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◎アプローチ方法(主観)、STEP4

 ここだけ異様に長いです、くれぐれも覚悟の上でご覧になって下さい。

〇STEP4……ナチュラルボイス

 ダンディ声を安定して出せるようになったら、今度は自然な男声「ナチュボ」ことナチュラルボイスの習得に取り掛かってみましょう。正直に言って、ナチュボに関しては明確に()()と言う正解がない代物となります。故に各々で自分に合ったナチュボを目指して細かな調整をしていく必要がありますが、ここではナチュボの調整に役立つであろういくつかのポイントを紹介して行こうと思います。



①「ミックスボイス」の活用。

 ナチュラルボイスと呼ばれる声は、もし明確に定義する場合「男性の喋り声」に該当する事と思います。そしてこの「喋り声」を出すために欠かせないのが「ミックスボイス」の概念です。

 「ミックスボイス」とはその名の通り、地声と裏声の中間の響きを持った声を指し、大抵の人が無意識下でこの「ミックスボイス」を用いて会話を行っている事でしょう。「ミックスボイス」と聞くと主に「歌う時に使う声」と言う印象があるかもしれませんが、同時に普段喋る際にも必要不可欠な要素となっています。実際、男性の大半も普段はこの「ミックスボイス」を用いて会話を行っている訳ですからね。

 ここで大前提として「ナチュラルボイス」とは何か?解釈によっては「男声のミックスボイス」に該当するとも言えるでしょう。

 筆者の感覚ではありますが「ダンディ声=地声」、「ナチュラルボイス=ミックスボイス」と置き換える事は可能だと思っています。筆者の地声はダンディ声と非常に酷似しており、ミックスボイスの要領で喋り声を出している訳ですからね。そうなると、これに準えてナチュボの調整を行う事も可能なのではないでしょうか。

 要するにです。「ナチュラルボイス」を出すにあたって「ミックスボイス」の活用も大いに検討すべきと言う事です。身も蓋も無い話ですが、「ミックスボイス」についてはネットのありとあらゆる場所で既に情報が出回っている事ですし、そちらを参考にすると良いでしょう。

 筆者では確認しようがないので各々で試して頂きたい所ではありますが、「ミックスボイス」の考え方を転用してダンディ声の調整を行えば、ナチュボを習得出来る可能性は大いにあると睨んでいます。細かい事や調整に関しては、各々の持ち得る「ミックスボイス」の知識や感覚と照らし合わせて確認して頂ければと思います。


 一応まとめです。


①「ダンディ声」は、男声における「地声」に該当すると思われる。

②「ナチュラルボイス」は男声における「喋り声orミックスボイス」に該当すると思われる。

③「ミックスボイス」は「地声」に「裏声の要素」を混ぜた声であり、「地声と裏声の中間」に位置する声に該当する。またその際、「地声」と比べ若干音程が上がる傾向にある。

④「ダンディ声→ナチュラルボイス」と変化させるには、男性が「地声→喋り声orミックスボイス」とアプローチするのを参考にすると良さそう。

⑤また男性特有の口調、イントネーションを真似るのも忘れないように。何と言っても「喋り方」自体が最終的な完成形を決める。


〇筆者的ミックスボイス

 念の為、筆者が思う「ミックスボイス」についても軽く触れておきます。

 私が行っているアプローチは「地声から裏声に近づけた声」と「裏声から地声に近づけた声」の二種類を確認し、それらを繋ぎ合わせる手法です。

 しかしこの時、人によってはこれらに差異が殆ど生じなかったり、「どちらも地声と何ら変わりない」と仰せの方もいらっしゃるようです。対して私は「別の声」であると認識しています。と言うのも私の地声が低く、裏声と比べた際にどうしても声質に大きな違いが生じてしまうからです。

 その反面、別の声とは言いながらもこれらを限りなく近づけるアプローチは可能でした。可能な限り両者を互いに近づけつつ、それらの繋ぎ方を工夫する事によって、声が切り替わる際の落差を極力小さくすることは出来るようなのです。

 具体的なやり方ですが、実はどちらの声を出す際にも要領は大きく変わりません。

 前者「地声から裏声に近づけた声」の場合は地声の音程のまま、若干裏声の成分を混ぜていきます。地声の時と比べて、同じように出そうとしても音程が高くなると思いますが、それで構いません。後者「裏声から地声に近づけた声」の場合は裏声のままで結構です。

 この状態で喉周りの調整を行う事でミックスボイスを出していく訳ですが…私が刮目すべきと考えるのは二点だけです。


 それはズバリ「軟口蓋の抑え」と「うなじの抑え」になります。


 前者「軟口蓋の抑え」に関しては、ユージー法の習得に勤しんでいらっしゃる方々なら嫌と言う程試した事でしょう。口周りまたは喉周りの形が崩れないように上から蓋をするかの如く、軽く押さえるイメージです。またこの時、軟口蓋の抑える向きを幾らか前方に向ける事で声が籠るのを防いだり、更に度合いを強めて鼻先に息を集める事でエッジボイスに切り替える事が出来る、と言う側面も存在しています。

