森の大樹と動き出した闇と覇王
攻略開始、そして動き出す・・・。
その大樹は『魔素の森』の中央にそびえていた、素の大樹はもともとその場所には存在しまかった。そしてその大樹は黒い魔素を放っていた。
「つまりあの大樹のところに、ダンジョンコアがあってあの大樹が魔物拡大の原因ということか・・・」
「直径幹の大きさだけで2km高さはおよそ8kmの巨木、あのどこかにダンジョンコアは存在しているわ」
「あそこについても探すのが大変そうだな・・・方法は着いてから考えるか、まあ少なくてもあそこまでの距離がまだある。まずはこの森の魔物を減らして人類圏を増やすところから始めようと思うが?」
「ええお願いするわ、すでに私の代になって進んだ距離よりも進んでいるもの順調すぎるわよ、まだ3時間ほどなのに・・・・・・」
アリアの先祖までの代で巨木までの距離を縮められたのは15Kmほど、アリアはせいぜい3kmといったところだ、ただ3kmでも今までの1代よりも進んでいる。それも彼女はまだ5年しか探索を続けていない。偏に彼女の戦闘能力の高さがあればこそである。
しかしその自負も自分の前で歩いている少年の前には簡単に吹き飛ばされてしまった。自分が進んだ距離よりも恐らく1kmほど多くも、それもたった3時間で踏破してしまっている、早めの昼休憩は取ったといっても、ほぼ歩くのと変わらないペースで踏破するなど予想がつくわけがない。今も歩きながら、よそ見をしながら魔物を殲滅している。ちなみに今までに出てきた魔物すべてが左右に持った木刀にで二撃目すら放たず一撃で、しかも魔物が死体を残さずに完全に消失している。どのようにしてやっているのかわからないが、袋がいっぱいになって魔石の回収ができなくなったのをきりに魔石ごとこの方法を取り出したのだ。
ちなみにこれは技でもなんでもない、木刀があったった瞬間にプラナを相手にたたきつけているだけである、但し魔物が消滅してしまうだけの量、制御がなされているだけで。
この時代の人々は長く平和が続いたせいか、プラナ運用はできるが、セファーほどの緻密な制御ができていない、そのためやっていることが、単純なことであっても理解が追い付いていないのだ。
セファーは先の『プラナ異常症』の治療法もそうだが、平和になったことの弊害を改めて知った。
(俺の責任ではあるな・・・少なくとも弟には邪なるものが生きている可能性を伝えておくべきだった。平和になった喜びに笑みを浮かべる、あいつらをぬか喜びさせたくなくて、それに俺一人で決着をしたくて旅立ったが、これは・・・いづれ技術を公開、教えるのことも必要になるなこれは・・・っとそろそろ時間だな)
「アリア殿、そろそろ事前に決めていた。折り返しの時間だ。今日は試しなのだろう。これ以上進むと今日中には帰れなくなるぞ」
「そうね、今日は戻りましょう。そもそも予想以上の成果よ。これ以上は贅沢になるわね。それに今は順調でも。大樹に近づくにつれて魔物も手ごわくなるはずだから、準備をしっかりとして再度臨みむとしましょうか」
今日だけで、大樹までの道、『魔元の森』領域を縮めることができている、結界を少し小さくできたのだ。満足して今日は帰ろう、二人は踵を返し町に戻るために、足を進めた。
レインバーク領は特殊な領である。何せ首都となる中央の都市アグニールには、一番上の公爵が常駐していない。彼女には『魔元の森』の管理があるため中央の都市には、代わりに信頼のおける侯爵を置いていた。但しこの侯爵は妻に顔があらない恐妻家でもあった。ディム・ハシェル侯爵がアリアからの手紙を見て頭を抱えた。
「何ということだ!!!」
息子の犯した暴挙、数々の罪。可愛い息子と甘く育ててしまったつけがこんなところに出てしまったか。息子のしてしまったことを考えれば、これでも軽いほうだ。だが自分以上に息子をかわいがっている妻は納得しないだろう。どう説明するべきか。
「あなた、どうしたのですか?そんなに大声を出して」
妻のジェシカが執務室に入ってきた。手紙を見せないことには始まらない。そっと手紙を妻に渡した。
