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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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初めての町


 島を離れてから三日が経ち、最初の目的の場所であるイスンダル大陸の港町、テットが見えてきた。

 この三日間の間、ネロはエレナから教えてもらった情報を元にこれからの目的を考えていた。


 エレナから教えてもらった情報によると、即死耐性のスキルに関しては割といろんなモンスターが持っており、旅をしていれば自然と会えるのではないかとのこと。

 なので即死耐性はは後回しにして、まず毒耐性のスキルをもつモンスターを探すことにした。


 今、毒耐性を持っているのがわかっているのは、妖精を統べている妖精の女王(フェアリークイーン)

 妖精自体が誰も見たものがおらず、幻とまでいわれているなか、その女王を探さなければならない。


そんないるかどうかもわからないものを、限られた時間の中で追い続けるなんて無謀だとも言えるだろうが、今この情報以外に頼れるものもない。

なので、当分の目的は妖精に関する情報集めとなっていた。



――

 船が港に着くと、ネロは久々に浴びる日差しと空気に大きく伸びをする。

 この船旅の間は、船員に関わりたくないという理由で、ネロは一歩も部屋から出ていなかった。

 一方、それとは正反対にエレナは船員達と交流しており、様々な情報を仕入れていた。


「ネロ様、エレナ様、船旅お疲れ様でした。では我々は一旦ガガ島に戻ります。」

「どうもありがとうございました。」


 エレナが船員達に挨拶を交わす中、ネロは見向きもせずに、港へと降りていった。


「あっ、ちょっとネロ……もう」


 エレナが頭を下げると船員は苦笑いをした。


「いいんですよ、私達はいろんなとこを行き来しているのでああいう人には慣れていますから……ただ、私達は大丈夫ですがこの国、アドラー帝国の平民の方々は貴族をあまり快く思ってない人が多いので、ネロ様の行動には充分ご注意を。」


 そう忠告を聞くとエレナはもう一度お礼を言い、駆け足でネロの元へと走っていった。



――さて、どうしたものかな。


 ネロは港に降りると、遠くに見える買い物客で賑わう市場に目を向けた。

 新鮮な魚や、他国の物品が売られている市場は、そこにいる人数だけでガガ島の住民くらいいるんじゃないかと思えるほどだった。


 ネロは人混みが苦手だ。異世界に転生する前の時は人混みにいると気分を悪くし、前世では人混みの中に入る事を避け続け、一度も入ったことがなかった。


 どれだけレベルが上がろうが、苦手なものが克服できるわけでもなく、三千八百八という異次元なレベルの持ち主ながらネロは今でも人混みが苦手なままだった。


 買い物をするしない関わらず、港から町の外に行くにはこの場所を通らなければならない。


市場の入り口まで来たものの、人混みに入るのを躊躇っていると、自分の名を呼びながら駆け足でエレナがこちらへと向かってきた。


「ふう、なんとか追いついた。それにしても凄い人だかりだね。」


 エレナが島では見ることのないほどの賑わう市場を見て、眼を輝かせた。


「そうだな……ここに火を放って全員を焼き殺したいよ」

「もう、またそんなこと言って……」


 そう言ってエレナが呆れるような表情を浮かべるが、それ以上は言ってこなかった。

 ネロの知る彼女は正義感の塊のような性格で、本来ならこんなことを言えば、もっと説教でもしてきそうなのに何も言ってこない。

そのことにどうも違和感が拭えない。


 しかし、こちらからそれを訪ねると、後々めんどくさそうなので追及はしなかった。


「とりあえず今日は、この町の宿屋に泊まろうよ。」

「そうだな、今後の事も考えたいしな。」

「じゃ、じゃあ、その……人混みではぐれないように、手、ててててて……」


 エレナが恒例のようにモジモジしながら顔を赤色に染め始めると、ネロはいつも通りにスルーをし、人混みに目を向ける。

 そして覚悟を決めると、人混みの中に足を踏み入れていった。




――クラブ亭

 その名前が書かれた看板をみると、店の前で一度立ち止まり、店を見る。

 外見の古臭さと、店の外まで聞こえて来る中の声に、ネロは不快感を表す。

どうやら中は酒場にもなっているようだ。


「他に宿はないのか?」

「この町の宿はここだけみたいよ。クラブ亭って名前だけど、自慢はロブスター料理だって」


 エレナが親しくなった船員からもらったアドラー帝国の町の観光ガイドを見ながら説明する。


 人混みに揉まれ一刻も早く休みたいネロは、不満に思いつつも、渋々店へと入る。

二人がドアを開くと、店にいる全員が二人に視線を向けた。

 

