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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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初めての感情

首のなくなったオーガニクスの巨体がその場でドシリと大きな音をたてて崩れ落ちる。

倒れた音は静けさが漂う湖のほとりに大きく響いたが、レクサスはその音すら気づかないほど思考が回っていなかった。


 目の前にあるのはなんだ?自分の最高傑作であるはずのオーガニクスはどこに行った?

 今まで様々な実験と研究を繰り返してきたその明晰な頭脳も今は全く役に立っておらず、未だに何が起こったか理解できず、ただその場でたたずんでいる。

そしてそんな状態のレクサスをネロの一言が無理矢理現実へと引き戻す。


「悪いなぁ、ちょっと撫でたら壊れたわ、お前の最高傑作(・・・・)。」

「⁉︎」


 ――最高……傑作?


 その言葉でレクサスの思考が動き始める。

 そう、そこにある肉塊は自分の作った最強と呼べるモンスターの一体、オーガニクス。

それが今倒されたのだ、そこにいる子供に、一瞬で……


「……ざけるな……」

「は?」

「ふざけるなぁぁぁぁ‼︎」


レクサスが今まで出したことのない程の声量で叫んだ。


「そうだ!そいつは俺の最高傑作だ!何年もの間、何千体ものモルモットを使い、ありとあらゆる研究を重ねて作ったモンスターだ!それが貴様の様なガキに……認めん認めんゾォ‼︎」


かつて未だ自分でも感じたことのないほど怒りにレクサスが頭を掻き毟る。

力一杯掻きむしった手には何本もの毛が付着し、頭にはヒリヒリとした痛みを感じたが、それでもこの怒りは治まることはない。


「ハハハ、いいねぇその反応。きっと転生前の俺もそんな感じだったんだろうなぁ、少し性悪天使の気持ちがわかったよ。」


 そしてそんな様子をケラケラと笑うネロにレクサスは更に怒りを覚える。


「ヒュドラ‼︎ドルヘロス‼︎もう実験もデータも関係ない!このガキを、原型を残すことなくブチ殺せぇ!」


 冷静さを失い、腹の底から声を出し焦りと怒り混じりの号令をかけると、それに感化される様に二体のモンスターもいつもより大きな咆哮で答え、ネロの前に立ちはだかる。


 まず三つの首を持つモンスター、ドルヘロスが攻撃を仕掛ける。

ドルへロスのその特徴とも言える 鳥、龍、狼とそれぞれ違う姿の首の口から水、炎、雷で出来た巨大な球体を作り上げる。


「属性攻撃かよ、物理以外は困るんだよなぁ、服が破れるから。」


 不満を漏らしながらネロは自分に向かって放出された球体を高く飛び跳ねて避ける。

 ネロがそのまま見えぬほどの高さまで飛び上がるとそれを追ってドルヘロスも四本の足をバネの様に使って、同じ高さまで飛び上がる。

 地上からは目で追えないほど見えないほど高く飛んだ二体の影。


「そうだ……こいつが強いわけじゃない……オーガニクスが駄作だったんだ……ドルヘロスとヒュドラならこんな奴に負けるはずがない。」


 レクサスが自分に言い聞かせる様にブツブツと呟きながら上空のドルへロスを待つ。

すると上から何かがぶつかる様な激しい音が聞こえたかと思うと、レクサスの目の前に目で追うことすらできない速度で大きな物体が落下してきた。


 グシャリ


その落ちてきた物体は地面に叩きつけられると鈍い音を立てて潰れ、返り血がレクサスの顔を真っ赤に染めた。

 顔中に浴びた血を気にともせずレクサスはまた落ちてきた物体を見て絶句する。

 原型はとどめていないが僅かな痕跡からそれがドルへロスだと知る。

 そして、その後続いてネロがゆっくり地上に降りてきた。


「さて、後一体……」


――なんだ、何なんだこいつは……


 レクサスの表情がみるみる青ざめていく。

 ここまで追い詰められるとは予想もしていなかった。


――いや、まだだ、ヒュドラがいる!こいつこそ最強の中の最強、奴が人間である限りヒュドラは倒せない。


 ヒュドラ……緑色のスライムの体を持つドラゴンでレクサスの三体目のモンスター。

 そのスライムこそがヒュドラの本体で、その体にはどんなものでも溶かす猛毒があり、あらゆるドラゴンに引っ付いてはその肉体を溶かし自分の器として憑りつく習性をもつ。

 そしてその体を毒耐性のない人間が触れば触った部分は一瞬で溶け、更にそこから一瞬で毒が周り死に至る。


「こいつの体……いかにも、何か害がありそうだよな」


ヒュドラがそのドロドロした体をネロに向かって飛ばす。ネロは難なく避けるがその避けた代わりにかかった地面がジュッと音を立てて一瞬で溶ける。


「猛毒か、生憎まだ毒耐性スキルは持ってねぇから触れねぇなぁ……しゃあねぇアレやってみるか」。


 そう呟くとネロは両手を前に出して呪文を唱える。


「ウォーターレーザー!」


 ネロの言葉に合わせて手から勢いよく水が飛び出しヒュドラにかかる、しかし、ヒュドラの皮膚に触れた途端水はすぐさま蒸発する。


「ハ、ハハ、血迷ったか?ヒュドラの持つ毒は白龍の鱗さえ簡単に溶かす、そんな水なんかで倒せるわけなかろう」


 ネロが苦戦し悪あがきをしていると感じたレクサスの顔に再び笑みが浮かび始める、ネロは構わずそのままウォーターレーザーをヒュドラに当て続けた。

 するとネロが放つウォーターレーザーの水に徐々に変化が訪れ始める。


「な⁉︎」


「……おし、きたか」


 変化の起きた魔法にネロがニヤリと笑う。

 そしてウォーターレーザーは紫の光線に変わるとスライムの皮膚を貫きそのまま体を貫通した。


 穴を開けられたヒュドラの体は徐々にスライムの皮膚がそのまま地面に垂れ落ちていき、最後には巨大な龍の骨だけが残っていた。


「なるほど、攻撃が効かない敵になると変化するのか。」


――な、何だこいつはこれが人間の力か?


 気がつくとレクサスの身体は小刻みに震えていた。

 これは怒りによる震えでも武者震いの震えでもない完全なる恐怖。

 そしてその感情は今まで思うがままに生きてきたレクサスが初めて味わう感情だった。


――人間?いや、違う、こいつは…………人の皮を被った化け物だ。


――


 ネロがウォーターレーザーを撃った方の掌をまじまじと見つめる。

 何でこんな現象が起こるかはわかっていないが、発動条件がわかったことでネロは小さな笑みを見せる。


「さて、残るはお前だけだな。」


 ネロが一歩一歩レクサスに近づく


「く、クソ‼︎」


 ネロの一歩に合わせてレクサスも一歩ずつ後退する、しかしそのまま森の入り口付近まで追い詰められると、タイミングを見計らって、そのまま背を向け走り出した。


「あ、おい!待ちやがれお前にはまだ聞きたいことが……」


 ネロがすぐさまレクサスの後を追いかけようとするが、ふと道具袋に目を向けるとボイスカードが呼び出しを知らせる光を放っていることに気がつく。


――ボイスカード?エレナか?


「俺だ、どうした?何かあったのか?」

『あ、よかった、やっとつながった!ネロ、今大変なの!エーテルが、エーテルが獣人族達に攫われちゃった‼︎』


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