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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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変化

 鉱山のテッペンから日が登り、朝がやってくると、ネロたちは早速準備をして鉱山へと向かった。

 鉱山は家からでも遠目で確認できるが、すぐにつくような距離ではない。ネロは着くまでの道のりで、昨日調べたモンスターの話を二人に聞かせていた。


「ホ、ホーセントドラゴン⁉」


 ネロの口から出てきたモンスターの名前に、エレナが凄い勢いで食いついた。


「ま、まあ待て、まだ決まったわけじゃ――」

「でも、可能性は高いのよね⁉」


グイグイ突っ込んでくるエレナに、ネロがのけ反りながら頷くと、エレナはその青色の瞳をキラキラと輝かせた。


「ホーセントドラゴンかぁ…… 体長は約三メートルから五メートルほどある蛇型のモンスターで全身が鉱石で覆われていてその鉱石は生息地で取れる鉱物によって変わってくるといわれているドラゴン。

 しかもダイヤモンドなどの硬い鉱石で覆われているドラゴンはレベルも高くてかなりのレアモンスターでもあったりするって言う……」


 昨日自分が図鑑を見て調べた特徴を、何も見ずに早口で読み上げるエレナのマニアっぷりに若干引き気味になる。もしかして図鑑を全部暗記してるんじゃないか?と思ってしまうほどだ。


「で、どうなんだよ?こいつで合っていそうなのか?」

「え?」


 不意に話しかけられ、レイジは戸惑うも、すぐさま聞いた情報と鉱山のモンスターの情報を照らし合わせる。目を閉じ、少し考え込んだ後、レイジは大きく頷いた。


「うん、特徴も似ているし、多分そのモンスターで間違いないと思う。」


 レイジの太鼓判が出ると、エレナが飛び跳ねて喜んだ。


「そうか、で?ここで取れる主な鉱石は何なんだ?」

「基本的にとれるのは銅だよ、後はたまに銀や水晶、運がいいと宝石類も取れたりするよ。」


 そう聞いたネロは、舌打ちしながら「みみっちい鉱山だなぁ」と不服そうに呟いた。


 しかし、そんなネロを見ながら飛び跳ね終えたエレナが、少しニヤニヤしている。


「……なんだよ、ニヤニヤして。」

「ううん、ただなんか、ネロが変わってきたなーと思って。」


 そう言われると顔を少し染めながら強く否定する。


「は、はぁ?別に何も変わってねーだろ!」

「そうだね、昨日と比べてなんか違うよ」

「変わってねーよ!、ふざけたこと言ってんじゃねーぞ⁉愚民の分際で!」


 いつもの様にきつい口調で振舞って見せるが、もうそれ自体が変わっていると思われている事にネロは気づいていない。


 ネロが平民のレイジと会話をしている。

 態度は相変わらず悪いが、それでも用事がある時以外はエレナに任せて、平民とほとんど会話をしようとしなかったネロが今、レイジと普通に雑談をかわしているのだ。


 そしてネロが変わったと言える何よりの証拠が、ネロの後ろにいた。


「ところで、どうしてコルルも一緒に?」

 

 先程からずっとネロの後ろについてくるコルル。その姿は兄弟のように見え微笑ましかった。


「危ないのは鉱山の中なんだから入り口にならいたって問題ないだろ? あんなボロ小屋にいようが外にいようが変わらんだろしな」


 嫌味ったらしく言うが、要はコルルを一人にしておきたくないだけだ。

 そう気づくとエレナとレイジが顔を見合わせ、そして少し不機嫌そうな顔をするネロを見てクスクスと笑った。




――

鉱山の現場に来ると、他の作業者たちと今日の事を話し合うため、一度レイジはコルルを連れて離れる、ネロとエレナは話し終えるまでの間、少し辺りを散策することにした。


 周りには鉱山を掘るための道具が入った倉庫や、手作り感満載のちっぽけな休憩所、掘った鉱石の屑鉄を捨てる廃棄場所が設けてあり、地面には作業員や鉱石を乗せるトロッコの走る道となっている線路が鉱山の中にまで続いている。

 鉱山を掘るための様々なシステムや工夫も見られ、二人はそれらを物珍しそうに眺める。


「凄いねぇ……鉱石ってこうやっていろいろ工夫をして掘られてるんだねえ。」

 

 本に載ってあることだけではわからないこともある、それを思い知らされたエレナはすごく感動していた。


「別にこんな大掛かりなことしなくても掘れんだろ」

「ネロと普通の人を一緒にしないでよ、それならネロも掘ってみる?」


 そう問われるとネロは暫く黙り込む。そしてしばらく間を置くと「貴族のする事じゃない」と言って再び足を進めた。


 二人が辺りを大体見終えると、作業員たちが少しざわついてる事に気づく。


「何かあったのですか?」


 エレナが一番近くにいた作業員に尋ねる。すると作業員は少し困った顔をしながら状況を説明した。


「ああ、君達か、実は先程中の様子を見に行ってきたんだが、例の怪物が動き回った形跡があってね、すこし中が荒れていたんだよ。」


 どうやら、モンスターの痕跡により少し中が脆くなって崩れていたらしい。


「中に人はいなかったのですか?」

「ああ、作業を止めていたこともあって幸い中に人は――」


 いない、そう言おうとしたところで、作業員の話を遮るように離れたところから声が上がった。


 声の聞こえた方に行くと、そこには複数のトロッコが横一列に並んでいる中、一つだけ線路の上にトロッコが見当たらないのがあった。


 トロッコは基本線路から外すことはない、そこにないと言うことは、誰かが使ったという事になる。

そしてそのトロッコの線路はそのまま鉱山の中につながっている。


「誰か中に入ったのか?」

「いや、そんなはずは……」


 朝一番に来ていた作業員たちが不思議そうに見ていると、レイジがまだレンジの姿をまた見ていない事に気づく。


「……レンジがいない⁉」


レイジの言葉に周りからどよめきが起こる。


「なんだと⁉一体いつの間に⁉」

「まさか昨日から?それだと少しヤバくないか?」

「あいつ、まさかこんな時にもここに来てたのか……」

 

 周りがざわつき始めるとコルルが不安そうな表情でネロの袖をギュッと掴む。


「ったく、これだから愚民は……。」


 ネロが呆れながらそう呟くとコルルを安心させるようにポンと頭の上に手を乗せる。

 そして鉱山の入り口へとゆっくり足を進める。


「あ、ネロ!」

「ちょっくら、モンスター退治に行って来る。ついでに、あいつも見つけたら拾ってやるよ。」


 まるで買い物に出かけるような、物言いでエレナに言うと、ネロはスタスタと鉱山の中に入って行った。


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