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僕の仲間には生きてる人がいません  作者: らんこ
一章 旅のはじまり
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街の温もり

「それで、君の名前は?」


「東條です、東條 龍といいます」


「トージョー?トージョー リュー?変わった名前だな」


「東洋人なので」


「トーヨージン??」


 この世界には東洋がないのか、はたまた時代的に交易がないのか、僕のような人種は珍しいようだった


「ずっと東の海の向こうから来たんです、僕は旅をしていてサニアさんとたまたま出会いました」


「ふむ、事情は聞いている。で!サニアとはどんな関係なんだね?!」


 ゾンビとネクロマンサーです、というと身も蓋もないんだろうな。それにあの子、サニアさんって名前だったんだな。あとでちゃんと自己紹介しなきゃ。


「えぇーと……」


「パパ!リューくん困ってるよ、お友達で旅仲間!そうだよね、リューくん」


「そうそう、お友達で旅仲間」


「ふぅーーーん……腑に落ちんがなぁ……サニアは可愛いからなぁ……邪な目でみたら許さんぞ」


「パパ!」


「そういうのは野暮ですよあなた、何事もこれからなんですからね、ねぇサニアちゃん」


「ママまで!もう!」


 仲のいい家族だなぁ……彼女を旅に連れ出していいものだろうか、いつまでもこのままで居させてあげられたらいいのに。

 それにはこの力の制御を学ぶ必要があった、不安定なままではサニアさんもご両親も安心出来ないだろう


「まあ、旅にでることには反対せんよ。サニア自身が決めたことだし、もう成人したことだ見聞を広げてくるのも悪くないことだろう。だかなリューよ、必ず娘を連れて帰ってこい、無事な姿でな。灰になっていたらお前を許さんぞ」


