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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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最弱の魔法

――まずい、非常にまずいぞ、これは


 目の前で自分の手から抜け出そうともがくドラゴンにネロは焦りを覚える。


 多分このまま戦い続けてもネロが負けることはありえない。

 しかし、勝つことも極めて難しい、何故ならネロは魔法に関しては全く持って、力を注いでいなかったからだ。


 ネロが覚えている魔法は二つ。


 一つは分析魔法『サーチ』

 これは相手のステータスを読み取る補助系魔法で殺傷能力は一切ない。


 そして二つ目は、水系初級魔法、『ウォーターレーザー』だ。


 前世の時と同じように魔法の暴発を恐れ、魔法は覚えないことにしていたネロが

 魔法に憧れ、どうしても使いたくて、数ある魔法の中から率先して選んだ、最弱の魔法。

それがウォーターレーザー。


 名前こそカッコいいが、簡単に言えば水鉄砲の様なもので、いたってシンプルな魔法だ。


 水の水圧でダメージを与えるこの魔法は、威力は低く、相手を遠くに飛ばすには効果的だが、これ自体で敵を倒すとなるとそれなりの魔力がいる。


ネロは魔法に関しては全く持って鍛えていないので、魔力は高くなく、レベル三八〇八と言っても敵を簡単に倒せるのは頑張ってせいぜい見積もって八〇程度のモンスターが限度だ。


レベル一七〇で水に耐性のあるドラゴン族のホーセントドラゴンをこの魔法で倒そうとなると、大木をハサミで切りたおすようなもので、かなりの時間と根気がいる。


――さて、どうする?


ネロはここで倒す方法を三つの方法を考える。


 一つ目

 ホーセントドラゴンをこのまま出入り口まで引っ張っていき、そしてここから遠くに離れた場所へと放り投げる。

 これは手っ取り早くて簡単でやり方としては非常に楽だ。しかし欠点として、投げた場所に町や村があると、その街に被害が及ぶので極力避けたい方法でもある。


 そして二つ目

 内容自体は一つ目とほとんど一緒だが、投げる場所を海に変更する、こうすれば被害も出ることもないし敵を溺死でも殺せるので一石二鳥、ただ、仮にこのモンスターが水中の中でも生きられるとなると、後々大変なことになるのは目に見えているで、失敗した時のリスクは高い。


 最後の三つ目

 もうあきらめてウォーターレーザーでチマチマと攻撃していき倒す。これが被害を考えれば一番妥当だが、はっきり言ってネロ自身が面倒くさい、これで倒すのにはどれくらいの時間がかかるかもわからない。


 しかしいろいろ考えると、選択肢としては三つ目しかない、というより上二つはホーセントドラゴンを調べたがっているエレナが怒りそうだ。


――……どうする?覚悟を決めるか?


 前を向けば頭を抑えられた、ホーセントドラゴンが必死でもがきジタバタしている。その光景はもうトカゲにしか見えない。そして後ろを向けば、レンジがかなり焦っている。


――……仕方ないか


 ネロは観念すると、そのトカゲを前にぶん投げる、そして右手を前に出し、左手で右手のブレを抑える


 そして標準を敵に向けると目を閉じ魔法を唱える。


「ウォーターレーザー!」


 唱えた呪文と同時に、右手が青色に光ると、そこから勢いよく水が一直線に飛び出る。


 その水は、ドラゴンの頭の一点に集中し、水圧でドラゴンを押し込む。

わずかにダメージを与えられてはいるが、やはりこの力では相手に大きなダメージを与えるのは難しい。


――こりゃ根気戦だな


 そう考えてた矢先の事だった。


 水を発射している右手から突如、紫の色をした電気がバチバチと音を鳴らしながら発生する。


「は?」


 唐突の出来事に訳も分からず困惑するが、そのまま、かまわず攻撃を続ける。

 するとその電気が、自分の出しているウォーターレーザーを囲い、渦のように回転しだす。


 そして回転スピードが徐々に上がり始めると、噴出している青色の水が紫色のビームに変わり始める。


――な、なんだ?何が起きているんだ? 

自分でも何が起きているのかわからず困惑する。


 そして水からビームへと完全に変わり遂げた、ウォーターレーザーは、敵の頭をいとも簡単に貫いた。

 頭を貫かれたホーセントドラゴンは、今一度悲鳴のような咆哮を上げると、そのままゆっくりと崩れ落ちていった。


――……なんだ今の?


 訳も分からないままネロは水の出ていた右手を見つめる。

 開く、握るの動作を数回繰り返して見せるが、特に傷みも何も感じない。

 ステータスを確認するが特に魔力が上がったわけでも、スキルが付いたわけでもなく、覚えている魔法もウォーターレーザのままだ。


 唯々、茫然としていると、突如聞こえた雄たけびと共に、後ろから頭を捕まれる。


「うおおお!、お前、やるじゃねえか!本当にあの化けもんを倒すなんて!」


 一度襲われた際に、死を覚悟していたレンジの喜びようは、大きく、

後ろからネロの首に腕をまわすとそのまま頭をクシャクシャにする。


「おい、コラ、やめろ愚民の分際で気安く触るな!」

「もう、愚民でも何でもいい!とにかく助かった!本当にありがとな!」


 似合わないハシャギっぷりのレンジにネロは精一杯抵抗する。

 本来のネロの力なら、容易く振りほどけるはずなのに、この時は何故だか、なかなか振りほどくことができなかった。


 そして、頭を荒々しく撫でられることに、顔を赤くして抵抗するネロの今の姿は、褒められたことを恥ずかしがる、どこにでもいる普通の少年だった。



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