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お泊まり会

 最近クーちゃんの機嫌がいい、さっきも『大好きよ』と言って頬にキスを貰ったばかりだ。こうも毎日嬉しそうだと、こちらもつられて気分が良くなってくる。


 天使のようなクーちゃんに癒やされつつ、私は先日のキルケーちゃんの一件で彼女を警戒中だ。あの子はカーミラさんと同じく倫理観が少しズレている。気をつけないとリューくんの貞操が危ない……


 特に今日はお泊まり会ということもあり私の警戒水準は最高のものになっている。それに何だか胸騒ぎがして落ち着かない、リューくんが遠くに行ってしまうような……そんな焦燥感だった。きっとリューくんはクーちゃんのことが好きなんだろうという不安がどうしても拭いきれずにいる。

 クーちゃんはもう好意を隠すようなことはしていない、常に真っ直ぐにリューくんや私を見てくれている。それなのに私はまだどこかで女のプライドにしがみついているのか、なかなか素直になれないでいた。

 同じ人として正面から向き合わず、独りで恋愛をしているつもりになっているだけなんだ。これじゃ私が沙樹だったころと何も変わらない……

 そんな私に比べてクーちゃんは何て素敵なんだろう、あんなに晴れやかな笑顔で毎日幸せそうな美しい彼女を好きにならない人なんて居るはずもない。恋敵たる私だって彼女のことが大好きなのだから。



 このままじゃいけない、そう思い立ち私は今夜こそちゃんとリューくんと向き合って気持ちを伝えよう。サニアとしてきちんとリューくんに好きだと言うんだ……結果はかわらないのかもしれない。でも、言わないまま腐っていくよりはずっと価値のあることだと思う。私の場合これが比喩表現に止まらないのだから、せめて想いや心は誰よりも綺麗でありたい。そして、その気持ちを必ずリューくんにあげるんだ。


 私達は朝早くから地下の転移穴を通って、キルケーちゃんのお家に向かった。それからお昼は皆で釣りに出掛けることにした、夕食の魚を穫るためだ。


 リューくんは張り切っていたけど結局一匹も釣れず仕舞いで落ち込んでいた、こういうところがリューくんらしくて微笑ましく思う。

 アウトドアに疎そうなクーちゃんは予想に反して好調で釣果はかなりのものになった、やはり普段幸せそうなだけあって運気も味方しているのだろう。私はいつも通り何をやっても程々で特に目立つこともない、私の人生を象徴しているようで嫌だな……。


 それから皆で台所に立ち思い思いに料理をした、リューくんは懲りずにお刺身を作っているけど、お醤油がないことは言わないほうがいいのかな……

 クーちゃんは魚のお鍋にするらしい、白身魚の切り身が沢山入っていて美味しそうだ……クーちゃんも食べられたらいいのに。また私の体、貸してあげなきゃ。

 キルケーちゃんはそんな私達を見ながらはしゃいでいるだけで、特に何かをするわけではなかった。きっと一人暮らしが寂しくて、皆が来たことで嬉しくて浮かれているんだろう。


 いつものように楽しい夕食の席、お醤油がないことに気付いて落ち込むリューくんをクーちゃんが一生懸命励ましていた。

 そうして微笑み合うリューくんとクーちゃんの姿を見て、もう私が何をしてももう手遅れなんじゃないかという気持ちになる。

 悪い方に考えちゃ駄目だ……結果が問題なんじゃない、私が誠実に自分の気持ちを伝えることが大切なんだ、クーちゃんみたいに。私だってちゃんと向き合うんだ。


 夕食が済んでリューくんと話そうと思い辺りを探したが姿が見当たらない。気配は……外の方からだった。あまり使われている様子のない立派な玄関から外にでると、リューくんとキルケーちゃんが遠くで何か話しているのが見えた。何か……すごく嫌な予感がする、急いで声を掛けなきゃ


 そう思って駆け出した矢先。リューくんが落ちるように、その場から消え去った。落ちていく場所などない平地なのに一体……まさか仮住まいのほうにあった転移穴と同じ……


「キルケーちゃん!!あなた何をしたの?!」


「何って……僕はリュウくんのお願いを叶えてあげただけだよ?」


 ニヤリと微笑む彼女はどこか無機質で、どうしても分かり合えない相手なんじゃないか、そんな気がした。強大な力を持った分かり合えることのない相手がこんなにも恐ろしいものなのかと、私はキルケーちゃんを前にして痛切に感じている。


 とにかくリューくんの行き先を聞き出さなくてはいけない。私は勇気を振り絞ってキルケーちゃんに詰め寄り、これまでの経緯を問い詰めた。


 リューくんは私が助ける、そしてちゃんと伝えるんだ……私の想いを

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