「それは絶対にです、今はまだ未熟者だけど絶対に成し遂げてみせます。そしてまた家族皆で……」


「ああ……そうだな……また家族みんなで」


「ところでリュウさん、宿は大丈夫ですか?もしよかったらうちに泊まっていってくださいね」


「今日は門のまえの仕立屋さんの御厚意で一泊させてもらえることになってます。それから仕事も紹介してもらえるらしくて。」


「まあ、そうだったんですか。明日からはどうされます?」


「そうですね、明日からお邪魔させて頂ければ大変助かります」


「そんなに恐縮しなくてもいいんですよ、私のことはママって呼んでいいんですからね」


「おいおいお前……気が早いんじゃないかそれは」


「何を言っているんですかあなた、男の子も欲しいって言ってたのはあなたですよ?」


「そ、それはその、こういうことじゃなくてだね!」


 優しいお母さんだな、家族か……僕もきちんと学校に通って普通にしていたら両親もこんな風に接してくれただろうか


「ところでリュウよ、歳はいくつだ」


「16です」


「サニアよりひとつ上か、サニアのほうが大人っぽく見えるな」


「サニアちゃんは発育がいいものね、私に似たのかしらね?」


「ちょちょ!ママ!そういう話じゃないでしょ!リューくんもこっちみない!!エッチぃよ!!」


 いやぁ、胸を見ようとしたのは事実だけどやっぱりお腹にあいた穴が目立って集中できないなぁ……もったいないことだ……うん、もったいない


「そ、それにしてもリューくんやっぱり年上だったんだね。なんとなくそんな気がしてたから」


「僕はずっと同い年だと思ってたよ、なんだか話してて自然な感じがしてたからなんとなく」


「そっか、自然、ね。ふーーん……」


「あらあら嬉しそうね、サニアちゃん」


「ママ、そうやって私のことからかってると後で後悔するよ……」


「あら怖いわ、リュウさん助けてくださいな」


「娘だけでなく妻まで!」


「ママもパパもいい加減にしなさいってば!内臓みせるよ!!」


「やめろ!それはパパにだけ効く!」



 親子漫才もほどほどに僕は仕立屋に向かうことにした。距離もそれほど離れていないし大丈夫だろう。


「よぉ、来たね坊や」


「お世話になります!それで仕事のほうは」


「今日は疲れてんだろ、ゆっくり休みな。飯の支度も済んでるから二階にいって食ってな」


「でもそれじゃあ」


「いいから!ガキんちょは目上のいうこと聞くもんさ、冷めちまうからさっさと食ってきなよ」


 荒っぽい優しさが嬉しかった、遠慮なく頂くことにして僕は二階へと上がっていく。

 食卓のうえには大きなお鍋にシチューが入っていた、それにこれは黒パンかな独特な香りがする。


 食べ物を目の前にした途端、胃腸が捻れんばかりに唸りをあげた。遠慮なんかしていられない、早速頂こう。



「で、全部食っちまったのかい」


「はぁ、そのすみません。うまかったもんでつい」


「はっはっ!呆れたねぇ、まあうちの息子もあんたぐらいの歳には似たようなもんだったからね。懐かしいもんさ。」


「息子さんがいらっしゃるんですか」


「ああ、まあ、ね。戦争に駆り出されてそのまま行方知れずさ。あんたぐらいの歳の頃のことだよ」


「そう……ですか。すみませんでした辛い話を」


「ガキんちょが何一丁前に気を遣ってんだい。いいんだよそんなことは。それにあたしゃねまだ諦めてなんかいないんだよ。あいつは帰ってくるさ……必ずね」


「なら僕も一緒に信じます、帰ってくるって。」


「そうかい、そうかい……ありがたいね。帰ってきたら友達になってやっておくれな。引っ込み思案で大人しい子だったからね、友達もそう多くなかったもんだからあたしゃ心配でね……今はどこでどうしているやら」


 おばさんは遠い目をして息子さんに思いを馳せているようだった


「湿っぽい話はおしまいだ、そろそろ寝なよ。息子の部屋があるから遠慮なく使いな!」


 息子さんの部屋には縫いかけの服や防具の部品のようなものが所狭しと置かれていた。そうか、彼はこの仕事を継ぎたかったのか。

 戦争とは残酷なものだと思った、僕の世界じゃ歴史上の出来事でしかないものだったけど、ここではまだ日常に潜んでいるんだと痛感した。


 彼の想いや夢を感じながら

 僕は眠りについた



 翌日目覚めると、おばさんは朝ご飯を用意してくれていた。パンと野菜とベーコンのスープだった、お腹に優しい感じで幸せだ。


「仕事の話だけどね、隣の鍛冶屋の下働きをやってた小僧がおたふく風邪で寝込んじまって手が足りないそうだ。きつい仕事だと思うけど割りはいい。やってみるかい?」


「肉体労働には自信はないけど、頑張ってみます。代金も払いたいし、旅支度には資金が必要なんで」


「そうかい、旅にでるつもりなんだね。わかったよ、先方には話は通しておくから飯食ったらいってきな」


 そういっておばさんは出掛けていった、僕も手早く食事を済ませて身支度をしよう


「お前さんがミーシャさんが言ってた坊主か」


 ミーシャさん??おばさんの名前だろうか。ずいぶん可愛い名前だな、あとで呼んでみよう


「言った通り珍しい面構えだ、このあたりのもんじゃねぇな坊主」


「東の海のむこうからきました。龍っていいます、よろしくお願いします!」


「おうおう、元気のいいこった。よろしく承ったぜ。とはいえ素人に頼める仕事はそう多くねぇうえにつまらん力仕事ばっかりよ。やれるか坊主」


「力は正直自信がないです、でも頑張ります」


「よっしゃよっしゃ、よく言ったそれじゃあ先ずは薪割りだ」


「はい!」



 疲れた、実に疲れた。膝が笑っているようだ、ついでに腕も水平以上にあげられない。僕はあまりにも軟弱だった、それでも頑張らないと!ひとまずはローブと宿代を払わないといけない、日払いで本当に助かった。


「ミーシャさん!」


「うお!なんだい、あんたかい。やめとくれよ名前で呼ばれると恥ずかしいったらないよ」


「僕ちゃんと頑張ってきましたよ。ほら!お代ちゃんと払えます!」


 今日の報酬は銀貨2枚と銅貨3枚だった、この調子で二週間ほど働けば旅支度も問題なく整いそうだ


「そうかい、偉かったな坊や。で、今日の宿はどうするんだい?」


「今日は前に話した子の家に泊まらせてもらえることになってます」


「そうかい、そうかい。また困ったらいつでもきな。それと旅支度はうちの店で頼むよ。サービスするからさ」


「ありがとう、ミーシャおばさん」


 おばさんはニッコリ微笑んで僕を送り出してくれた



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