8/25
第八章:静かなる逃走
フミ、アレク、リィナ――三人はしばらく山間の村に身を潜めることになった。
けれどフミは、どこへ行っても同じだった。
薬草を育て、人を癒し、名前を名乗らず、ただ静かに生きる。
一方リィナは、その日から決めていた。
「私、次に誰かが“逃げたい”って来たら、今度は私が助ける。」
そう言って、フミの薬草ノートを自分用に書き写し始めた。
静かに、でも確かに――彼女も“癒す側”になろうとしていた。
次回:第九章『もう一人の癒し手』
新たに“助けを求める者”が現れる。そしてリィナが、初めてフミの代わりに誰かを癒す時が来る。