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残響
『残響』
祖父は幼い時から足が悪かったらしい
僕が小学生の時には松葉杖を使えていたけど
そのうちずっと車椅子になって
寝たきりになった
お見舞いに行ったら
介護用のベッドに寝ていた
変わり果てた姿に驚いた
少し喋って最後に言われた
温かい人間になれよ
当たり前のことだと思ったけど
分かったと言っておいた
祖父はその後だんだんと
喋れなくなっていった
その見舞いに行って一年ほどして
祖父は亡くなった
火葬場へ移動していると
忘れかけていたあの言葉が聞こえた
温かい人間になれよ
その瞬間
その言葉の温かさに
涙が止まらなくなった
最後に伝えようとしたのか
ずっと響いている
繰り返し繰り返し
頭に染みつかせるように
その声が
天まで届けと言わんばかりに
温かい人間になれよ




