第二十一章:襲撃の夜、灯を守る者たち
それは、何の前触れもなく訪れた。
診療院の静寂を裂く、複数の足音――
ガンッ!と扉が蹴り破られ、黒ずくめの男たちがなだれ込んできた。
「“対象は白衣の女。生死問わず、確保せよ。”」
命令を口にしたのは、眼帯の男。
その背には、王家直属の隠密部隊“影衛”の紋章があった。
「来たか……!」
アレクがすかさず剣を抜く。
その太刀筋はまるで風のように鋭く、瞬く間に敵の刃をいなしていく。
「フミさん!下がってて!」
リィナは身軽に跳ねながら、敵の懐へ飛び込む。
得物は大きな金属製の注射器――“治癒師兼バトルナース”としての顔が覗く。
「こちとらこっちで鍛えてんだよ、っと!」
ゴイン!と鈍い音と共に敵が吹っ飛んでいく。
フミは怯えながらも、震える手で薬草を取り出していた。
「この葉は……幻惑効果があったはず……!」
瞬時に調合し、霧状の薬液を床に投げると、敵が一斉に視界を失い混乱する。
「今のうちに!アレク!」
「了解。全員無力化する。」
淡々と告げ、アレクは迷いなく敵を沈めていく。
⸻
戦いが収まった時――
部屋は荒れ、薬瓶が砕け、床に血が滲んでいた。
それでも、誰一人欠けていなかった。
フミは静かに息をつく。
「守ってくれて……ありがとう。」
アレクは剣を収め、静かに答える。
「違う。俺は“仲間の意思”を守っただけだ。」
リィナも、埃まみれになった服を払いながら笑う。
「さっすがうちの騎士様~。それにしても、フミさんもやるじゃん!霧のやつ、かっこよかったよ!」
「え、う、うん……!必死だったけど、なんとかなったね……!」
皆が笑うその中、フミの目だけが、まだ少しだけ“覚悟の炎”を宿していた。
⸻
その夜遅く。
王宮の奥深く、密やかな会話が交わされていた。
「……失敗したか。」
「はい、アレクと“例の癒し手”が想定以上に連携しており……」
「ふん。やはりあの男、ただの逃亡者ではなかったか。」
王の参謀、シエル・ファーグランは冷たく目を細める。
「計画は予定通り進めろ。“魔導炉”の件も含めて。
いずれ、あの娘が“鍵”になるはずだ。」
次回予告:
フミたちの診療院は封鎖され、“王都の外”へと追われることに。
その道中、ある村で“魔導炉”と呼ばれる不穏な遺物の存在を知る。
そして、カエルスがついに動き出す――
王の意志に反して、“真実”を追い求めるために。