 後者「うなじの抑え」に関してですが、これがミックスボイスにおける最重要項目であると考えています。ミックスボイスの調整で「喉は締めないんだけど実際には締まっている」なんてあやふやな表現も飛び交っていますが、私が思うに「うなじ周りの筋肉を使って喉を絞める」と表現したいのではないかなと推測しています。イメージとしてはうなじ付近、または首の後ろ側の付け根付近の筋肉に力を入れ、これを()()()()()()()()()()()()押さえます。

 感覚が良く分からない場合には、前方を向いた状態で(この時顔の向きが、上にも下にも向かないように気を付けます)、うなじ(僧帽筋に該当します)に両手を当てて押さえながら調整すると解り易いと思います。そして僧帽筋に力を入れながら、うなじ(手を抑えた中央付近、背骨の極端に骨が出っ張っている付近)を始点とし、鎖骨の中央付近を通りながら前方に息が通るイメージで発声するのです。こうする事によって喉が絞まる感覚を殆ど感じないまま、音程を上げていけると言う寸法です。

 

 但し今回の男声における活用の場合、少しだけ視点を改める必要があるでしょう。

 男声におけるナチュボの場合は、裏声と比べてかなり音程が遠い声になり、且つ歌声のように高音域で出す訳では無い事を踏まえるに、ここで特に刮目すべきは前者の「地声から裏声に近づけた声」になるでしょうか?

 つまり「ダンディ声から裏声に近づけた声」もしくは「ダンディ声に裏声のテイストを混ぜた声」こそが、ナチュボ習得に大きく近づくのではないかと言う事です。



②音程を変える

 皆さんも①の段階で音程は上げていると思うので「今更何だ」と思うかもしれませんが、一応ここで()()()()()()音程の変え方を紹介しておこうと思います。ここでは今までよりも「男声の成分を保ったままより上の音域に上げる方法」、或いは「下方向に音域を広げる方法」について取り扱って行こうと思います。


〇音程を上げる

 ナチュボの項目で紹介していますが、特に歌う際や声色を変える際など、様々な局面で必須となってくる重要な項目です。勿論ナチュボにおいても、通常ダンディ声よりも高い音域で発声する必要がありますので、やはり避けては通れない項目となってくるでしょう。

 その肝心の上げ方ですが、先にも出た「ミックスボイス」の要領が役に立ちます。

 まず男声を出す際に「軟口蓋の抑え」と「僧帽筋の押さえ」が効いている事を改めて確認してみて下さい。そして男声の音程を上げる際には、「軟口蓋の抑え」をキープする事を念頭に置きつつ、「僧帽筋の押さえ」を強める事で対応すると良いでしょう。この時息の流れは変えないように注力しつつ、「軟口蓋の抑え」は音程が高くなるに従って強める意識で(風邪後の形をキープするイメージでもいい)、「僧帽筋の押さえ」も同様に強めつつ、その押す方向を上方向に向ける、或いは力を加える際の始点を下げる事で対応します。僧帽筋の中央付近を始点としていたイメージを、背骨のラインに沿って、肩甲骨の中央を通りつつ腰に向って下げる事で安定感を保つ事が出来ると思います。息の通し方や質は変わりません。恐らく男声を保ったまま音程を上げていくと肩甲骨の下側付近が限界で、腰付近まで始点を下げると力が分散してしまい声が裏返るのではないでしょうか?


 そもそも男声の特殊な響きは鼻声による所も大きく、何なら「鼻にかかった溜息」が軸になっているといっても過言ではありません。喉を下げた状態で、この息遣いを用いて胸にガラガラ声を響かせながらショタボを出すと男声になる訳です。そしてこの形を保ったまま音程を上げる必要がある訳ですが、何も考えずに音程を上げようとすると、風邪声の形が崩れてしまい、一気にガラガラ声が抜けて只のショタボになってしまう筈です。故に男声の音程を上げる際には、如何に風邪声の形を保ったまま音程を上げるかが命題となります。

 しかし音程を上げると、どう頑張っても喉の位置は上がってしまいます。これは人体の構造上どうしようもない事実です。但し風邪声の形を維持するだけであれば、ある程度の音程までは我慢する事が出来る筈です。喉の位置こそ上がれど、鼻にかかった溜息を維持しつつ胸にガラガラ声を響かせる事は、ある程度の音域までは何とか出来るのではないでしょうか。その後はミックスボイスの出し方を応用して適所に力を加える事で、もう少し音域を伸ばす事が出来るでしょう。

 この時、風邪声の形を保つ上で欠かせないのがやはり「上顎(軟口蓋)の抑え」と「僧帽筋の押さえ」の二つとなります。特に喉が上がってしまう高い音程において、二つの要素を強く意識しましょう。喉が上に上がるにつれて崩れそうになる風邪声の形を、僧帽筋と軟口蓋を用いて無理やり押さえつける事でキープするのです。

 何度も言うようですが、くれぐれも息の流れは変えないように、下顎のラインに沿って出す形を崩さないように注力しましょう。音程が上がるにつれて舌全体が持ち上がってくると思いますが、ここで息の流れを上方向に向けないように、寧ろダンディ声の時以上に下方向の息の流れを強く意識して発声すると思います。軟口蓋の抑えをキープして溜息に近い息を出せば自然と鼻にかかり、同時に下方向も向くと思いますので、後は僧帽筋を押して下顎のライン(難しければ舌のライン)に沿って息を出すように調整しましょう。

 因みにナチュボの場合は音階を一つから三つ程度上げたくらいで調整すると良いと思います。これは人によって異なりますので、ナチュボの調整の際には自分に合った音程を探っていただければと思います。


