」



明るい性格で、屈託のない笑みが可愛らしいあやちゃん。

ほわほわした彩ちゃんは私の癒やしだ。



「お母さんは朝早いからね。お姉ちゃんは朝起きれないから、消去法で私しか作る人いないだけだよ。」


まぁ、お姉ちゃんは起きたとしとも作る気ないんだろうけど。

正直、姉の料理姿は絵にはなりそうだが、まったく想像できない。


「美月のお姉さん、一回見たことがあるけど、めちゃくちゃ美人だよね。」


「えっ!?清香ちゃん見たことあるの?」


「偶然ね。お姉さんと美月が一緒にいたときに会ったの。優しそうなお姉さんだったよ。」



あぁ、あの日は上機嫌だったからね…。


面倒くさがりではあるが、社交的なお姉ちゃんを悪く言う人は…私を含めごくわずかだ。


私自身、お姉ちゃんの本性を言わないからね。


後が怖いし、言いなりになってるなんて恥ずかしいし。



「美人なお姉さんとお買い物?」

「確か、ケーキ食べに行くって言ってたよね。」



そう、あの日は衝撃的だった。


私がお姉ちゃんの命令で作ったガトーショコラ。

それをバレンタインに、本命に渡したらしい。

そして、後日、なぜかケーキを奢ってくれた。



渡した人とどうなったのかは、まったく興味なくて聞いてないけど…食べに行ったケーキはおいしかった。



「お姉さんがいるっていーな。彩は弟しかいないもん。」

「あのね、お姉ちゃんがいたって、毎回奢ってくれるわけじゃないよ?彩ちゃん。」


あの日がお姉ちゃんが私に何かを奢ってくれた最初で最後の日となるかもしれない。


この先の未来に、そんな幻のような夢を期待するだけ無駄なのだ。

せいぜい、一緒に買い物に行っても、荷物持ちにされるのがオチだ。


その光景が簡単に思い浮かぶから、恐ろしい。


「いいなぁ。うちの兄貴なんて、自分だけ遊んでばっかりだよ。」

悠希ゆうきさん?」


清香のお兄さん、悠希さんは私達の2つ上で、今は大学生だ。


清香とは中学からの付き合いで、悠希さんとの面識はそのときからあった。

けど、互いに清香を通した関係だったから、特に話す機会はあまりなかった。


そんな彼と去年同じ委員会になったことがきっかけで親しくさせてもらい、今となっては頼れる先輩の一人だ。


誰にでも優しくて、ノリのいい彼は、年齢関係なく友人が多かった。



1回、可愛らしい女性と歩いているところを見たことがある。


清香には秘密にしておきたいのか、私と目があったとき、とても慌てていたなぁ。



「ねぇ、美月、うちの兄貴と美月のお姉さんと交換しない?」



悠希さんとうちのワガママ女王様のお姉ちゃんじゃ、明らかに割に合わない。



「遠慮しとく。」


清香が損するから、と続けようとしたところで、オーブンが鳴った。


私はカップケーキにきちんと火が通っているか確かめるため、竹串を取りに行った。





美味しくできた持ち帰り用の3つのカップケーキは、

清香に1つ(どうしても食べたいらしく)あげた。


自分の分があるのに、わざわざ私のものも欲しがるなんて…。

よほどお腹がすいていたのだろう。


あとの2つは、お姉ちゃんとお母さんが食べた。



「まぁまぁね。

次にカップケーキ作るときは、ココア風味にしてよね。」



いちいちムカつく感想は余計だと感じながら、姉の意見をついつい参考にしてしまう自分に少し呆れた。




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