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機械と魔法と戦闘と!~打倒大国~  作者: バリカン帝国
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訓練施設の死闘 その1

「頭の中で氷のイメージをするんだ。氷じゃなくても、冷たければなんでもいい」


「う、わかった、やってみるよ」


 割と軽い気持ちでタルミナの訓練の監督を始めたが、タルミナは氷魔法の基礎すら出来ていなかった。また、フレア自身も教えることには慣れていないので、あまり好調とは言えない様子だ。


「他の属性の魔法と同じ様にやるんだ。他はできるんだろ?」


「うん、できるんだけどさ、何故か氷だけ、出来ないの」


 そんなことあるのだろうか。あくまで擬似魔法は誰にでも使えるように、をコンセプトに作られた魔法だ。今も改良が進んでいるらしい。何も訓練していない一般人が使えないのは当たり前だが、様々な訓練をこなしている候補生が出来ないのはおかしな話だ。

 ………身近に例外がいる手前、あんまりそういうことは言えないのだが。


「イメージはできるんだよ。でも、そこから先で詰まっちゃう」


「やり方は知ってるんだろ?どこが出来ないのか教えてくれ」


 擬似魔法は3つのステップで構成されている。イメージ、具現化、そして、放つ動作だ。

 彼女が出来ていないのは2つ目の具現化だ。


「氷の冷たいイメージを具現化しようとすると、体が怖がって手を引っ込めちゃうの」


「炎とか雷とかは平気なのにか?」


「平気なのにね」


 イメージが強すぎて具現化出来ないのは、訓練中でよくぶち当たる壁だ。


「なら、もう少し小さい氷をイメージしてみたらどうだ?これなら出来そうだろう」


「わかった、やってみる!」


 我ながら良いアドバイスが出来たようだ。分からない所を煮詰めて次のステップに進む。これこそ、当然というものだ。それに、彼女はストライクと違って他の魔法は使える。恐らく、もう詰むことは無いだろう。


「あ、できたできた!!」


「おお!!見せてみろ!」


 期待を膨らませながら彼女の手の中を覗き込んでみると―――


「………小さすぎないか」


「………だよね」


 彼女が作り出していたのは、まるで飲食店で出される飲み物に入っているようなサイズの氷だった。これでは、攻撃にはなっていない。

 ここまで氷を小さくしないと扱えない理由でもあるのだろうか。


「氷が、怖いのか」


「……え?」


「怖いなら、無理に使う必要はないんだぞ。まあ、試験前に言うことではないんだけどさ」


「…………」


 …………沈黙。何かまずいことでも言ってしまったのか。気まずい空気に殴られてしまいそうになったので、必要以上に大声を出して、


「じゃあ、俺が火魔法でサポートしてやる!これなら、大丈夫だろ?」


「え、でもまたフライエッジの群れが…」


「ここは洞窟の中だ。奴らは来れない、安心しろ」


「わかった、ありがとう!」


 と、言うわけで彼女の周りを火で暖めながらタルミナの氷魔法訓練がスタートした。魔法の基本3ステップを繰り返す実に単調な訓練だ。教える経験があまりないフレアにはこの程度の訓練が限界だった。

