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第三章:噂の代償
「最近、来訪者が多すぎる……」
フミはため息をつきながら、乾燥中のハーブを裏返した。
森の中のひっそりとした薬草小屋だったはずが、ここ数日、訪れる者が急に増えていた。
噂を聞きつけて来た人々は皆口を揃える。
「ここの薬は、王都より効くと聞きました」
「呪いを解ける人がいると……」
フミは、名乗ることもなく、ただ静かに処置をし、薬を渡し、帰らせる。
誰も追い返さない。でも、決して名前も、素性も話さない。
その夜、焚き火の明かりの中でアレクがつぶやく。
「お前の噂が、王都にまで届いた。……あの貴族どもが動くぞ。」
「……関係ないでしょ。私はここから出ない。」
フミの声は、静かで、けれど揺るぎなかった。
ただ――その「静けさ」が、守りきれるかは分からない。