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うさぎとかめ連続対戦編

作者: はやまなつお

とんがって駆け回っていろんな動物にかけっこを

申し込んで勝ち、「俺は世界一速い、偉いだろう!」と

得意になっているうさぎがいました。


「あいつをどうにかへこませる手段は無いだろうか?」

動物たちは相談した。

そしてある「お方」にそのことを頼んだ。



ある日、その問題のうさぎが、亀を見かけて馬鹿にした。


うさぎ「そんなにゆっくり移動して君はのんびりしてるねえ」

かめ「私と勝負したらあなたは負けますよ」

うさぎ「そんなことあるもんか」

かめ「じゃあ勝負しようか」


二人は道の先、2キロほど先の木をゴールとしてスタートしました。

得意のスタートダッシュでうさぎは飛び出しました。

かめは、のろのろとゆっくり進んでいます。


うさぎ「はっはっはっ、遅い、遅すぎる!君が1歩行く間に僕は10歩は進める!

勝負は見えたね!」


たちまちうさぎはリードを広げて駆け去っていきました。

それでも亀はゆっくりマイペースでのろのろ進んでいきます。


10分後にうさぎはゴールしました。そして。

1時間待っても亀はやってきません。

「遅いにも程がある!」

寝そべって待っていたうさぎはイライラして立ち上がりました。


道を駆け戻ると、かめは行程の1/10も進んでいませんでした。


うさぎ「こっちはとっくにゴールした。じゃ俺の勝ちってことで」


かめ「まだだよ。速さ勝負とは言っていない。

その距離を移動できるかどうかだ。まだ途中だ」


うさぎ「ふざけるな!」

思わずうさぎはかめを突き飛ばしました。


かめ「選手妨害。君はルール違反で失格。ぼくの勝ちだ」


うさぎ「そんな屁理屈があるか!卑怯者!」


かめ「卑怯じゃないさ。速さ勝負で私に挑もうっていう君の方が卑怯だ。

でもまあいいさ。仕切り直しで、もう1回勝負しよう。

先にゴールした方が勝ちってルールでいいよ」


うさぎ「かけっこなんだからそれがあたりまえだ!」




うさぎとかめ第2話


かめ「今度は、あの木をゴールにしよう。いいかい?」

うさぎ「あの、大きい目立った木だな?」

かめ「そう、あの木の幹に先にタッチした方が勝ちってことで」

うさぎ「よし、はっきりしたルールだ。1キロメートルぐらいの距離か」

かめ「じゃあ」

うさぎ「スタート!」


今度もうさぎが快調に飛ばしていきます。

ちら、と後ろを見るとかめはゆっくりノロノロ。


うさぎ「あいつめ、今度は言いがかりは付けさせないぞ」


油断せず進んで問題の木まで来ました。

「何だ、あっさりこれたな。罠でもあるかと警戒したが。

ギブアップしてたってことか」


幹にタッチしようと近寄ると。

「痛い!」大きな蜂に刺されました。


木の枝には巨大な蜂の巣があり、たくさんの蜂が出てきました。

「待て、別に巣を荒らす気は無い、俺はクマじゃない!」

弁解など通じず、蜂の群れに追われてうさぎは逃げました。


やがてゆっくり亀がやってきました。

蜂が来ると、手足を引っ込めてじっとしています。

離れると、ゆっくり進みます。

そして幹にタッチしました。


かめ「私の勝ちだね」

うさぎ「ずるい!蜂の巣があることを知ってたんだろう!」

かめ「知っていたよ。ずるくはないよ。知恵の勝負だ。

君は何か対策をすべきだった」


うさぎ「もう一勝負だ!」

かめ「まあいいけど」



うさぎとかめ第3話


小高い丘。

かめ「今度は海辺のあの木だ。先にタッチしたほうが勝ち」

うさぎ「距離は1キロ程度。いいだろう」

かめ「では」

うさぎ「スタート!」


うさぎは下り坂を駆け下りていきます。

やはり気になって後ろを振り返ると、かめはゆっくりノロノロ。

「あいつめ、今度こそ俺が勝つ!」


海辺にやってくると問題の木は海に半分沈んでいます。

「満ち潮か!しかし俺は泳げる!犬かきだが!」


うさぎは海に飛び込んで木に近づきます。

すると。三角の背びれ。

サメが大口あげて襲ってきました。

「うわー!」必死で逃げて何とか陸に戻りました。


やがて亀が時間をかけて海辺にやってきました。

海に入り、海底をゆっくり進み、サメが近づくと

手足を引っ込めて石のふりをします。

そしてすっかり海に沈んだ木にタッチしました。


かめ「私の勝ちだね」

うさぎ「・・・条件によっては君が勝つのは認めるよ。

でもまあ、速さ勝負じゃ俺だけど」

かめ「速さ勝負でも私が勝つけど」


うさぎ「・・・ジョークを言ってるのかい?

じゃあたとえばここから向こうの木・・・距離300メートル、

ここからスタートであの木の幹にタッチ、そのルールでいいかい?」

かめ「いいよ」


うさぎ「蜂の巣はない。海もない。こっちが指定したから罠をかける暇はない。

平地だ。この条件ならば!今度こそっ!勝つ!」



うさぎとかめ第4話


かめ「じゃあ」

うさぎ「スタート!」


うさぎは今度こそ油断せず全速力。

後ろを振り返らず目標の木だけ見ていました。


距離を詰めていき、木にタッチしようと手を伸ばして。

今度こそ勝ちを確信しました。しかし。


急な突風。向かい風です。

うさぎは飛ばされないように屈んで足元の草をつかみました。


「くっ!これはいったいどうなってるんだ?」

突風は、やみません。

無理して進もうとするといっそう風が強くなり、

伏せるしかできない状態になります。


そのうちにノロノロと、かめがやってきました。

地面に体を付けるようにじりじり進んでうさぎの

屈んでいる横を通過しました。

そして木の幹にタッチしました。


うさぎ「どういうことだ?君は魔術が使えるのか?」


かめ「まさか。違うよ。君は多くの動物に、自分が1点、

すぐれたことがあるから一番偉いって自慢したろう。

そのおごり高ぶった態度がみんなの怒りを買ったんだ。

みんなは神様にどうにかしてほしい、と頼んだ。


私が目の前にいたら君はきっと馬鹿にする、君の得意なかけっこで

勝負して、一番遅い私に負かされてぎゃふんといわせてやろうってことさ。

神様の命令で蜂、サメ、海の精霊が動いた。そして今は風の精霊」


風はますます激しくなり、竜巻となってうさぎを空に舞い上げました。


うさぎ「うーっ詐欺だー!」

かめ「今更自己紹介しなくても」

うさぎ「してねーよ!」


嫌われうさぎはそのまま竜巻といっしょに上昇、

空の彼方に消えていってしまいました。



[ 終劇 ]

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 ウサギ残念(^_^*)
2020/09/30 22:51 退会済み
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