 だが―――


「さっきよりも大きくなったよ!」


「よし!その調子だ!頑張れ!!」


 効果はてきめんだった。これなら、試験前には何とかなるかもしれない。俺も、自分の訓練をしようかな などと思っていると―――


「ねえ、今 洞窟の奥から変な音、しなかった?」


「何?」


 耳を澄ますと、奥から重い音が迫ってきているようだった。


「一体、何だ?こんな風に重い音を出せるほど大きなモンスターはこの訓練施設には居ないはずだ」


「ねえ、なんかヤバそうだよ。外に逃げた方がいいんじゃ……」


 だが、外に出たところで自分らの居場所は分からないし、またフライエッジに襲われておしまいだ。


「この音の正体を探ってからでも遅くないだろう。それでいいか?」


「わかった、けど―――」


 タルミナがフレアの顔――のさらに上を見上げ、顔を強ばらせながら震えた声で言う。


「―――もう正体分かっちゃってるよ……!!」


 彼女の言葉から危険を感じ、振り返ると―――


 そこには、見たことも無い大きなトカゲのようなモンスターがフレア達を見下ろしていた。



*************************


「何だ……!こいつ……!!」


 初めて見る大きさだ。この比較的大きな洞窟を、狭いと感じさせるような巨大な体で唸り声をあげる生物を前に、これこそモンスターだと感じた。


「すまん、とっとと逃げれば良かった」


「いや、そんなこと言っててもしょうがないよ!!」


と言って、タルミナは腰から魔装銃を取り出し、


「出会っちゃったんだ!!戦うよ、フレア!!!」


 モンスターの眉間目掛けて3発、目にも止まらぬ速さで撃ち抜いた。


だが、怯む様子は全く無い。まるで品定めをするように2人をじっくりと見たあと、


「おお!?俺に向かってくるのかっ!!!」


 フレアに向かってその大きな爪を振り下ろした。


「―――っ!」


 身を捻って辛うじて交わしたが、脇腹から少し血が垂れているのを感じた。


「掠ったか、なんてスピードとリーチだ!!」


 対抗するようにフレアも天井すれすれまで高く跳び、怪物の目玉を目掛けて両手剣を振り下ろす。今まで、数多のモンスターを一刀のもとに沈めてきた必殺の一撃だ。これでトドメとは言わないが、


「多少のダメージには―――!!」


 ―――が、呆気なく弾かれてしまった。奴に与えたダメージは、鱗数枚に傷が少し付いただけ。文字通りかすり傷だ。


「まずい、追撃を喰らうッ!!」


「コッチだよ、バケモノ!!」


 すんでのところで、タルミナの魔装銃のカバーが入り、フレアは何とか命拾いをした。


「すまん、助かった!!」


「それはお互い様!!そういうの今はナシナシ!!」


 が、タルミナの攻撃も奴の鱗で全て防がれてしまっているようだった。


「これじゃあ埒が明かない……。何とかして弱点を探さなくては……っ!!」


 だが、相手は全く初めて見るモンスター。長いことこの訓練施設で戦ってきたが、で会ったこともないし、噂等を聞いたこともなかった。このことが、フレアの頭を混乱させていた。


「クソっ、こいつどこから湧いて出てきやがったん

だ!!」


 戦いは一方的、フレア達は防戦一方となっていた。これでは、先に体力がなくなって死ぬのはどちらか明白だった。試験前だと言うのに―――いや、試験にすらたどり着けないかもしれない。


「そうだ、魔法……!!」


 擬似魔法も、魔力を消費して使う。いくら威力が低いとはいえ、人間が使える技の中では最大級の威力だ。だが、同時に人間がもつ魔力も決して多くない。


「チャンスは、何回あるかな……!!」


 可能な限り、少ない回数で仕留めなければ。


「タルミナ、お前は炎魔法を使えッ!俺は氷魔法で攻撃する!!早く弱点を探るんだ!!」


「分かった!せーのでいくよっ!」


そして、息を合わせて―――


「せーのっ!『(フレイム)』!!!」「『(ブリザード)』!!!」


 巨大トカゲ怪物の体を、爆炎と氷塊が覆う。普通のモンスターなら原型すら保てないこの大技を2つ同時に喰らってなお―――


「ええっ!?私に向かって来るの~っ!?!?」


「あ、おい!そっちは入口とは逆の方向だぞっ!!」


 が、フレアの叫びも虚しく、タルミナとモンスターは洞窟の奥へと走っていってしまった。


「まずい、洞窟の構造は俺も知らない……!それに、1体1では俺たちに勝ち目は無いぞッ……!!」


 現在、深夜0時34分。―――訓練施設使用可能まで、残り7時間26分。助けが来る可能性、なし。

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