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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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ピエトロの決意

ネロの家に国からの使者(国王)が来てから数日後、ネロ達四人はミディールの王都、テトラへと向かっていた。


 島から王都までは、半日かけて船で本土の港町へと渡り、そこから更に馬車を走らせて二日かけて辿り着く。 距離的にはそう遠くない距離である。


本来なら本土の港町に通ってる定期便に合わせて乗るのだが、今回は国からの招聘という事で国直属の船と馬車がそれぞれ用意されていた。


 現在ネロ達は本土の港町から王都へと向かう馬車の中にいる。

馬車の中では四人が男女向かい合わせになって座り、それぞれが城に着くまでの時間を潰している。


 エレナとエーテルは女子らしく乗ってから夢中で雑談をしている、かれこれ数時間は喋りっぱなしだが未だに会話が尽きる様子はない。

ネロは腕を組みながら眠っているが、馬車に慣れていないせいか時々馬車の揺れに反応し、ビクッとなって目を覚まし、すぐに眠るを繰り返している。


 そしてピエトロは、馬車の窓から見える景色を手に頬を乗せ眺めていた。

 窓の外に見えるのは何の変哲もない平原、そんな大地がただひたすら続いていた。あまり見どころのない景色ではあるが、ピエトロは表情を変えずひたすらじっと眺めていた。

別に見たいものがある訳でもない。

 ただ、強張っている自分の顔を少しでも三人に見られないようにするためだ。


 ピエトロは緊張していた。

 ネロ達が国から呼ばれた理由についてピエトロは大方見当はついている。

 恐らくミディールの民がアドラーで消息を絶っていることについてだろう。

そしてそれに関してゲルマとブルーノが関与していることも知っている。

 その事が知られれば、ブルーノの姓を持つ自分への反応は予想できる。


ネロ達は大丈夫と言うが、はっきり言って王の事を知らないピエトロにとってはそんな言葉だけでは安心できない。

一応どういう人物なのかは二人には聞いてみたが、返ってきた答えは


「バカ」

「え~と、王様らしくない王様?」


といういまいち説得力に欠ける言葉だった。


  本来なら自分は行かない方が得策なのだろうが、これから起こりうることを考えればそういう訳にもいかなかった。


ゲルマとブルーノは繋がっている……

 この結論に至った事がどれほど危険なことを意味しているのかを考えればそんな悠長なことは言ってられない。


現在アドラー帝国では、皇帝が率いる帝国軍とゲルマ、ブルーノの二大貴族の大きく三つの勢力に分かれ、水面下で対立している。

戦力差で言えばやはり帝国軍が頭一つ抜けており、ゲルマとブルーノはほぼ均衡と言ってもいいだろう。

争いになれば恐らく帝国軍が負けることはない、しかし同時に被害も甚大であることも確かであった。

 そしてどちらかが仕掛ければ、残った方がもう一つの勢力に満身創痍のところを狙われるため互いが互い手を出せず、結局牽制し合ったの状態が何年も続いている。


 しかし、そんな中で浮上したゲルマとブルーノとの同盟説、もし本当に手を組んでいるとなれば、流石の帝国も相手にするのは厳しいだろう。

そしてもし、その状況を打開するとなる方法は考えられる限り一つしかない。

それはミディールとの共闘、民が危険な目に遭わされているミディールと脅かされているアドラーの利害が一致した今、それが恐らく両者に考えられる最善の策だろう。


しかし、まだゲルマとブルーノの繋がりに気付いていない帝国側は、この案を拒むであろう。

 だからこそ説き伏せるためにもミディールからの使者として自分を使うように説得する必要がある。

 自分ならばアドラー皇帝を説得できる自信がある。


 しかし、その提案が通る可能性はハッキリ言って限りなくゼロに近い。

 いくら伯爵家の友人だからと言って他国の者を使者として使うなんて考えられないだろうし、ましてや問題の元凶となっている相手の子息、下手をすれば捕らえられ人質代わり、最悪処刑にされる可能性だってある。

 ただそれに関しては、もしされたとしても受け入れる覚悟はある、自分の家族たちがしてきたことを思えば当然の報いだろう。

 しかしその前にまずはこの状況を打破しないといけない。

そう決意したピエトロはこれから行う王たちとの会話をイメージしながら静かに到着するのを待っていた。


――


早朝から走らせていた馬車は正午過ぎにはテトラへとたどり着く。


「え⁉なに、ここ?」


 それが馬車の窓からテトラの街並みを覗いたエーテルの第一声だった。

 エーテルの眼に映るのは東方風の木造の建物から、南方の文化である石で出来た建物。

 外を歩く者達は一般的な布で出来た服から野性的な毛皮を用いた格好の人間など自由国家と言う名に相応しい異文化が混じり合った法則性のない街並みだった。


「ここは国の王都だからね、いろいろな文化が取り揃えてあって、外から来た人もミディールの民たちもいろんな文化を楽しめるようになってるのよ。」

「なんだか凄いね、でもそれだと文化の違いで諍いが起ったりしないの?」

「多少はあるみたいだけど、一応ここに来る人はそれをわかってくる人が多いからそんなに起こらないよ。それに起こったらすぐに衛兵さん達が駆け付けるから」

「へぇー、楽しそうな街ね~」


 色とりどりの建物が並ぶ街並みにエーテルが目を輝かせる、そして馬車はそんな街を通り抜けて目的地であるミディール城へと向かっていった。。



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