※大前提として、人間誰しも高音音域の限界が存在します。地声の低い男性でも声が裏返ることがあるように、男声を出している女性または地声の高い男性諸君も何時かは声が裏返ります。そうなりましたら、そこがあなたの男声の限界音域(高音域)だと認識していただければと思います。この限界音域があることを前提において、自分の音域を模索して頂ければと思います。



〇音程を下げる

 逆に音程を下げる場合ですが、こちらについては低音強化の基本「ダンディ声発声」と「カルグラ」の二つを紹介します。これらを用いて、各々で工夫して頂ければと思う次第です。


※その前に

 ここで紹介する二つの発声ですが、そのどちらも「風邪声」をベースとして発声にこぎつける事が出来ます。一度風邪声の形を作ってから、それぞれへの移行を試みると解り易いと思います。

 チェストボイスのまま音程を下げていくと、何れこれ以上下がらないと言う音域に辿り着く事でしょう。その音域で前方向に強く鋭い息を飛ばす意識で発声を行うと風邪声を出す事が出来る筈です。これはメラニー法におけるカエル声に該当する発声になりますので、今一度確認しておくことをお勧めします。


・ダンディ声発声

 こちらは主に「溜息の息遣い」もしくは「後ろ側で響かせる発声」を用いて、自分の低音における限界音域を広げる方法になります。この声の出し方が喉声やチェストボイスとは異なる要領になりますので、この場では「ダンディ声発声」と呼称しようと思います。

 これは端的に言えば「低音域における裏声に該当する発声」に該当するでしょう。自分の地声チェストボイスの最低音域に到達した段階で、息遣いをより溜息に似たものに切り替える事で声が下方向に裏返って音域が広がると思います。

 原理としてはダンディ声と同じです。但し音程を更に下げる場合として、音程が下がるにしたがって上顎や軟口蓋を押し下げながら鼻腔を大きく取るようにし(低音域は主に軟口蓋の抑えを用いて調整を行います)、同時に下顎を前側下方向を意識して外すようなイメージを持ちつつ自重を用いて落としながら喉を開き、溜息の要領で普段に増して息の量を多く柔らかく使う(軟口蓋を押さえると鼻声の成分が強くなるので、これを喉に多く通すイメージ)事で対応します。そうする事で力強さこそ感じられないものの、音域を下げる事だけは出来ると思われますが…どうでしょうか?

 この時気を付けることが三つ、まず一つが「リラックスする」事、二つ目が「息の量をケチらない」事、三つ目が「声を遠くに飛ばそうとしない」事です。低音域を広げるにあたって喉周りに力が入ってしまうと喉がつっかえてしまい、声帯が下がらなくなってしまうので、何よりも力みを誘発するアプローチは厳禁です(これが原因で、チェストボイスにおける最低音域に行き着いてしまう訳です)。その為に一つ目のリラックスを前提とし、尚且つ豊富な息を溜息のように柔らかく使う事を前提に、そして声を無理に遠くに飛ばそうとするのでは無く、近くで囁くようなイメージで発声すると上手く行くと思います。

 基本的に音程の調整は基本的には「軟口蓋の抑え」を用いて行い、音程が下がるにつれて口周りの力を抜いていき、自重を用いて軟口蓋を落としながら一緒に喉を下げるように意識すると良いでしょう。低音域に向かうにつれて、リラックスしながら、喉が絞まりにくい体勢を作り、溜息の割合を強める事で上手く広げられる筈です。

 またここで一度ダンディ声を出して頂きたいのですが、この際に「軟口蓋の抑え」と「僧帽筋の押さえ」が効いている事を改めて確認してみて下さい。そして男声の音程を下げる際には、「軟口蓋の抑え」をキープする事は前提なのですが、こちらは最初の内はあまり注力しなくても構いません。最も重要なのは「僧帽筋の押さえ」で、この押さえ方自体を変える事で対応します。厳密には息の流れに着目し、これまで僧帽筋の中央から鎖骨の中を通っていた息を()()()()()()()るようにし、鎖骨全体を前方に向って押し広げるように力を加えるのです。こうする事で音程を下げるのに最も肝要となる「喉元を開く」と言う動作を体現しつつ、最低音域を幾らか広げる事が出来るようになると思います。

 この時収束させていた息を太くし、自分の鎖骨全体を()と捉え()()()押し広げる事(鎖骨の押さえ方が中央に寄っていた場合は喉元が開き切らないので音程が広がりませんし、外に寄っていた場合は力が入らずダンディ声発声になってしまいます)で、喉元を押し広げてつっかえを無くす事で最低音域を拡張しつつ、並行して胸部での共鳴も強化します。また前方に向って息を押している為、ダンディ声発声に比べればある程度は力を加えて発声出来る筈です。このようにして、幾らか低音域のパワーを強める事が出来たりもします。

 これが出来たら、今度は「軟口蓋の抑え」に着目し、この抑える力を強める事で低音域を押し広げていく事が出来ます。そして軟口蓋の抑えで音程が下がらなくなった場合は口周りの形を崩さないように気を付けつつ、鎖骨を前方向に押す力を抜いてリラックスしつつ軟口蓋と喉を落とす事でもう少し音域を広げられると思います。これを続けていくと喉が閉鎖し、次に紹介するカルグラの発声に繋がる事と思います。