「これは?・・・・・・!!!!あなた!!すぐ公爵閣下に抗議を!!こんなの嘘に決まっています!!」
「馬鹿を言うな・・・・これは正式な決定事項だ。公爵閣下は私への義理立てのために手紙をくださっただけだ、抗議などできるはずない、たとえしたとしても決定は覆らない」
「あなたはジェドが可愛くないんですか!!」
「そんなことは言っておらんだろうが!!そもそもこれはあいつの育て方を間違えた、私たちの責任だ。私は責任を取って、長男のアデムに当主を譲り、侯爵を退く!!私はもう決めた!!!」
こんな強い口調で話す夫は初めて見た。しかも夫は責任を取って隠居をするつもりだ、そんなこと許してなるものか。
「わかりました!!もうあなたには頼みません!!私が何とかします!!」
そう言って執務室の扉を勢い良く締め、ジェシカは出て行った。
「全く・・・・どうするつもりなのだ・・・・・・・」
ディムは天を仰いだ。
ジェシカは首都にある一つの屋敷を訪れていた、もともとこういうことがあった時のためにと夫には内緒で交友していた者たちの本拠である。いまは奥の部屋に通され、いらいらしながら対応を待っていた。
しばらくして恰幅の良い商人風の男が億より現れた。
「いつまでまたせる、つもりですか!!こちらはいそいでいるのですよ!!」
「奥様、落ち着いてくださいませ、えぇ・・・こちらでもすでに把握しておりますので・・・・」
男は不気味な笑顔を見せながらジェシカに話しかけた。
「知っているとはどういうことですか!!」
「いえね・・わたくしの配下の一人がジェド様の近くにおりまして今回のことを見ていたのですよ」
「どういうことですか!?見ていたのであれば何故助けない!!!」
「無茶を言わないでください。公爵家の意向に逆らうなどとてもとても・・・・もしそれを行うのならばそれなりの利益がないと我々は動けません、何せ商人なのでねぇ・・・・」
「何が欲しいのですか!!私にできることならばすべていたしましょう!!」
「話が早い・・・それではこれを・・・」
そこに書かれていたのは、公爵邸・・今は侯爵が間借りをしている家にある、古い鏡であった。もともと古いものでどんな価値があるかもわからないものだったため気にもしていなかった。確かに歴史的価値はあるのかもしれない、夫からは公爵閣下より預かっている大切なものと言われていたが、息子には代えられない。
「いいでしょう。すぐにお持ちしまます!!それで息子を助けてくれるのならば!!」
「ええ、お約束します、必ずお救いして見せますよ・・・」
ジェシカは急ぎ公爵邸に戻った。
「行ったか・・・・くくく、うまくいきそうだな」
商人風の男は愉快そうに顔を歪めた、とても人とは思えない表情だ、
--我々ではあの邸宅には足を踏み入れることができないからな--
どこからともなく声がする。
「えぇ、レインバークの所有する結界神具ですからねぇ・・・眷属の私たちでは立ち寄ることもできない」
--もはや現在のレインバーク当主すら知らないだろう、あの邸宅に置いてある鏡こそ『魔元の森』の結界術の増幅器であるということなど。いいや・・もしかしてそれを隠すためにわざとそうしているのかもしれぬな--
「なんとなく伝わっていて、邸宅からは動かさない。代々守っていくというのは伝わっているようですがねぇ・・・・これでようやくあの森を暴走させることができる。」
--そうか・・・楽しみに待つとしよう・・・混乱、混沌を我は望む故な--
「えぇ、楽しみに待っていてください」
そういう商品風の男の目は赤く怪しく光っていた。
夫人が例の鏡を持っッてやってきたのはすぐ後だった。
「これで息子を助けてくれるのでしょう!!」
「えぇ、お救いいたしましょう。部下に連絡を取りますので、本日はおかえりいただき、吉報をお待ちください」
夫人が屋敷を出ていく後姿を見ながら商人風の男は
「お救いしますとも、この世からね。」
そう静かに述べた。
次回は8/3にできればいいなぁ~。