軽装ながらも質のいい素材の服と、エレナの着ているドレスが場違いなこの店では、二人の姿は自然と注目を集めた。


「臭い、汚い、うるさい、環境は最悪だが、まあ屋根があるだけマシか」

 

ネロが店に入ると早々、不満を漏らす。その言葉に周りの雰囲気が一気に険悪なものに変わり、エレナが小声で慎むよう諭すが、そんな事を気にしようともせずに、早々とカウンターまで歩いていく。


「この宿で一番良い二人部屋を用意しろ。」

「……お生憎ですが、貴族様を泊められる部屋は用意してございません。」


 厳つい亭主が皮肉言って拒むが、ネロはそれに気づかずそのまま続けた。


「そんな事は、わかってる。だからこの宿の最高の部屋で我慢してやるって言ってるんだよ。」

「わかってねぇなぁ……この宿に貴族を泊める部屋なんてねぇって言ってんだよ!」


 今度は明確に断られると、ネロの表情は一気に険しくなり、一触即発の雰囲気に変わる。


「なんだと?家畜の分際で、いいからとっとと部屋を用意――」


 その直後、ゴンッという音と共に後頭部に衝撃が走り、思わずよろめいてしまう。

 何事かと後ろを振り向くと、エレナが大きなおもちゃのハンマーのような物を担いでいた。


 ピヨピヨハンマー。

 初級の打撃魔法で、ダメージは一切ないが、相手を一瞬のけ反らせる魔法だ。

 ダメージに関しては並大抵の攻撃じゃ効くことがないネロだが、こういう魔法は一切防御が関係ないのでネロにとっては天敵となりうる魔法であった。


「お前。何すん――」

「ごめんなさい、ごめんなさい、この人ちょっと世間知らずなんです。」


頭を押し込み無理やり頭を下げさせる。

ネロが文句を言おうとすると、エレナが一度口を塞ぎ、周りに聞こえないように、隅まで引っ張って行ってから改めて、小声で話し始めた。


「お前、なんのつもりだよ?」

「旅始めでいきなり騒ぎ起こしてどうすんのよ?」

「そんなの俺の勝手だろ?平民の奴らには立場をわからせ――」

「あんまり騒ぐと、お父様の耳にも入るわよ」


 その言葉にネロの言葉がピタッと止まる、ネロにとってそれは最悪の事態であるからだ。

 エレナの父がもし、町で騒動を起こしたことを知れば、必ず刺客を送って、連れ戻しに来るだろう。そうなればネロの旅は即座に終わってしまう。


 ネロは不本意に思いながらも、自分の口を閉じると、亭主との話はエレナに託すことにした。


「失礼なもの言い方をいってすみません、改めてお願いしたいのですが、この店で一泊させてもらえないでしょうか?」


「へ、こっちのお嬢ちゃんはそちらの坊主と違って礼儀がなってるじゃねーか。」


 ネロは亭主の言葉にムッとし、突っかかろうと前に出ようとするが、エレナに横目で睨まれるとすぐさま思い止まる。


「しかし、悪いがお断りだ。」

「どうしてですか?」

「あんたらがどこの国の貴族かは知らんが、アドラーの民達は貴族の重税に苦しんでる奴らばかりなんだ、平民から金をむしり取る貴族なんかを泊めたらうちの客達の飲む酒も不味くなるってもんよ。」

「そんな……」


 エレナが困り果てた表情を浮かべる。


「結局一緖じゃねーか、やっぱりここは力でねじ伏せ――」

「ネロは少し黙ってて!」


 エレナに怒鳴られると、ネロは思わず萎縮してしまう。

不機嫌な女子に火の油をそそぐようなことは危険だと本能が知らせていた。


「お願いします、他に頼れるとこもないんです」


 エレナが必死で頭を下げる、ネロは言いつけ通り黙って見ていた。


「……そこまで言うなら、いいだろう。だが貴族からは金は受けとらねぇ、代わりに体で払ってもらうがな」


そう言うと亭主は、エレナを見ながら意地の悪そうな笑みを浮かべた。

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