ランクと試合と覇王
腕試しさせられる覇王様
レインバーク公爵家正騎士訓練場、今そこに10歳に満たない少年と複数の屈強な騎士たち、また公爵のアリアがいた。
「アリア様何の冗談ですか?こりゃあ?」
屈強な騎士たちの一人でありアリアの側近たるゴートは困惑していた。なぜなら
「先ほど言ったとおりだ、この少年セファーを試す、全員でかかれ」
「こんな坊主に俺たち全員で?アリア様冗談が過ぎますぜ?」
ゴードは口は悪いが優秀な騎士だ。すぐにこの子供セファーが普通でないことはわかったが、いくら何でも全員でかかってはひとたまりもない、強くてもせいぜい新人の騎士程度だろう。しかもどう見ても子供だ。
「本人が構わないと言っているのだ、お前たちが気にすることはない」
「しかしですね」
「隊長、アリア様こんなガキ俺一人で十分ですよ」
まだ納得しないゴートの後ろからいかにも新人風の騎士たち5人が出てきて、真ん中のリーダー格の男が二人に声をかけた。
「こんななめたガキ、俺一人5秒で終わりですよ」
「おい!ジェドお前らはまだ騎士見習いだ!!ここには立ち寄りを許してないぞ!!」
このジェドという青年はいわゆるボンボンである。有力な貴族、侯爵家の次男で自分が優秀であると勘違いしている典型的なタイプだ、剣の腕は優秀ではあるが性格が騎士としては落第点だ。自分より立場が下の人物は見下し、上の者には媚びへつらう。実際家の格が下のゴートを隠れては見下したりもしているほどである、なぜこんな人物が公爵家の騎士団にいるのか?その理由の一つは父親のコネである。長男が家を継ぐため、次男はどこぞで功績をあげるなどしなければいずれは家を追い出される。しかし遅くにできた息子のため侯爵は息子をかわいがってしまった、こんな性格になってしまったのも公爵が一役買ってしまっていた、さらに侯爵はどうにかアリアに騎士にしてくれと嘆願したのだ。アリアも母の代から世話になっている侯爵の話を無下にできず、現在に至っている。ほかの四人の金魚フンも内容は似たり寄ったりである。
ジェドはいずれ自分が公爵家の騎士団を率いることを疑っていなかった、自分に剣で勝てるのは正騎士を含めても数人、これからもっと功績をあげればいずれは美しく成長するであろうリティアの夫にすらなれる。そうすれば公爵の伴侶だ、好きなようにふるまえるし、成長した美しいリティアを自分の欲望のままにできる。そう思っていた。今日の昼リティアが行方不明になって戻ってきた際に抱き着いているガキを見るまでは、リティアの顔は幸せそうになっていた。まるで好きな人を見ているような
(ふざけるな!!!何だあのガキは冗談じゃないぞ!俺の未来の妻に!!)
そんな時ちょうどよく件のガキを試すらしいという話が聞こえてきた、このチャンスを逃す手はない。そう思い、まだ立ち寄ることが許されていない正騎士の訓練場に共を連れて乗り込んだ。
「・・・・いいだろう。」
「アリア様!!しかしそれは・・・・」
ゴートにはこのジェドの性格はわかっていた。そのためいまだに正騎士にはしていない、しかし剣の腕は確かだ、はっきり言えば自分に迫るほどの腕である。10歳に満たない子供などひとたまりもない。しかもジェドはこの子供を痛めつける気のようだ。一度試合が始まってしまえば降参するか気絶するまで手出しはできない。試合であってもだ。それはこの騎士団の決まり事だ。降参できず気絶できないように痛めつけることなどこの男にとっては慣れっこであろう。現にこの男のと試合をして降参も気絶もできず騎士をやめた者も少なくはない
「セファーもそれでいいか?」
あくびをしていたセファーにアリアはそう聞いた、
「構わないけど、一人じゃ役不足だぞ?」
「このガキ言わせておけば!!・・・いいだろう5人でやらしてもらう、いいんですよねアリア様?」
「いいだろう、責任は私が取ろう」
アリアは実はセファーが負けるとは思っていない。何せ自分すらも死を覚悟して挑まなくてはいけない、限りなくSランクに近いAA+ランク上位魔物ブラットタイガーを一撃で仕留めているのだ。
魔物はそのランクによって強さが大きく変わる、DランクからEXランクまであり
Dランク =下級魔物 一般の大人で対処可能
Cランク =中級魔物 訓練を受けた大人ならば対処可能
Bランク =上級魔物 訓練を受けた騎士クラスならば対処可能
Aランク =騎級魔物 一部の才能ある騎士団長クラスならば対処可能
AAランク=王級魔物 選び抜かれた英雄クラスならば対処可能
Sランク =皇級魔物 一人で戦局を変えるほどの力を持った英雄ならば対処可能
SSランク=帝級魔物 世界に数人しかいない、一人で国を攻め滅ぼせる化け物クラスならば対処可能
EXランク=神級魔物 上記以上の存在 伝説級の魔物 現状対処不可と言われている 世界破滅クラス
ちなみに対処可能なだけである、さらに細かく分けるとここから-、無印(+-などの表記がない)、+が存在する。そして確実に倒すならば上記のランクでは個別ランクが一つ上でなければ難しい。実は竜神や邪なるものはEXランク(測定不能なため位階はなし)でありアリアはAAランクである。
以上のことからアリアはセファーがAA+ランクに位置していると考えていた。ブラットタイガーを一撃で仕留めて見せたのは隙を突き、また運も味方をしてだと思い込んでいた。
(少なくてもAランクに近いB+ランクが一人、ほかの者もB-ランク、強さの片鱗程度は見れでしょう、あれほど大口をたたいたんだから見せてみなさい)
(馬鹿なガキだ、たっぷりといたぶってやる)
試合開始の合図が始まった瞬間にまず足を折り動けなくする、そのあとじっくりといたぶり最後には殺してもいいとジュドは考えていた。試合中の事故として片づければいくらでも説明はつく。合図が待ち遠しい。
審判のゴートが前に出る。
「それでは・・・・試合はじめ!!」
風が走る。
ゴートが風で目をつぶって開いたとき、すでに勝負は終わっていた。セファー以外の5人は全員倒れて気絶していた。
覇王様気づけば一言しか喋ってないんですが?