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しろぴあ  作者: ponzi
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第6話スキャンダルからの復活

熱愛発覚のスクープは、あっという間に週刊誌の一面を飾った。「人気バンドの歌姫、国民的イケメン俳優と禁断の愛!」という刺激的な見出しと共に、二人が都内の高級レストランで親密そうに食事をする写真が大きく掲載された。

記事が出た翌日、芸能界は騒然となった。「しろぴあ」のファンは、突然の報道に衝撃を受け、SNS上では様々な意見が飛び交った。祝福する声も一部にはあったものの、多くはきーちゃんの行動に対する失望や批判だった。特に、これまでストイックに音楽活動に打ち込んできた彼女のイメージとのギャップに、戸惑いを隠せないファンが多かった。

所属事務所は、事態の収拾に奔走したが、火に油を注ぐように、数日後には二人が人目を忍んでカイトのマンションに出入りする写真が別の週刊誌に掲載された。世間のバッシングはさらに強まり、きーちゃんがこれまで築き上げてきたイメージは、音を立てて崩れ落ちていった。

テレビやラジオの出演は次々とキャンセルされ、予定されていた全国ツアーの中止も決定した。スポンサー企業からは契約解除が相次ぎ、彼女たちの音楽活動は完全にストップしてしまった。

そして、最も大きな打撃だったのは、メジャーレーベルからの契約解除の通告だった。「社会的なイメージの著しい低下」という理由で、一方的に契約を打ち切られたのだ。

失意のどん底に突き落とされたきーちゃんは、誰とも連絡を取らず、自室に閉じこもる日々を送った。窓の外の喧騒が、まるで遠い世界の出来事のように感じられた。自分がこれまで何を大切にしてきたのか、何のために歌ってきたのか、何もかもが分からなくなってしまった。

そんな中、かつてのインディーズ時代からの古参ファンたちが、彼女を励まそうと動き始めた。特に、初期の頃から「しろぴあ」を熱心に応援してきた「にゃにゃさん」と呼ばれる女性ファンは、SNSを通じて他のファンに呼びかけ、きーちゃんへの応援メッセージを集めた。

「きーちゃん、私たちの歌姫。どんなことがあっても、私たちはあなたの味方だよ。」

「しろぴあの音楽は、私たちの青春そのもの。また、あの感動を一緒に味わいたい。」

「ゆっくり休んで、また元気な姿を見せてください。」

温かいメッセージの数々は、少しずつ、きーちゃんの閉ざされた心に届き始めた。そして、ファンたちの変わらない想いに触れるうちに、彼女の中で再び小さな火が灯り始めた。「まだ、終わりじゃない。もう一度、みんなと一緒に音楽を奏でたい。」

きーちゃんは、勇気を振り絞って、かつてのバンドメンバーに連絡を取った。ベースのユイ、ドラムのハル。二人は、きーちゃんの状況を知り、すぐに駆けつけてくれた。

「きーちゃん、大丈夫?私たちはずっと、きーちゃんの帰りを待ってたよ。」

久しぶりに顔を合わせたメンバーたちの温かい言葉に、きーちゃんの目には熱いものがこみ上げてきた。

そして、彼女たちは再び動き出すことを決意した。原点回帰。まずは、かつて活動の拠点としていた下北沢の小さなライブハウスから、再び「しろぴあ」の音を響かせようと。

復活ライブの告知がSNSで流れると、かつてのファンたちが続々と集まり始めた。チケットはすぐにソールドアウト。久しぶりに見る「しろぴあ」のステージに、観客たちは熱狂した。きーちゃんの力強い歌声と、ユイとハルの息の合った演奏は、ブランクを感じさせなかった。

下北沢での復活ライブの成功を皮切りに、「しろぴあ」は再びライブ活動を本格化させていった。千葉、埼玉、神奈川、そして徐々にその範囲を広げ、全国各地のライブハウスをツアーで回るようになった。かつてのファンに加え、彼女たちの音楽に再び魅了された新しいファンも増え、会場は熱気に包まれた。

一方、その頃、哲学者のponziは、学会でセンセーショナルな論文を発表し、大きな波紋を呼んでいた。長年タブーとされてきたテーマに鋭く切り込んだその内容は、一部の若手研究者からは熱狂的に支持されたものの、保守的な重鎮たちの猛反発を招いた。

「学問の冒涜だ!」

「若造の戯言に過ぎん!」

激しい非難の声がponziに浴びせられ、ついには学会からの追放という厳しい処分が下された。世間から隔絶された場所で、ただひたすら真理を探求してきたponziにとって、それは大きな痛手だった。

さらに追い打ちをかけるように、ponziは重い病に侵されていることが発覚した。日に日に衰弱していく体を感じながら、彼は残された時間を必死で生きる。

そんな中、ponziの心には、かつて言葉を交わし、共に音楽を作り上げたきーちゃんの姿が浮かんできた。あの時、彼女の歌声に乗せて、自分の言葉が多くの人々の心に届いた喜びは、彼にとって忘れられないものだった。

最後の力を振り絞り、ponziはきーちゃんに、そして「しろぴあ」に、最後の新曲を書き下ろすことを決意した。それは、彼がこれまで生きてきた中で見つけた、愛の本質についての深い考察が込められた歌だった。タイトルは「愛するということ」。

病床でペンを執るponziの手は震え、時折激しい痛みに襲われたが、それでも彼は一文字一文字、魂を込めて言葉を紡いでいった。それは、かつて彼が与えた言葉への、そしてきーちゃんへの、静かで深い愛情の証だった。

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