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第2話 異世界?

 目が覚めると……知らない天井だ。

 おっ、これはラノベで良くある展開の……なのか?


 なんだ?

 俺を覗き込む美少女……、

 いや、西洋風の美女……だ。


 (誰だ……?)


 隣には、美女と同年代の男性だ。

 その男性もなんとなく西洋風。

 (うっ、汗臭いなこの男)

 ワキガ特有の匂いでは無いけど、汗臭い。

 慣れない微笑みだ。

 (おい、その微笑み怪しいぞ)


 でも不思議と嫌悪感は無い。

 何故だ?

 この男、見てくれは俗に言うイケメン面。

 俺が苦手とする分類であり苦手生物のひとつだが……。

 俺がもっとも苦手分野であるパリピ的なのが感じられない。

 俺の「近付いたらダメだ」に反応がないのだ。


「……………………」


「…………………………」


 女性が俺を見て、愛らしい表情で微笑んでいる。

 口が動いてるから、何か言ってるのは確認出来る。

 それに続いて男性もだ。


 でも何を言ってるのか分からない。

 (日本語話せよ)


 それからもう一人目の声がする。


「ばびゅばびゅ、はぶーあ」


 気付いたら知らない天井。

 それに見た事のない男女。

 だからあなたたちは誰ですか? と聞こうとした。


 そしたら、奇声に近い甲高い声しか出なかった。

 どれほど引きこもりだったとは言え、コンビニバイトという接客業をやっているのだから、「いらっしゃいませえ、こんにちはー」くらいは言えていた。


 だから話せないほどのコミュ障って訳ではない。


 それなのに、日本語が話せないのだ。


 (おいおい)


 待てよ。なんとなく断片的ではあるが、記憶は残ってるぞ。確かあれだ。

 俺がバイト中に……

 強盗が来て……うーん……、


 そうだ。刺されたんじゃなかったか俺?

 確か、腹を刺された。

 って事は、そのショックで言葉すらも発せないのか?


 (おいおい)


 俺を手術した医者め。

 ヤブ医者だったのか?

 しっかり直せよな。

 

 ……うっ――。


 (何しやがる)


 女性が俺の身体を持ち上げた。

 おいおい。

 相当力持ちだぞ。

 俺の体重知ってんのか?

 130キロだぞ。それに絶賛糖尿病だよ。

 それを女性一人で持ち上げるなんて――。


 って、おい!


 何する気だ?


 ……うっ。


 この女性、美女なのに男性と同じくらい汗臭いぞ。

 (シャワーくらい入っとけよ)

 せっかくの美人が台無しだ。


 待て待て待て。


 ほらっ。それをやっちゃあ流石にダメだろ。

 こう、なんて言うか、社会の倫理性というか、理性がというか……


「……ウプっ」


 これはどんな状況なんだよ。

 この女性、こんな趣味があるのか?

 俺としてはラッキーだが……。


 何故を俺の顔を胸に押し付ける。

 (やめろ、やめろ!息が……)


 乳首を吸わせようとするな!

 俺にはこんな趣味は…………

 きっと無いはずだ。

 (えへへへへ)


 だが、悪く無い。

 おう、柔らかいぞ。

 それに温かい。程よい弾力が良いねえ。

 (うん!そこの美女グッジョブっ!)


「……………………」

「……………………」


 また何か言ってるな。

 この二人。何話してるんだ?

 困った表情しながら。


 おいおい。やめやめ!

 胸は嬉しいが、この淡白な白い液体……


 ああ? 白い液体だぁ?

 これはまさにあれじゃないのか?

 

 ――おっぱいってやつだな。


 そこから一ヶ月の月日が経った。


 俺は赤ん坊だった。

 首を慎重に押さえながら抱き抱えられて、身体が視界に入ってやっとその時に気付いた。


 これはあれだ。

 赤ん坊に生まれ変わってしまったらしい。

 良くありがちなラノベ展開の転生ものだ。


 気付いたらココドコ?あなた誰ですか?

 を、この身で体験してるって事だ。

 しかも、死んだはずの俺の記憶をそのままにして。

 前世の記憶をそのまま引き継いで、強くてニューゲームみたいな感じだ。

 強くなってたら良いんだが……。

 


 ただ、この状況を少しずつ整理したいが、そういうわけにはいかないらしいな。

 この家を徘徊しながら情報収集……とはいかない。

 俺の身体は生後一ヶ月の赤ん坊。

 だから、今できるのは「ばぶあーばぶばぶ(腹減ったー)」だけ。


 俺の身体は、まだハイハイは出来ないらしい。

 それが普通だと思う。


 転生ものの『通じる言葉と読める言葉』の適用はまだされていないらしい。


 ――こうして転生してから、六ヶ月経とうとしていた。

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