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蘇る覇王と10の竜器  作者: jun
第1章 覇王再臨
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森をでて、なぜか睨まれる覇王

結界の外へ向かう二人。


 仕事が一段落ついた。今日は隣の領地の派手女も絡んでこないし、町も平和そのものだ。多少森がざわめいているような気がするが、特に結界に綻びがある訳ではないので問題はないはずだ、久々に愛娘との昼を取れることにアリアは喜びを感じていた。


「奥様!奥様!!!」


 突然部屋のドアが開かれた。長年我が家に勤めている壮年の使用人、メイド長をしてもらっているモアが慌てた様子で入ってきたのだ。その様子に胸騒ぎがした。


「どうしたの、そんなに慌てて?」


「奥様!!!大変でございますリティアお嬢様がリティアお嬢様が」


 血の気が引いた、私の愛娘に何があったと言うのか?気が遠くなりかけるのをぐっとこらえモアの続きを促す。


「お嬢様が何処にもいらっしゃらないんです!部屋にも、庭にも何処にも!」


「確かなのね?それ・・・モア!全員を大部屋へ呼んで!!」


 モアに至急走ってもらい、自らも竜器を手に持ち大部屋へ走る。

 今すぐに飛び出して探しに行きたいが、冷静にならなければ、誘拐か?事故か?まずあの娘を最後に見たのは誰か確認し・・ああもう!考えがまとまらない。とりあえず一分一秒でも無駄に出来ない。



 ああ~何だろうこの状況は?右側はしょっちゅう襲ってくる魔物を木刀で吹き飛ばしていてだいぶ剣呑だ、左側を見るとまるでピクニックに来ているかのような雰囲気である。本当になんだこりゃ?この娘さんにそんなに信頼されるほどのことをしたと覚えはないのだが。なぜかこの状態だ。めっちゃくちゃニコニコしておいでだ。


「こっち~、こっちなの」


 今蛇型の魔物を吹き飛ばした。


「あのねあのね、セファ兄様」


 今突進してきた猪型魔物を地面に叩きつけた。


「町は大きいの~」


 今飛び出してきた角がある兎の親子に道を譲った。ちょっと和んだ。


「母様は綺麗なの~」


 今集団で空から襲ってきた鳥型の魔物を剣風で打ち上げた。


 どうもさっきから魔物の遭遇率が高い。リティアから聞いた話によると出口付近に怖いのがたくさんいる、大きいのもいた、ということなので出口に近づいているのだろう。


「聞いてるの?セファ兄様!」


 いつの間にか左腕に捕まっているお姫様が、頬を膨らませてご立腹だ。どないせぇちゅうねん。考え事くらいさせてお願いだから。とりあえず頭をなでてやったら直ぐに機嫌を直したようで、にこにこし始め、またあのねあのねと始めた。 

 しばらくそうしている内に、どうやら出口のようだ。今までで一番大きい魔物が、出口を塞ぐようにうろうろとしていた。


「随分とでかい虎だな」


 5メートルに迫るほどの巨体、赤と黒の縞模様、脅威は感じない。最初の狼のボス程度の強さだろう。虎の魔物は結界を通れないようで、出口付近を行ったり来たりしており、こちらにはまだ気づいていない。

 リティアに手をしぶしぶ放してもらい、仕掛けようとしたところで異変が起きた、結界が揺らいだ。


(何だ?まさか!このタイミングで入口の結界解除をする気か?状況があまりよろしくない。ならば一撃で終わらせる!!)


 右手の木刀にプラナを流し虎との間合いを一気に詰める、虎が気付いた時にはもう目の前だ。右腕を引き絞り回転させた突きを放つ


一刀・屠龍・穿いっとう・とりゅう・うがち


 虎の横腹に木刀が突き刺さる、巨体が浮き上がり少し回転する。本来2刀で放つ連続攻撃なのだが今は一刀、だが手ごたえは十分、仕留めた。出口の結界が消えるとほぼ同じタイミングで虎の残骸は結界の外に吹き飛んでいった。


 結界の外近くに幾人かの気配がする。一番大きい気配は、どこかリティアにそっくりなので肉親であろう。警戒されているようだ、なかなか近づいてこない、まあ当然だな。こちらから近づこうとしたとき


「母様!!母様なの!!」


 リティアが駆け出してしまった。やれやれと思いゆっくりと歩いて俺も結界の外に出たのだが、リティアと抱き合っていた彼女の母らしき人物がリティアを背中に回して


「あなた何者!?答えなさい!!」


 と剣を構えられて、めっちゃ睨んでくるんですが、まあ確かに俺は怪しい。ただでさえ身元を証明するものがなく、彼女が張っている外から入れないはずの結界内から出てきたのである。ちなみにリティアは例外だ。おそらく血による結界、血縁者ならば素通りできるタイプの結界だからだ。さてどうしたものか。





 使用人全員に聞き込み、捜索したところ、リティアが訓練用の木刀を持って行ったこと、料理長におやつをねだっった事、一人で『魔元の森』の方向へ歩いて行ったことが分かった。

 最悪だ。予想しなかったわけではないが娘がいなくなってから時間がたちすぎている。気を失いそうになりながらそれでも最後の希望にすがるように馬を走らせた。


 森の入り口につき、すぐに入口の結界を解こうとした。結界のすぐ内に巨大な魔物がいるのはわかっていたが、だからどうした、我が竜器で一気にけりをつける。たとえ本来は死を覚悟するほどの魔物であろうと、今の私を止められると思うな!!その雰囲気に気づいた古株の騎士の一人が


「危険すぎます!公爵様!!せめて我々が先行いたします」


 と止めようとしてきたが


「いいや私が行く!!あれはお前たちでは傷一つつけられん、下がっていてくれ!!」


 私は騎士たちを下がらせ竜器を構え、結界を解除した、その瞬間


ドオオオオオオオオオオンン!!!!


先ほどまでの脅威が激しい衝突音とともに外に飛び出してきた。何が起きたか全員がわからなかった。

思考停止すること数秒、魔物が死んでいることを確認した。つまりこれをやった何かがこの先にいる。だが躊躇していられない慎重に、でも素早く行動しなければリティアは・・・


「母様!!母様なの!!」


娘の声がした、奇跡だ。駆け寄ってくる娘に急ぎ私も駆け寄って抱きしめた。


「本当に・・・・・・本当に心配させて、この娘は」


涙で視界がにじむ。私の様子を見た娘もつられて涙をにじませた。ゆっくりと娘との再会を喜びたかったが・・・もう気配を感じている。娘を背中に隠して、ゆっくり歩いて結界を出てきた人物に竜器を向ける。そう人物だ、魔物ではなく。普通ではありえないことだ。私の管理している結界にリティア以外が入ろうとすれば即座に分かるし入ることができない。それがなぜか結界の内側から出てきたのだ、警戒するなというのが無理な話だ。

見た目は10歳になってないくらいの銀髪の少年だった。だが油断はできない。その歩みに一切のスキはなく、彼から発せられるプラナは尋常ではない。


「あなた何者!?答えなさい!!」


すでに敵わないとわかってはいたが,娘を守るために虚勢を張り彼を睨み付けた。





次回はできたら28日更新します。

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