未だ森の中、そして少女に出会った覇王
腹減り覇王様森を行く
あれから半日歩けども歩けども森、森、森だ。代わり映えがしない。正直飽きてきた。
「どれだけでかいんだこの森は、もう昼間近くか
・・・・・ 腹減った」
セファーはなる腹を押さえながら歩き続ける。時たま襲ってくる魔物を蹴散らしながら
(これ食えないか?いいや、ダメだ。魔物肉は適切に処理できないと食えたもんじゃない。俺は浄化もできないし聖水も持ってない。魔素の毒にやられることは、今の俺でもないだろうが、口に入れた瞬間吐き気を催すようなエグミで、食えたもんじゃなかったからな、昔試したときは)
本来魔物肉は適切に処理(聖水に数日つけるや浄化の魔法で浄化する)すればそれこそ高級品で非常にうまい。しかしセファーには処理する方法がない、泣く泣くあきらめるほかなかった。そのため目の前にある魔物からはアンデット化しないように魔石のみを取り出し、全て埋めるなどしていた。新しい木の枝を地面に振るえば穴が出来るので、作るのは簡単だが、そろそろその労力すら腹が減って面倒くさくなってきた。
「腹が減りすぎて、冗談も言えなくなってきた。そもそも竜神と戦ったのが四日前、今日で五日も何も口に入れてない、空腹で死ぬとか勘弁だろう、まったく」
一度木の上から周りを確認して、こっちの方に町らしき物が見えので歩いているのだが、まだつかない。そろそろ見えてもいいはずだが・・・・・そこで違和感を感じた。
「これは、もしかして結界か?内と外を区切るのと物と道をランダムに繋げて迷わせるタイプの?」
この手の結界は壊せなくはないが、無理矢理壊すと恐らく修復するのに時間がかかる。間違いなくやたら多いこの森の魔物を閉じ込めるための結界だろう。勝手に壊すのはまずいだろう。壊すのは最終手段にしたい。 どうしたものか?と考えていると複数の魔物の気配と、人の気配がする。
「こっちか?結界の中にいるってことはこの結界の管理者か?追われている・・・・・行ってみるか」
管理者がいるであろう方向へ風のように駆けだした。
リティアは足がもつれそうになるのを必死にこらえ、怖い物から逃げていた。知らないうちに森の中に入ってしまった。気づいたときには既に手遅れだった。大きい犬のような怖い物に追われている。
剣において非凡な才能を持つと言ってもまだ6歳の少女だ。しかもこの森の魔物は一匹一匹が、それこそ小さな町であれば壊滅させる程の危険な物だ。リティアは直感で自分では勝てないことを感じ取り、目に涙を溜めて必死に逃げた。しかしもう限界だ。木の根に足を引っ掛けて転んでしまった。リティアは木刀を魔物に向け
「いやーなの、こっち来ないで!」
必死に涙しながら振り回した。魔物は前脚でリティアの木刀を払って遠くにはじきとばしてしまった。魔物が牙を開くとリティアは恐怖と混乱で声すら出なくなってしまった。魔物が飛びかかってきた、目を瞑り痛みが来ることに身構えまる、が一向に痛みが襲ってこない、目をつぶったすぐ後にキャインと言う鳴き声ぎしたが?・・・・・・恐る恐る目を開けると
「また、狼型かよ、本当にどんだけいるんだよ・・・・ところで少女無事か?」
と軽く声をかけてくる自分より2、3歳年上の少年が、先ほどはじき飛ばされた自分の木刀を持って立っていた。
リティアは言葉を発するのも忘れ、少年にみとれた。
(きれいな銀の髪に青色の目なの、まるで絵本の覇王様みたい)
「また、狼型かよ、本当にどんだけいるんだよ・・・・ところで少女無事か?」
助けたのは随分とかわいらしい少女だった、こっちをぼーと見ている5、6歳程度の少女だ、先ほどから反応がない、お~いとか大丈夫か?とか声をかけているのだが、
(まあ無理もないか魔物に殺される寸前だったからな、この感じからして少女は管理者の家族だろうな、大方知らずに結界内に踏み込んでしまったパターンだろう。)
因みに狼型の魔物はすでに逃げている、軽くはたいただけだが、その後少々の殺気をぶつけたため尻尾を巻いて逃げていった。
しばらく様子を見ていると少女が回復したようだ。さっきまで涙をためていた瞳が今度はキラキラ輝いている。何だ?こっちをじーーーーーとみてくる。
「えーと少女よ。なぜ見てくる?」
「少女じゃないの、リティアなの」
「ふむ、ではリティアよなぜ見つめてくる?」
リティアと呼ぶと真っ赤にしたほほに手を添えて////と恥ずかしそうにくねくねしている。何だこの少女は?
まあとりあえず話を進めるか、そう思い口を開こうとすると、ぐうううううという音が俺の腹からなり急に力が抜けた。
「すまんがリティア何か食べるものは持っていないか、もう腹が減って動けん」
「おなかがすいてるの?ビスケットならあるから、たべる?」
リティアがカバンの中から袋入りのビスケットを差し出した。久々の食べ物だった。口にした瞬間甘い味がして、生きている実感がわいた。食べているとリティアがニコニコしてこちらを見いる。そういえば昼時だ、少女も腹をすかしているのではと今更ながらに気づいた。
「すまん。リティアのビスケットだったな、残りは食べてくれ」
そういって戻そうとするがリティアはぶんぶんと首を横にふった、流石にこっちも引けないとビスケットを渡すが
「なら半分こにするの」
そういって俺が食べた後のビスケットをちょうど半分にした、
(この娘は何というか、心根がきれいなのだろうな)
多少腹の足しになった程度ではあるが、おかげで動けるくらいには回復した。そこでまたじーーーーーとこちらうを見るリティアと目が合った。ただし今度はリティアから話しかけてきた
「あなたの、お名前なんて言うの?」
ああ、そういえば名乗ってなかった。
「あーー、セファー・ラン‥いやただのセファーだ」
「セファ兄様なの?」
「に、兄様?確かにリティアより年上だとは思うが」
すでにリティアはニコニコキラキラ状態だ。セファ兄様セファ兄様と繰り返しうれししうに口ずさんでいる。
そろそろ、話を進めよう‥‥リティアが完全に落ち着いたようなのでそう切り出した。
「リティアはこの森の出口を知っているか?知っているなら教えてほしい。」
「わかるの、こっちなの。でも・・・・・怖いのがいるの」
しょぼんとした雰囲気で再び目に涙をためだした。
「なら大丈夫だな、俺がどうとでもできる、この木刀しばらく借りるぞ」
セファーがそういうと木刀を持っていない左腕にリティアが抱き着いてきた。
「おっと、いきなり抱き着くと危ないぞリティア」
(左手には木の枝を持ちたかったのだがまあ仕方ない。この程度の森の敵ならば片腕で十分だろう)
とセファーは考えていた。しかし一般常識としてSS-ランク危険地域『魔元の森』は精鋭一個中隊の騎士団がわずか15分で全滅するほどの危険地帯である。これより危険な場所は世界に片手の指の数しかないほどの。
セファー本人は全くと言っていいほど脅威を感じていない、本人がでたらめすぎる強さなためこれに気づくのはしばらく後のことになる。
森の出口に向かってかつての覇王といづれ英雄の一人となる少女は歩き始めた。
次回投稿は27日ごろの予定です。