・カルグラ

 これは別名「仮声帯発声」とも呼ばれる発声方法で、他に「がなり声」や「唸り声」と表現される事もあります。「仮声帯を声帯の1/2の周波数で声帯と同時に鳴らす」という中央アジアで盛んな喉歌のテクニックの一つで、こちらは「前側で響かせる発声」を用いて、自分の低音における限界音域を広げる方法になります。

 具体的なやり方としては、先ず風邪声の形を作って頂き、その時に出している息を前方向により強く押し出しながら細く絞る、喉を前方向に押し出すイメージと共に閉鎖させる事で発声を行う事が出来ます。この時「前方向に押し出すイメージ」を強くイメージしながら、何なら風邪声以上に息を前に押し出すイメージを持つと安定し易いと思います。ここでチェストボイスが自然と混ざることで喉が閉鎖し、出せるようになる人も居るでしょう。この時口周りのポジションは「お」の形で、下顎の下のラインを意識しながら発声するようにしましょう。息は下顎の先端に集めるイメージで、それより前方を意識しても良いかもしれません。

 カルグラの発声では、ダンディ声発声とは異なり声帯が閉鎖している感覚が強く感じられます。しかし高音域の発声とは異なり、のどが絞まって苦しくなる感覚が無いのが特徴です。後音域が下がるにつれて下顎が疲れますね。

 因みにカルグラの高音域では声帯の振動に加えて、仮声帯の振動がミックスされた状態で発声がされていますが、ここから音程を下げていくにしたがって声帯の振動を加える事が出来なくなり、やがて仮声帯の振動のみになる事でしょう。これがあなたに出せる最低音域に該当します(因みに先述したダンディ声発声においても、何処かの音域で生体の振動を加えられなくなり、仮声帯の振動のみの発声に移行してしまいます)。ここまで下がると音程の調整を意図的に行う事は不可能なのですが、基本的には声帯の振動を混ぜ合わせられる音域の範囲内では「声帯の振動(地声)」を用いて音程の調整を行うようにしましょう。カルグラの発声では必然と喉が閉鎖しますので、低音域に向かうにつれて「お」のポジションのまま、下顎を落としながら喉を開き、下顎のラインに沿って前方向に息を出す事を意識すると幾らかやりやすいと思います(解らなければ、ボイストレーナーの方に聞くのが早いとも思いますが…)。

 

 正直ナチュボの調整で用いる事はあまり無いと思います。主に歌う時やダンディ声の幅を広げる時、また安定感の増強と言った場面で役立つ項目となるでしょう。しかしこちらも高音域と同様、限界音域がありますので、くれぐれも自分の音域に合った男声を使うようにしていただければと思います。



③ショタボとの比較

 恐らくこの男声習得に向けて日々邁進されている方ならば「何をいまさら」といった内容になると思いますが、予めショタボを習得しておきましょう。ショタボに関してはここでは深く触れません、多分身体が男の私より皆さんの方が関心も深いでしょうし…

 ここで注目していただきたいのは「音程の変化」です。ダンディ声を一度出してみて、その形を保ちながら「アー、アー」と音階を踏み徐々に音程を上げていってください。するといずれショタボに声が切り替わる事と思います。このようにダンディ声とショタボは比較的近い発声を行っており、(ショタボに風邪声のガラガラ声を混ぜたものが所謂ダンディ声に該当する訳ですが)慣れてくれば音程の変化に合わせてショタボとダンディ声を行き来させる事が出来るようになると思います。しかし逆に言えば、ある特定の音域(厳密には別物ですが、メラニー法における「スポット」に該当します)を境に、ナチュボとダンディ声がくっきりと切り替わってしまうのではないでしょうか。声が裏返る現象とは若干異なりますが、地声が裏返ると裏声になるように、ダンディ声のガラガラ声が特定の音域を過ぎた辺りから混ぜられなくなり、結果ショタボに代わってしまうと思います。歌うだけなら何とかなる人もいるでしょうが、ナチュボとして活用しようとすると、どうしても声に違和感があったり、出し方に無理があったりと皆さん頭を悩ませる事となるでしょう。

 これを踏まえ、大前提として「ナチュボを出すには音程を変化させるだけでは不十分」である事をご理解頂きたいと思います。要するに、音程の変化以外にも複数のアプローチを用いてナチュボを作り上げていく必要があると言う事です。ここからは男声に乗算可能だと思われるアプローチの方法を幾つか紹介しようと思いますので、各々で必要なものを取捨選択しながら調整を行って頂きたいと思います。他にも独自に工夫できるポイントやアプローチを見つける事が出来ましたら、そちらも個々で試していただければと思います。


〇筆者的ショタボ…の考察。

 筆者は女声を用いたショタボしか出せないのですが、これを基にショタボが何たるかを考察してみました。

 まずショタボの前提として、どのショタボであっても後ろ側、主に背骨のライン上で響かせる声である事が挙げられると思います。恐らく前方向に息を飛ばしながら出せるショタボは存在しないのではないでしょうか?これが先程「ショタボとダンディ声が近い発声」と呼ばれる所以で、どちらも後ろ側で響かせる発声、息遣いを軸としています。故にナチュボの調整を行う際には、ダンディ声に地声を混ぜるよりも、ダンディ声にショタボを混ぜる方が上手く行く可能性が高いです。恐らく地声を混ぜようとすると、女性の地声の大半が前方向に飛ばす意識の強い息遣いになっているであろう事から、必然的に息遣いが前方向の意識強めになってしまい、これに比例してガラガラ声の成分が強くなってしまう事が予測されます。

