人間そっくり
宜しければ第一部分より御読み頂けましたら幸いです!
「こちらにお座り下さいね。少々お待ちになって下さいませ」 看護師の言い回しは患者に向けられるには相応しく、いかにも優しく丁寧であった。 が、それが決して優しさからくるものではないのをわたしは感じてならなかった。 「う~い」 しかし、哀しいことにわたしはそんなふうに唸り声を上げて抵抗してみせるより他にする事がなかったのであった。 「お待たせしました」 さして待たないうちに、そんな声が聴こえた。さっきとは別の看護師。看護師長というのか、婦長というのか、たにかく普段から看護師たちのリーダー的な言動をする女性看護師の声であった。 「はぁ」 わたしの無様に間延びした声も、ついでに響いた。やはり声というよりも、唸りと言った方が近いものだった。 ナースステーションの隅の一角であった。 わたしが座った、座らされたのは、よくあるアルミ製の無機質で洒落っ気のまるでないラウンド・スツールであった。 「いやぁ、いやよ。お酒臭いわ。真島さん」 看護師長が、大袈裟に鼻を二本指で摘んで見せる仕草をした。 ━━すっかり、バレている。 わたしは覚悟を決めなくてはならなかった。
御読み頂きまして、誠に有難う御座いました!