第七話:ありがとう、と言わせて
こんにちは、名前も知らないアナタへ。
突然ですが、これが最後の手紙です。
もし、アナタがこの手紙を読み続けてくれていたとしたら。長い間付き合ってくれてありがとう。
一日一ページずつ書いていたこの手紙も、あっというまに終わってしまいました。
この手紙を誰かが読んでくれている確証はないのだけれど、
私は、私の存在を、外の世界の人に知ってもらいたかったの。だからこの手紙を書きました。
ずっと病院で暮らしている私には、病院の人以外に友達が居ないから。
ここでこうして私が暮らしていることを、外の誰かに知ってもらいたかった。
隣の外村さんも、橋本のおばあちゃんも、志藤先生も、婦長も看護婦さんもみんな大好きだから。
だから、アナタに知ってもらいたかった。
みんなに仕掛けたイタズラは本当だよ。でも、みんな優しいから、一緒に笑ってくれます。
もっとみんなのことを書きたかったけど、時間が無いのが残念です。
この本がアナタの手に渡ったことを、古本の神様に感謝します。
本当はアナタのことも知りたかったけど、でもアナタと出会えてよかった。
私のことを、私達のことを知ってくれてありがとう。
名前も知らないアナタへ。 千羽桜より。