 そんなショタボですが、筆者が思うに大まかに分けて二種類に分類されるのではないかと予想されます。一つが「女声の延長線上で出せるショタボ」と「男声の延長線上線上で出せるショタボ」の二種類です。しかし考え方やアプローチ方法に違いは有れど、声の質としては大差が出ないのではないかとも予想しています。それ即ち、ショタボが元々男声と女声の中間に位置する発声に該当するからです。そんなショタボの定義や範囲は曖昧で、結局はそれが男声よりなのか女声よりなのかの些細な違いでしかないと筆者は考えます。

 正直、どちらのショタボであっても同じショタボである事に変わりは無いでしょう。個人差もありますし、皆さんの地声に大なり小なり差異が生じるように、ショタボにも同様の現象が発生するはずです。なので細かい定義付けや理論の話に関しては各々で確立して頂くとして、ここでは男声と女声それぞれを出発点としたショタボについて考察していきます。

 

♂男声の延長線上で出せるショタボ

 これを一言で言い表すなら、「音程の高い男声を喋り声にしたもの」となるでしょう。喋り方、(イントネーション)に関しては各々で研究して頂くとして、出し方自体は「男声+裏声」もしくは「男性のミックスボイス」の要領で問題ないと思われます。

 出し手が男性(地声がガッツリ男声の人)なら、地声に裏声の成分を多く混ぜつつ、ミックスボイスの要領で調整を行う事でそれっぽい声が出せると思います。出し手が女性(地声が女声寄りの人)なら、ダンディ声の音程を「息遣いの後ろ方向へのベクトルを強める事」に比例して上げていき、男声特有の響きが消えない程度に音程を調整する事でそれっぽい声が出せるのではないでしょうか?この時、欠伸の要領を用いて…もしくは喉の中に卵が入っている状態をイメージしながら、上顎の前歯に声を集めるようにして(ダンディ声をベースとする場合は、下顎のラインを通りながら下顎の前歯に声が集まるイメージで)発声を行うと安定感が増すと思われます。

 ここで注意点として、裏声を混ぜ過ぎないようにしましょう。男声特有の響きは残っていてもいいので、声が裏返り切らない(男声)or地声に戻らない(女声)程度の中音域で模索するようにすると良いと思われます。傍から聞いて「絶対声変わりしてるな」と解るような声でも、子供っぽさが残っていれば合格判定してあげても良いでしょう。


♀女声の延長線上で出せるショタボ

 これを一言で言い表すなら、「音程の低い女声を喋り声にしたもの」もしくは「声変り前の少年の声に似せた響きで出す女声」となるでしょう。

 先ず前者に関して、これは出し手が女性(地声がガッツリ女声の人)なら「地声+男声」もしくは「女声のチェストボイス」に該当すると思います。男声の響きに理解があるようなら、地声をベースとしつつ男声の響きを若干混ぜ合わせるようにして調整すると良いと思います。もしない場合でも、地声の音程のまま後ろ方向に息のベクトルを向ける、背骨のライン上の低い位置で声を響かせるようにすればショタボに移行出来るのではないでしょうか(ショタボに関しては、下顎のラインを意識しつつも、下顎の前歯に声を集めるような息遣いが合っているような気がしています)。対して出し手が男性(地声が男声寄りの人)なら、一度女声を出しつつ、喉の空間を大きく取る事で対応可能でしょう。この時にも、喉に卵が入っている感覚を持っておくと良いと思われます(こちらについては、女声の文章でも紹介しています。簡易的ですが…)。

 続いて後者について、こちらについては男声女声共に地声(男声はダンディ声、女声はアニメ声)を出して頂き、音程は殆ど変えないまま息遣いを調整し、厳密には出来る限り後ろ方向へのベクトルを強くする事で響きが得られる事と思います。女声の地声を出して頂き、その時点で前方向に飛んでいる息を後ろ方向に向けるor欠伸の成分(喉に卵が入っている感覚)を混ぜる事で出せる筈です。後者の方が、前者に比べて男声っぽさが無いショタボになると思われます。

 こちらに関しては、声変り前の少年の声を目標に調整する事をお勧めします。例え「どう聞いても女声じゃん」と言った高い声でも、喋り方が少年の者であれば合格判定をあげて良いでしょう。もし某ジ〇ンプの少年声主人公を連想させるショタボを出したい場合は、チェストボイスやダンディ声要領を用いてアプローチ、調整する必要があると推測します。


 ここで結論なのですが、どのようなショタボであれ、幾つかの要点さえ押さえておけば同様にショタボと呼んで差し支えない発声を行う事が出来るでしょう。

 まとめると

①男声と女声の中間をイメージしつつ、音程や声の響きを調整する(男声寄り、女声寄りどちらもアリ)

