再び森に入る覇王
森の攻略を始める覇王様。一方不穏な・・・
「知らない天井と知っている娘だ」
あれからもろもろ細かいところをアリア殿と詰めて、夕食をもらったところまではいい。問題はそのあとだった。いつの間にかアリア殿がおらず。俺の後ろにはリティアが満面の笑みで立っていた。見覚えのある本を持って・・・・そのあとは思い出したくもない・・・・ほんとこの娘ぶれないわ、ある意味尊敬に値するね。本を読んでいる間に『プラナ異常症』の治療も施術するのは忘れない、しかも昨日の夜はどこぞのバカ共の相手もしてなお気疲れていた。
昨日までの話は置いておこう、今のこの状況は・・・・昨日俺寝る→朝リティア本を読んでもらおうと早起きする→昨日久々の長い睡眠をとれた母逃亡→母がいないので俺のところに本を持ってやってくる(隠気、無自覚使用)→いつもより短い睡眠だったため兄的存在の眠っている左側(自分のポジションに移動)そして捕縛→耐えられず睡眠→俺起きる(いまここ) ・・・こんなんところだろう。
起きたらいろんな意味でやばいのだが、がっしり腕を捕縛されている。ならば!
【隠気奥義無影身】
【体気奥義是空】
全力を持って抜け出る、無影身は気配を完全になくす奥義で、是空は一時的に体をそこになかったように空の状態にする。どちらも奥義だ。だって起きたら少なくても3時間コースだぜ。全力にもなる。そしてどこぞの公爵めが!!昨日も今日も俺より先に逃げやがっって、今どこにいる。それに庭にふんじばっている連中の事も話さなければならない。
まんまとセファー君をイケニげふんげふんリティアの面倒をしてもらい昨日の夜、今日の朝は快適だ。後が多少怖いがトントン今頃彼はリティアの強制3時間コース、終わるころにはトントンこちらに何かいう気力は残ってない。気力が戻ってきたころにトントン攻略の話を進めれば文句を言う暇もないはず。完璧だ。ってさっきから肩あたりをトントンしてくるのは誰だ!?振り向くとここにいないはずのセファー君が
私の肩を背伸びをしてたたいていた、いい笑顔で。私は即座にジャンピングDOGEZAを敢行した。
話し合いによる公正な決まりで朝は俺が、夜はアリア殿がリティアの御本係になることが決定した。それと昨日あったことを話した、アリア殿は渋い顔をしたがすぐにゴート殿を呼び庭に転がっている連中の処分をした。・・・まあそれより本題はここからだ。
「アリア殿、さっそく今日の朝食後から『魔元の森』攻略を始めたい、時間は空いているか?」
「時間は大丈夫だけれども、まだあなたの武器をどうするのかなど決めていないけど?」
「この森だったら、訓練用の木刀をもう一本貰えれば問題ない。壊れない武器はここではなく今後のために用意願いたいものなんだが」
「この森を、訓練用の木刀で攻略って・・・・もういろいろなんだかな~・・・・あなたがもう少し早く表れていればと思わなくはないわね 最も流石に今の年齢より下がっても・・・・何とかしそうね」
「悪いとは思うが、過去の事を言っても仕方がない、今は早急にここの森を攻略する。それで勘弁してくれ」
「なんであなたが謝るのよ・・・・・・・・・・とりあえずわかったわ。じゃあ今日から始めるわよ。リティアは私かあなたが付いていないときはモアとゴートに頼むわ。今日からよろしく頼むわね」
さあいよいよ攻略の始まりだ。・・・・何か忘れている気もするが・・・・・・・あっ!!やばい!
お姫様のことをすっかり忘れていた俺は、いそいで部屋にもどったがそこには頬を膨らませたリティアがいた。この後なだめるのに時間を要したのは言うまでもない。
昨日できた、兄のような存在に今日はいっぱい遊んでもらえると思っていたリティアは内心しょんぼりしていた。しかしそれを表に出すわけにはいかない。昨日母と兄が真剣に何事かを話していたのをリティアは聞いている。今日の二人もその時の雰囲気とそっくりだった、だから自分はわがままを言ってはいけない。二人に心配をかけさせないためにも、いつも通り過ごさなくてはいけない。幼いながらにリティアは公爵として忙しい母を見ている。今は邪魔ができないそう判断した。その分二人が開いている時間は目いっぱい遊んでもらおう。そう楽しみに思いながら。
(くそっ!!!くそう!!なんで俺がこんな目に合う。俺は侯爵の息子だぞ。ふざけるな)
今自分がこんなにみじめな目にあっているのはあのくそガキの所為だ。今自分は牢屋で監禁されている。あのクソガキに負けた後、俺は仲間を連れて寝ているクソガキを襲おうとした。しかし待っていたのは公爵家の屋敷の前でたたずんでいるあのクソガキだった。
「・・・やれやれ。馬鹿の精神構造はいつの時代でも同じなんだな・・・。夜も遅いし寝ているリティアやアリア殿を起こしたくない・・・だから・・・沈んどけ」
【合気斬り・心の一閃】
まただ、、またあのクソガキに気絶させられ縄で縛られた。あんな奴に俺が負けるわけがない。先の試合も今回もあのクソガキはインチキをしたんだ!!例えば意識を失わせる毒を使ったとか、それでなければ俺が負けるはずはない。公爵様もあの卑怯者に騙されているんだ、なんでそれがわからない!!しかも今まで俺がやった悪事を調べられて追及もされた。ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!!このままだと俺は騎士の権利をなくして領地追放だと!すべてあのクソガキの所為だ!いいや、そんなあのガキを信用する公爵も許せない、今に見ていろ!!すでに外にいる仲間には連絡が取れている。もともと怪しい奴だったがこんな時には頼りになる、ここを抜け出し必ず復讐してやる!!!
