キメラ
「オーマぁ⁉」
エレナが告げた名前に、ネロは驚き、大声で聞き返す。
「うん、あの眼と言い見たこともない魔法と言い、オーマ族の眼よ」
「オーマ族って人種だろ?人間の眼を持つグリフォンなんてありえんのかよ⁉」
そう言い返すとエレナも顔をしかめる。
オーマの一族は魔人とも呼ばれている魔力が特化された人間の種族だ。
普通の魔法はもちろんの事、彼らにしか使えない魔法も多々あり、一族の位の高い血筋の者には赤子でも、普通の人間よりも高い魔力を持った子もいる。
そして外観こそ普通の人間と変わらないが、特徴して彼らの眼は、感情によって様々な色へと変化する眼を持っている。
確かに言われてみるとまさにこのグリフォンの額の眼はそのオーマの眼の特徴に一致し、魔法に関いても納得がいく。しかし人間以外にオーマの眼を持つものなど聞いたことがなかった。
「わからない、でもあれは間違いなくオーマの眼よ。」
「だから、なんでグリフォンなんかが持ってんだよ⁉」
「……合成獣だ」
隣で話を聞いていたザックが呟いた。
「ブルーノの奴は帝国と戦うために以前からモンスターの研究を行ってると聞いたことがある、多分、こいつも実験で作り上げた奴が逃げ出したんだ!だからこそ、公にしなかったんだ、国にバレないように普通のグリフォンとして処理させるために、クソ!そのせいでどれだけの者が被害をおったって言うんだ!」
ザックが怒りを交えた怒声で説明すると、ネロも舌打ちして、苛立ちを見せる
「アドラーもなかなか腐ってんな、前世の俺でも国に楯突こうなんて考えもしなかったぞ!」
――
「クソッなかなか降りてこねえ」
グリフォンとの戦闘から三十分。
戦いは一方的になっていた。
見えない高さからグリフォンは魔法をひたすら放ち続け、
手も足も出ないネロは避けることも防ぐこともせず、ひたすら耐えて好機を窺っていた。
「なあ、あれだけの攻撃を食らってあいつ大丈夫なのか?って言うかさっき近くに何かいなかったか?」
時間が経ち、少し落ち着きだしたザックがエレナに尋ねる。
「……多分大丈夫だと思います。レベルにも差があると思うんで。」
「レベルって確かゼロだよな?」
確か街中ではそう言われていたが、本人は否定しており、魔法をあれだけ受けて無傷な事からもうレベルゼロではないことは確かだろう。
「いえ、多分あれは正確に測れていないだけだと思います。」
「なら、あいつのレベルっていくつなんだ?」
「確かこの前、四千を超えたって言ってました。」
「……そ、そうか、ちなみにさっき近くにいたのは」
「ハエです。」
「……」
ザックはそれ以上聞くことはしなかった。
――
――クソッ、チクチクとうっとしいな。
ダメージこそごく僅かだがなにもできない状態にネロはかなりフラストレーションを溜めていた。
「ネロ!また来てるわ。」
姿を消したエーテルが声だけで敵の魔法の放った事を合図する。
「て言うかお前も、エレナのとこに隠れてろよ、姿は見てなくても攻撃は当たるんだろう?巻き添えくらうぞ。」
「フン、私が離れたら誰が攻撃を教えるのよ。」
――ぶっちゃけいらない。
エーテルが誇らしげにするが避けようとしないネロにとっては意味のない事だったが、言うとうるさそうなので、ネロは口にはしなかった。
—―しかし、これじゃあ埒があかねぇ、向こうには俺が見えてるんだよな?なら少し誘ってみるか
ネロは、相手の油断を誘うため、降りかかった風の魔法を受けると、少し大げさに、そして不自然にその場に倒れこんだ。
――ちょっとおかしかったか?
余り演技は得意でなく、少し小っ恥ずかしさもあってか、倒れ方もぎこちない。
普通の人から見れば少々怪しい倒れ方だったが、
モンスター程度を騙すには十分だったようで、降り続いていた魔法が止んだ。
しかし……
「え⁉︎ネ、ネ、ネロがやられたー⁉︎」
「え?嘘⁉︎そんな……」
「だから言わんこっちゃない!」
――お前らの頭も獣レベルか!
騙されたエーテルの声を筆頭に引っかかった余計な者たちまで駆け寄ってくると、心の中で思わずツッコミを入れる。
「バカ、なんで出て来てんだよ⁉」
「え?演技だったの?」
「今更あの程度でやられるかよ⁉お前は何年の付き合いだ!」
「わ、私は知ってたわよ?」
「一番初めに騒いだのお前だろ!」
騒いでるのが見えたのか、降りて来ていたグリフォンが再び上昇していく。
「あーもう!せっかく降りて来てたのに!あいつの方が頭いいんじゃねーのか?」
「ちょ、私たちとモンスターを一緒にしないでよ」
「せっかく誘ってたのに!」
「誘い出す……その手があったか……!」
ネロの言葉にザックが何かをひらめくと、腰に付けた道具袋の中に手を入れる。
「なあ、グリフォンは光るものに目がないんだよな?」
「あ、はい、そうですけど」
エレナの返事を聞くとザックは何かを探すように道具袋の漁り出す。
「何か囮になるもの……」
そして道具袋の中からペンダントを見つけ出すと、それをグリフォンに見えるように高く掲げた!
「おい、グリフォンこれを見ろ!」
そう言うとザックは手に持つ、ペンダントを揺らし、キラキラと輝かせ、グリフォンは意識をこちらに向ける。
するとグリフォンはネロと、ザックを交互に見比べると、標的をザックへと変えた。
「よし!」
ザックが手に持ったペンダントをちらつかせながらそのまま逆方向へと走っていった、するとグリフォンはザックへ急降下して行く。
「ネロ!今だ!」
「あいつ……」
ザックがそう叫ぶとネロは、ザックに目がけて降りてきたグリフォンに飛びかかると手刀で強引にグリフォンの体を引きちぎった。