②やはり喋り方やイントネーションが命。声の響きも重要だが、それ以上に喋り方やイントネーションに気を配る。

③必要に応じて、地声に男声(ダンディ声)や女声(アニメ声)の響きを混ぜる。

④発声の際は、後ろ側(背骨のライン上)で声を響かせる意識、若しくは欠伸の要素(喉に卵が入っている感覚)を意識し、口のポジションは「お」の形をベースにする。息の流れは何れであっても後ろ側、背骨を意識して後ろ側で響かせる息遣いを軸とする。

※間違えても「前方向に細く鋭く飛ばす」イメージは持たない。息遣いは「後ろ側で太く柔らかく響かせる」息遣いを基軸とする。欠伸の息遣いが近い。


 結局、一番大事なのはイントネーションでしょう。結局どんな声がベースでも、喋り方さえどうにかすればそれっぽくなるのが常なのです。これは男声のナチュボの調整と同様です。こちらは他の人が使うショタボや実際の少年の声を参考に、自分なりに創意工夫をすると良いと思います。

 そして比較してみた感じ、どちらのショタボであっても出し方のベースはあまり変わらないのではないかと思われます。声質を何かしらの手段で男声と女声の中間に持って行き、そこに欠伸の響きを混ぜる事で調整します。この時口や顎の形は「お」を基軸としておき、息の流れは下顎のラインを通って上顎の前歯に声が集まるように調整するのです。後はイントネーションに気を配れば、皆さんも何かしらのショタボが出せると推測します。

 但し滑舌や声の籠り具合に関しては、イントネーションに応じて変化させる位の心持ちで、無理にハッキリとさせる必要は無いかもしれません。最低限聞き取れる位の滑舌でも、却ってリアリティが出る可能性があるのがショタボだと思うので…これはダンディ声とは要領が変わって来るところだと思いますので、各々で研究してみて下さい。と言った具合で、以上の事を参考に各々で調整してみてはいかがでしょうか?

(補足ですが男声の調整に当たり、風邪声と混ぜるのはショタボにするのが良いそうです。今一度ショタボの発声を見直してみましょう)

 


④「欠伸」と「溜息」、序に「息切れ」の活用

 先程まで、男声には「欠伸」ではなく「溜息」を用いろ、と散々口にしてきましたが、ナチュボの調整に関しては「欠伸」の意識も重要となってくるかもしれません(手の平クルッ)。全員がこぞって使うかどうかは不明ですが、試してみるのも一興であると…ような気がしないでもありません。

 また人によっては「息切れ」の方がイメージが掴みやすい人も居るかと思われます。これは人によると思いますので、自分に合った方法で行って頂ければと思います。


〇「欠伸」の活用

 そもそも音程が上がるということは声帯を締める行為と同義で、低音域のように脱力した状態でともいかないのが事実です。男声の高音域が地声以下の場合もあると思いますが、それでもやはりダンディ声の時と比べて多少は力んでしまう事と思います。そこで、この場合では例外的に「欠伸」の意識を持つようにして、鼻腔…或いは口内の空間を広く取りながら軟口蓋で下方向に押さえつける事もお勧めします。先のショタボにも通じますね。

 この時、顕著な欠伸をすると不必要な力が入ってしまいますので、やりすぎは禁物です。ダンディ声の形でほんの少し欠伸の成分を混ぜる程度で考えておいてください。腔内の奥の方、口から喉に向かう際の突き当り、鼻腔がある辺りの空間を欠伸の要領でほんの少しだけ広く取るイメージです。若しくは、口の中に卵(他の物体をイメージしてもOK)を含んだイメージで、口内を広く取るイメージでも良いと思います。この状態でも軟口蓋と舌が下がり、これに比例して喉が開いた状態を作る事が出来ます。

 ここで息の流れも前方向の意識やベクトルが強くなると思いますが、くれぐれも後ろ側の息遣いを軸に、後ろ側、下方向の息の流れを意識或いはキープするようにしましょう(軟口蓋の抑えがあれば息の流れが極端に変わる事は防げると思います)。するとダンディ声の時以上に息遣いが柔らかくなり、軟口蓋付近で吐息の成分を感じられるようになると思います。この状態では軟口蓋が下がっている事から鼻に息をかけやすくなり、顕著に鼻にかける程エッジボイスの成分が強くなる事でしょう。逆に下顎に息を集めるようにすると喉声の成分が強くなり、口内の空間を大きくとればとる程息遣いが柔らかくなっていく事と思います。

 恐らく、この形で普段の喋り声と同様に話そうとすると声が籠ると思いますが、歌声だけならば気にしなくても良いでしょう(何なら歌声はこの形で作っても問題ないと思います)。但しこの欠伸の意識はショタボとも切っては切れない関係にありますので、ナチュボの調整において必要不可欠な要素と言っても過言では無さそうです。


〇「溜息」の活用

 先程まで「溜息」についてはくどい程触れてきましたが、改めてここでもおさらいしておきます。

 大前提として、男声において基本となる息遣いは間違いなく「溜息」であると自負しています。息遣いを変える場合でも、まずは「溜息」を基準として、そこから工夫を加える事をお勧めします。

 何故ここまで溜息を強調するのか。それは溜息の特徴が、男声の習得および発声において痒い所に手が届くような特徴を網羅しているからなのです。

 まず「脱力」。男声では脱力する事により、重力に従って喉を落とす事で音程を下げる事を基軸としています。その上で喉を落とす際に下方向の壁(喉を下げる際に底となる部分、ひっかかりを伴う箇所)を破る、解消する際にも同様に役立つ項目となります。

