黒い卵と覇王
12/31今年最後で一気に5話更新行きます。
「落ち着いたか?」
〈はっ!お見苦しい姿をお見せいたしました〉
「とりあえず戦闘は終了でいいな、ヴェスパー・・・ところで何で怒ってたのお前?」
〈・・・それなのですが・・・我が母の墓所の近くに不快なものを置かれまして・・・あなたとの約束の地でもあったので・・・頭に血が上り・・・この町からあの卵を置いた人間の匂いがしたもので・・・つい〉
「卵?壊せなかったのか?」
〈それが我々神獣には触れられないもので・・・不浄の塊なのです、危険なので妻子は非難させるほどのもので・・・しかも炎では焼き払えないものでして〉
「おいおい・・・不浄って・・・今度はアンデッドでも作る気かよ・・・もしかして狙いは・・・まさか!!」
セファーは慌てる様子で踵を返して足に力をためる。
〈どうされたのです?セファー様〉
「狙いはお前の母の遺骨・・・遺骸だ!!神獣のアンデッドなんてシャレにならんぞ!!それに急がんとミリスもやばそうだ!」
〈何と!!愚かなセファー様私もまいります、墓所には直接転移は不可能にしてありますが、近くの平原にならば転移が可能です。神聖なる墓所を穢そうとするとは許しがたい!〉
「いいやすまんがお前はリティアとローラ公爵の護衛を頼みたい・・・まだこちらで何かをしそうだからな・・・頼む」
〈・・・御意にございます。私も間違えてこの少女たちと戦ってしまいました・・・お任せください・・・墓所の事はお頼みいたします〉
「ああ・・・任せてくれ」
「・・・待ってくださいませ」
「エナ!?目が覚めたか」
「はい・・・この状況は・・・・?」
「説明してる暇がないが・・・とりあえずヴェスパーは味方になった・・・君たちはこれからローズ公爵がやろうとしていることについて行ってくれ・・・ヴェスパーが全員の護衛をしてくれる」
「ええ!?・・・また・・・セファー様。なんだかわかりませんが・・・あなた様ならば何でもありそうですね・・・分かりました、リティア様達にはお伝えします」
「頼む・・・ヴェスパー転移を・・・何とか両方とも間に合えばいいが!!」
〈御意!!では参りますぞ転移!!〉
剣が迫ってくる。体勢が崩れたいま。受けることはかなわない。普通の槍であればすでに詰みであるが、彼女の持っている槍は普通の槍ではない。
「くっ!!『ドライフォーン』!!」
地面を風でたたきジードの一撃を何とかかわすことができた。
「しぶといな・・・今世のエリクシル殿・・・」
「あ、当たり前ですわ・・・ここから反撃いたします」
そう言って互いに構えなおす。
(とはいったものの・・・何とか逃げるのが精いっぱい・・・何よりあの剣と盾の波状攻撃・・・それに異常なまでの膂力に速度・・・本当に同じ人間?威力が落ちているとはいえ『ドライフォーン』一撃を少なくても2回は受けている・・・それなのにそれをものともしない・・・)
「そちらから来ないのであれば・・・行くぞ!!」
(来る!!)
ジードが踏み込もうとした時だった。
ああああああぁぁぁぁぁああああ!!
声が響く、頭上だ。
「え!?」
「何!?」
ドン!!という音とともにちょうど二人の中央になにかが落ちてくる。
「痛つつつ・・・やっぱり転移系とは相性が悪いな・・・転移陣は大丈夫だったんだが・・・」
尻をさすりながら立ち上がったのは腰に剣を2本差した少年である。
「セファー!!」
「おう!!ミリス・・・まだ大丈夫そうだな・・・それに」
目を向けたのは油断なく構えているジードだ。
(ほお!!今までみた1000年後の手練れの中で一番だな・・・神獣を含めても)
セファーが内心感心していた所。ジードも彼を一目見て脅威を感じていた。
(何者だ!!・・・姿は少年だが・・・これは・・・一見隙だらけだが下手に打ち込んだら打ち据えられるのは俺の方だ・・・)
ジードは久方ぶりに感じた強敵の気配に、冷や汗と歓喜の相反するものを同時に感じた。
「・・・帝国の・・・確か『常勝不敗』殿だったか?」
「・・・ジードで構わん・・・貴公は?」
「・・・エリクシルに雇われている執事のような?もの・・・セファーだ」
「ほざくな!そんな剣気をまとった執事がいるものかよ・・・大方傭兵のようなものか・・・」
「ある意味本当なんだが・・・まあ本職は剣士だがな・・・それより引く気はないか?」
「あるはずがないだろう・・・我々の欲するものはこの大地だ」
「・・・あんたもはめられているとしてもか・・・」
「例の連中の件か?了承済みだ。それも踏みつぶしていくのみ!!」
「・・・分かってないな・・・もうここにいる時点で完全に策にはまってるんだよ・・・もうそろそろわかるだろうこの不快な気配に・・・あんたたちも俺達もここでまとめて始末しようと考えてるんだよ・・・」
「むう!!この気配は不浄の・・・しかもかなり大きい」
「そんな・・・どうして今まで気づかなかったの?」
ジードもミリスも気づいたようだ。
「だからあんたらと争ってる暇はないんだ・・・それでもやるのか・・・」
「無論だ・・・貴公らを倒した後あれも倒せばいいだけの事」
「これだから堅物の武人は・・・そんなレベルで収まる奴じゃないぞ・・・下手したらEXrankに足を突っ込む存在だぞあれは・・・はああああーーー・・・わかった・・・分かった。どうやらあんたを倒さなくちゃいけないようだな・・・やむなしか・・・ミリス!!ここは俺が戦う。だから君はけが人をなるべくここから遠ざけてくれ・・・下手をすればあれが動き出す前に決着はつかない・・・それも見越して避難だ!絶対にあれが出ようとしているところにはいくなよ!」
「何故ですの!あれは放置していいものではないでしょう?」
「不浄の気配をまとった神獣だ・・・通常の武器は効果がない。聖属性の武装か、浄化の技でもどこまで効果があるかわからん・・・無駄に死ぬだけだ・・・そうしたら死んだものまでアンデット化してどんどん手が付けられなくなる。・・・」
「あなたなら何とかできますの?」
「・・・今の装備だと(やや賭けの要素が強くなるがな・・・手段はある」
「・・・分かりました、皆を引かせます・・・」
「いや君も引けよ!!」
「お断りします!私にはあなたたちの戦いもこの後の不浄な神獣の動向も見る義務があります!」
「頑固者め!!」
「その言葉そっくりそのままお返しいたしますわ!」
ため息をついてジードを見る。ミリスが兵を引かせているのを見ても仕掛けてこなかった。いいやセファーが会話しつつも帝国の全員に圧力を与えていたからだ。下手に踏み込めば斬るという強い意志を。それをプレッシャーに感じていないのは正面に立つジードのみである。
ジードは軍を下がらせた。下手にセファーに向かって言っても無駄な犠牲になるだけだ。相手はおそらく自分と同等以上の存在だ。対抗できるのは自分を除いてはいないだろう。必然とその場はセファーとジードの一対一の様相となった。
「行くぞ、セファー!!」
「来いよ『常勝不敗』のジード!!」
互いの剣と盾がぶつかった。
次は15時更新




