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僕の仲間には生きてる人がいません  作者: らんこ
一章 旅のはじまり
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不意な旅立ち

「おーーい おいってば」


 ああ……?なに?誰?え?


「おいってば!!このっ!!」


 ゴスッっという鈍い音が響いた後から重い痛みが追いかけてくる


「へ??」


 我ながら間抜けな返事をしたかなと思うが頭と体がちぐはぐになったような不思議な感覚というか、泥沼でもがいているようなもどかしさで上手く言葉がでてこない。


「話が進まないんだけど……しっかりしてよもう!!」


「ああ……えーとごめんなさい……うーん……?」


 はぁ……っと深いため息が聞こえる、困っているようだけれどそれはお互い様だった


「もう埒があかないから簡潔に説明させてもらうね?君、死んじゃったの。そしてここはあの世っていうわけ」


「はぇ?」


 意味がわからない、そもそも僕って誰だっけ……視界も頭も霞がかかったようにぼやけてしまって何も考えられない。


「で、あたしは君の国でいう閻魔様的なお仕事をしてるの。とりあえず神様ってことでよろしくね」


「えーと……はいよろしくお願いします」


「死んじゃったときのショックでまだ覚醒してないのかな?治してあげるから動かないでね」


 なんだか温かなものが頬を包むと同時に様々な感覚がざわざわと目覚めてくるのを感じた。


「どう?やっとお目覚め?」


 視界がもどって真っ先に見たものは、僕に微笑みかける女の子だった。少し年上に見えるけど随分と可愛らしい閻魔様だなぁ……


「え?あ、可愛いだなんて……えーとその……ありがと……」


「んんんんんん?!」


「あ、ここって現世じゃないから声とか音とかもなくてその……考えたこととかだだもれだから……」


 よからぬ妄想をしなくてよかった……って現世じゃないということはやっぱりその……僕って


「うん、死んじゃったね」


「ええ……ええええええええええ…………あ、ちなみに何で……?あ!トラック!!トラックに撥ねられたとか!?」


「直前の記憶、思い出せる?」


 たしか自分の部屋で椅子に座っていろいろ妄想しながら……


「うん、そのときに背伸びしたらそのままひっくり返ってゴチーンって、ね」


「ええ……」


 せめて転生フラグでもと思ったが殊の外まぬけな死にざまで我ながら開いた口が塞がらない


「あ、その異世界転生ってやつ、やってみたい?」


 え?やってみたいのでやらせてくださいって言えばできるもんなの?


「まあ普段はそうじゃないんだけどね。うーん説明めんどうくさいなぁ……」


「あの、よければ教えて頂けると……その……」


「うーんとね、例えば君みたいな社会と接点のない引きこもりって誰かに必要とされることってないじゃない?そういう人達の魂ってみんな同じように傷がついてるの。傷のついた魂を輪廻のなかに戻しても生まれ変わったときに同じような人生を送ってしまうのね」


 さりげなくひどい


「それでその心を癒す機会が必要なわけ、罪は地獄で洗い清めて、功は天国で称えられて、君みたいな孤独な心は、君を必要とする世界で癒してもらうというわけ」


 心のケアなら生きてる間にしてくれたら……といっても生きているうちの事は自分でなんとかすべきだったんだろうな。今となって悔いても全て遅いのだけれど……


「そう、そういう後悔も含めてね。まあでも都合よく君を必要としてくれる世界なんてそうそうないから、君に便利な力を授けてから、能力に見合った世界に転生させてあげようっていうわけよ」


 人材派遣会社のようだ……大丈夫かな……


「で、なにがいい?」


「なにって言われても……」


「それじゃあルーレットで決めようか!あのね手作りなんだよこれ!すごいでしょ?」


 その手作りルーレットとやらをみると【伝説の勇者】【ソードマスター】【最強の魔法使い】などなどゲーム的な職業らしきものが色々と書かれている……勇者のエリアちっさ!


「あ、それアタリだから……はいこれ」


 ダーツかよ……回転する的にダーツってタワシの予感しかしないんだけど……しかもネタが古いよ神様



「ちなみに的にはいらなかったら……」


「クロイロコウガイビル」


「え?」


「だからクロイロコウガイビルに転生」


 ええ……やだこのゲーム……


「せっかく作ったのに……」


 可愛くシュンとしても最悪コウガイビルでしょ……きっつ!!


「まあモノは試しでやってみて?ね?」


 やらなきゃ終われないみたいだし仕方ない……どうせもう死んでるんだしどうなってもいいや……


「じゃあいくよー!はい!」


 神様にはじかれてルーレットが勢いよく回りだす、狙ってアタリがひけるようなものでもないし、ヒルさえ回避できれば……よく真ん中を狙い、僕は命運をダーツに委ねた


「的にはあたったね!果たしてどんな力が手に入るかな~?」


【死霊術師】


 ん?


「ネクロマンサーだね」


 ええ……上級者向けっぽくない?MMOなら2キャラ目以降におすすめとか言われそうな……ええ……


「ちなみに人の身で魂や輪廻に介入しようという死霊術は神界では外法中の外法、罰当たりすぎて即天罰レベルの魔法だから覚えたりすると、あたし達の加護が受けられなくなっちゃうの」


 するってーとどうなるんだい……


「そりゃあお前さん、悪魔とか厄災とかがかわりに懐いてくるってぇ寸法さ」


 ええ……もう……ええ……



「まあ決まったことだし仕方ないよ?くよくよしないで、ね?それにネクロマンサーが大活躍できる世界を探して転生させてあげるから安心しなって」


 いやいや……神にすら見放された職業ってもう救いがないんじゃ……


「だいじょぶだいじょぶ!後がつかえてるから早く行く!うだうだ言わない!がんばって!!」


 お手製ルーレットを試して満足したのか何だか雑になってきたな


「それじゃあいってらっしゃい!あ、言語とかは大丈夫だから安心してね!現地についたら北に向かうこと!町があるからね、じゃがんばって~~~」


「えええああ?!ちょ!ちょっと!!って……え?」


 追いすがるつもりがいつのまにか僕は草原のど真ん中に座り込んでいた


「ああ……もう……どこだよここ……」


 はっきり言おう


 僕は泣きそうだ

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