 続いて「下方向に向かう柔らかくて太い息遣い」。男性諸君もそうですが、男声を出す際には若干ではありますが息の方向が下方向を向きます。これは声の低い人が、その声の低さに引っ張られて無意識に下方向を意識してしまうからです。逆に言えばこの下方向の息遣いこそが男声の原点。特に地声が高い人は逆に自分の声の高さに引っ張られて無意識に上方向を意識してしまう以上、より強く意識したい項目となります。ナチュボと言いう観点においても、イントネーションや喋り方の面において同様に役立つ項目となります。また男声の発声の基本は「後ろ側の柔らかくて太い息遣い」になっています。高音域が如く「前方向に鋭く細く飛ばすイメージ」とは対極になりますので、何度も繰り返すようですがこれを忘れないようにして下さい。

 兎に角ここで伝えたいことは「迷ったら取り合えず溜息に戻れ」と言う事です。男声を出すにあたって溜息を使わないなんて局面は早々無いと思いますが、色々と試行錯誤をする中で、どうしても方向性に困ったり現在位置が分からなくなる場合が出てくると思います。その際の道しるべとして、救済措置として「溜息」を覚えておけば何度でもやり直しが効くでしょう。また試行錯誤の中で、突然「溜息」を意識したら上手くいった、なんてケースもあると思いますので、くれぐれも「溜息」、特に「鼻にかかった音の出る溜息」を念頭に置いてチャレンジしていただければと思います。


〇「息切れ」の活用

 もし「溜息だと上手く行かない」と言う人は、代わりに「息切れ」の意識を持って試してみると良いかもしれません。実は「息切れ」と「溜息」は息の出し方が非常に似ており、しかも息切れの方が気軽にイメージを掴める可能性があります。

 それが先述した「荒い息切れ」になります。過度な運動をした際に出る「ぜー、ゼー」と言った荒い息切れです。この「ゼー、ゼー」の音も風邪声の出し方と同等のものになっています。こちらの方が風邪をひくよりも気軽に試せると思いますので、溜息が合わない人は試してみても良いかもしれません。

 一応、こちらも「音の出る溜息」と同様、男声に必要な要素を多く含んでいます。なのでこちらを基準にしても良いのですが、溜息の時に比べて息が浅くなりがちなのでそこだけは注意しましょう。「息切れ」の際もなるだけ大胆に、お腹から普段以上に多くの息を出すようにすれば代用も効くと思われます。



⑤「表情筋」や「骨格」の活用

 声を出すにあたって意外と盲点になりそうなのが「表情筋(顔周りの筋肉)」の活用です。

 表情を変えるだけで声色が変わるように、声と表情筋には密接な繋がりが存在します。これをナチュボの習得に生かさないのは勿体無さすぎます。

 同時に「口周りの骨」のポジショニングも重要になってきます。男声に関しても形を維持する一番大切な柱は顎周りの骨ですし、これも表情筋と同様意識すればある程度コントロールが可能です。

 今回はこれらを合わせて刮目しつつ、その中でナチュボに役立ちそうなポイントを幾つか紹介していこうと思います。説明があまり抽象的にならないよう、ここではそれぞれ「特定の形」として紹介していこうと思います。


〇「え」の口の形で「お」の発声

 これは先に紹介した「欠伸」を混ぜる事を前提としたポジショニングで、声が籠るのを解消する手立ての一つとなり得ます。どうしても男声に「欠伸」を混ぜようものなら、多少なりとも声が籠る現象が発生します。逆に言えば、この籠りの解消が出来れば、かなり自然な男声に近い発声が出来るようになるとも思っています。

 やり方としては、先ず口角を思い切り吊り上げ(後ろに引き下げるイメージでも良いと思います)、上顎下顎両方の歯を前に突き出すようにします。或いは奥歯を前に向けるイメージでも良いかもしれません。要するに口の形を「え」の形にします。そして下顎の前歯に息を集める、通すイメージで発声を行います。すると欠伸を混ぜた場合でも然程声が籠る事なく発声が可能だと思います。

 そして発声の基本形を「お」にして声を出します。これは「お」の発声の形が最も低音を出すのに向いた形だからです。また脱力した状態で何も考えず声を出すと、大半の場合は「おー」と発生する事となります。これらが男声の特徴を見事に抑えていますので、発声の基本形を「お」とし、口の形を「え」とすることで声の籠りにくい低音の発声が可能となる訳です。

 発生の際には下顎や下顎の奥歯を意識して、下顎の歯の上面を前に向ける、奥歯を前に向けるようにしましょう。この時上顎と下顎の奥歯をなるだけ近づけあまり顎を開かず、何なら下顎を固定するくらいのイメージで。尚且つ活舌を意識してはっきりと喋るようにすると安定感が増すと思います。骨格によって合う人合わない人がいるとは思いますが、ポジショニングの一つとして、参考にしていただければと思います。


〇「い」の口の形で「う」の発声

 これは「欠伸」を混ぜない場合のアプローチ方法として役に立つであろうポジショニングです。ここでは特に「軟口蓋の抑え」と「鼻にかかった溜息」を強く意識した形となっています。 