今回のことでは流石にアリアも処分を決めた、狙いがセファーとはいえ、いや、今現在でも継続して恩人たる彼に刃を向けた、しかも公爵家に襲撃をかけようとしたのだ、いくら世話になっった侯爵の息子であろうと流石に許すことができない。そのうえ余罪を追及しようと調べるとわずか数時間ででてくるわ、でてくるわ。
いかに忙しいとはいえ、これは自分の責任だ。もし『魔元の森』の件がひと段落したら、領地のことも騎士団のことも見直す必要がある、と自分を戒めていた。しかしこれは正直仕方がないことでもある、レインバーク公爵領の仕事は、いつ魔物があふれるかわからない『魔元の森』の結界維持、管理というほかの領にはない、大きな職務がある、そのため人事は、大抵が全部で5つある各隊の隊長に任せることになってしまっている。しかしそれでも人が足りていない。何せ小国規模の土地があり、人口もそれなりにいる。自然と騎士も多くなってしまう。先に述べたようにアリアは結界維持にそのほとんどをとられてしまい、細かく目を光らせることができない、今後のことを考えて、第6の部隊、内外の諜報ができる部隊を作る必要も検討をしなければ、アリアの心労はまだ続くようだ。
ところで例の騎士、ジェドの処分だが今は牢に入れてある、今後騎士の剥奪、領地追放などを検討している、侯爵の顔も立ててこれが最大限の譲歩だ。これから首都を預かってもらっている侯爵あてに手紙を書き、ジェドの母からの抗議は来るかもしれないが実行する。本来は死刑であってもいいくらいなのだ。
(いっそあと何か一つでも罪が出てくれば死刑にできるのだけど・・・)
手紙を出し返答が返ってくるまで数日必要だろう。今日はとりあえず。セファーの『魔元の森』攻略の初めだ、そちらに集中しよう。
「結界を開けるわよ」
『魔元の森』入口にセファーとアリアはいた。
訓練用の木刀をもう一本貰ったセファーは自然体で、アリアは緊張した面持ちで森に入っていく。
「相変わらず。不気味な森ね・・・」
ドゴンッ!!
「アリア殿は、何度この森に入った?」
ズバン!!
「30回ほどしか入れてないわよ。それも部隊を引き連れて、しかもうち4回は残滅寸前にまでなってね。時間は最大でも3時間ぐらいで500メートルも進めなかった・・・だから」
ドコッベキッバキッ
「こんな異常な速度でしかも片手間にAランク以上の魔物を狩って進むなんて初めてよ・・・」
さっきからの音はセファーが魔物を木刀を確かめるように屠っている音だ、足を止めないで歩きながらのため意外と進行速度は速い。
当のセファーは、この時代にきてからのまともな2刀流を確かめていただけだが、そもそも初めはただの木の枝2本だそこからリティアの訓練用木刀を借り一刀だった。
(やはり剣が2本あるというのは落ち着く、そもそも俺は2刀流だ。ここ2日ほどは柄を両手で握ってなかったからな)
剣士は柄があるかないかの違いだとその戦闘力に大きな違いが出る。セファーは尋常ではないため得物は選ばないが、それでも普段握っていたものが、柄ありのものだと。また2本あると何というか心構えが変わるような気がしていた。ちなみに金属の実剣を持っていないのは、たいしてセファーが振るうには耐久性が変わらないためだ。どうせ本気では振るえない、本気で振るえば木刀も実剣も変わらず崩れ散るのならば実剣でなくていい、容赦して戦うのならこれで十分なのだ。
「ふむ?そんなものか?ちなみに適当に進んでいるが方向はあってるので?」
「問題ないわ、そろそろ見えるはずだから」
アリアがそういってしばらく進むとそこに巨大すぎる木が現れた。
「あれを目指せばいいのよ、あの木に『魔元の森』の核、ダンジョンコアがあるのよ」
そこにそびえている巨木こそが原因だ。と忌々しそうに睨み付けながら言った。
大樹への道を征く、次回はできれば8/2更新