 まずは一度思い切り「い」の形を作ってみて下さい(歌う際の口を前に突き出す「い」ではなく、喋る時などで用いる口角を後ろに引く方の「い」です)。そこから上顎の前歯を突き出す、或いは下顎を若干後ろに引いて(顕著にやらない事がポイントです)ポジションを作ります。この状態で何も考えすに声を出すと「う」と声が出ると思います。この形を軸として男声の発声を行います。

 この際息遣いはダンディ声とほとんど変えなくて良いですが、上顎や上顎の歯全体を前に突き出したり、上顎の奥歯を意識しつつこれを前方向に向けると、ダンディ声と比べ息の方向が前方向に向く(基本的な方向は下のまま)事が確認出来ると思います。飽くまでも息遣いを直接変えようとはせず、上顎の抑えを用いて、上顎の奥歯を用いて間接的に息の方向が前に向くようにしましょう。そして音程の調整を行う事でそれなりに自然な男声が出せるようになると思います。(くれぐれも前方向の意識を強く持ってください、でないと声が籠ってしまいます)

 因みに下顎は若干引き下げますが、そのまま上顎と下顎の奥歯が近いポジションで固定するくらいのイメージを持ち、全体的に意識はしすぎなくてよいと思います。意識は上顎や上語の奥歯に集中させれば、そもそも下顎があまり動かないとも思いますし…これも先と同様、骨格によって合う人合わない人がいると思います。上の方法と合わせて試してみて下さい。


〇「え」の口の形で「う」の発声

 これはどちらかと言えば「ダンディ声」の基本となるポジショニングです。と言うか、ダンディ声を習得した際、大抵の人が無意識の内にこのポジショニングになっていたと思います。

 改めて確認してみると、口角は後ろに引き下げていますが、どちらかと言えば下方向に軽く引き下げているイメージだと思います。口角を下顎の奥歯に乗せるイメージです。そしてこの形で何も考えずダンディ声を出すと「うー」と出ると思います。これが実は、ダンディ声の最も基本的な発声のポジショニングとなっています。

 そしてこの形で上顎の奥歯を前に向けるイメージで息の方向を前方向に向ければ、ダンディ声が比較的自然に籠らず発声出来ていると思います。しかしこの出し方だと地声と息遣いが違い過ぎる為、どうしても声を作った感が出てしまうのではないかとも推察されます。つまり、このポジショニングではナチュボの発声には向かないという考察が出来るのではないでしょうか。

 しかし中には、このポジショニングのまま少し音程を上げるとナチュボになった、と言う人もいるかもしれません(発見者の条件ではあまり合いませんでした…)。なので一応紹介しておきますが、飽くまでもダンディ声の基本形であり、ナチュボはここからポジショニングを変える事で出せるという可能性は念頭に置いて頂ければと思います。合う人は改めてこのポジショニングも試してみて下さい。



⑥「イントネーション」の調整

 比較的基本的な事柄にはなりますが、やはり男性特有の口調やイントネーションの把握は避けて通れないポイントであると思います。個別に男性の喋り方やイントネーションを確認しておき、女性らしい訛りが入らないように喋り方や喋り口調を調整するようにしましょう(喋り口調は、自然な異性の声を出すにあたって最も肝心と言ってもいい項目です)。

 先にも軽く触れましたが、女声は高い声に引っ張られて無意識化で重心が高くなる傾向にある為、抑揚が多く局所局所で上擦るような訛りが入りますが、男声は逆に低い声に引っ張られて重心が低くなります。それによって全体的に抑揚が少なく平坦な喋り方になる他、語尾に向って声または息が抜けるような喋り方(ガラガラ声では無い、地声を出しながらの溜息をイメージ。フィニッシュに向って地声の音程が下がり、地声から吐息に変遷する様が確認出来ると思います)になるので、それを実際に男性の声を聞くなどしてよくよく確認しておくようにしましょう(モノマネをしてみるのも非常に良いと思います)。

 余談ではありますが、ダンディ声をダンディに出すためにも喋り方の工夫は必要となります。喋り方、皆さんが思っている以上に重要なので決して疎かにしないようにしましょう。

 また極論ではありますが、ナチュボに関しては「これがナチュボだ」と言う明確な定義は存在しません。各個人で「これだ!」と思う声を探し、その中で好みの位置や自分に合った出し方を見つけてあげるようにして下さい。ある程度基準となる出し方が見つかったならば、ここを基準として洗練すればかなり自然な声も出せるようになると思います。そうすればもうあなたも立派な男声マスターです、私から言うことは何もありません。



 最後に余談ではありますが、ダンディ声であってもナチュボであっても、基本的に男声の基本的なポイント「脱力」「鼻にかかった溜息」「仮声帯の振動」等と言った点は大きく変わらないと思います。これらは全て「風邪声」の形が網羅しているポイントではありますが、ナチュボはこれを維持したまま、他に弄れる個所を見つけて調整していく必要があると思われます。上に書かれている事柄以外にも着眼点はあると思いますが、くれぐれも男声の要点には手を出さず、その周りの部分で試行錯誤してみて下さい。要点の部分を弄ってしまうとそもそもの男声が崩れてしまうので、より遠回りになってしまうと思います。

 正直人によって声の質や骨格、筋肉の付き方やバランスなど差異があるので、全員に合ったナチュボの説明は出来ないと思っています。こればかりは自分の身体と相談してみて、こまめに録音や発声練習なども重ねながら、地道に自分だけのナチュボを見つけて頂きたい次第です。

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