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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
 

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再会

 放課後の学校はいつも騒がしい。

 皆それぞれが、目指すもののために自らの意思で入学してきたこともあって、向上心の高い生徒が多いこの騎士団学校では、授業が終わり自由時間となる放課後に、一斉に鍛錬を始めるからだ。


 鍛錬場が使えない成績下位の生徒は、教師からの課題をこなしつつ理論やフォームなどを確認し、次の実践の授業で試す、誰もができることをコツコツ行い成績上位を目指している。


 そして、今日はいつも以上に騒がしかった。

 理由は明日から行われる、タッグ戦によるものだった。

 元々明日は入学後、初めての試験がある日であったが、何故か急遽タッグ戦に変更されたことで生徒たちはパニック状態に陥っている。

 当然と言えば当然だろう、皆ここ数日タッグ戦は二の次で、試験に向けて鍛錬してきたのにも関わらず、前日に変更されたところで生徒たちは準備などしておらず、誰もまだタッグを組むパートナーを決められていない。


 原則として、同じ科同士のタッグは禁止とされているので他の科の人間を誘わなければならないのだが、

 まだ入学して一ヶ月、合同授業も始まったばかりで殆どの生徒が他クラスと関りがない。

 誰がどのような性格で、どんなことを得意とするなどと言った情報はない、そうなれば選ぶ基準は自然と成績が基準となり、上位の人間や合同授業で組んだことのある者同士で組むことが多くなる。

 なので現在一年生たちはあちこちでパートナー選びが勃発していた。


「俺と組まないか!」

「いや、俺と組もう!俺の方が順位が上だぞ!」

「やっぱり、前衛がほしいから多少成績が悪い人でも戦士科をだな……」

「……いい感じで盛り上がってんなあ……」


 クラスの様子を寮部屋の五人と見て、シュウゼルが他人ごとのように呟く。


「いや、これは盛り上がっているというよりパニックになってるだけだよ。」

「逆にお前はなんでそんな余裕なんだよ。」

「別に、誰でも一緒だしな。」


 優勝を目指す気もなければ、剣士としての才能もあるシュウゼルにとって誰と組もうが興味はなかった。


「そう言うお前らはもういるのかよ?」

「いるわけないだろ、今日聞いたところだぜ?」

「俺もだ。」

「へへーん、俺はいるぜ、なんたって成績五位だからな。休み時間に剣士科の奴に声かけられたよ。」

「凄いなあ、僕は下位だから見向きもされないよ。」


 人数を考えれば余ることはないので最終的には誰かと組むことになるだろうが、成績はあまり期待できないだろう。

 唯一の前衛の戦士科は人気が高いから、順位の低い生徒でも引く手が余るだろうが、他三クラスは後衛なので成績上位から順に相手が決まってくるだろう。

 そうなれば最後は、後衛下位同士で組むことになるので優勝は絶望的になる。


 そんな話をしていると、教室の出入り口付近がざわつき始める。目を向けるとフローラがやってきており王子の元へと歩み寄っていた。


「へえ、やっぱロンダブルはトーマス王子とか。」

「まあ妥当なんだろうが、そうなると優勝はあの二人で決定だよな。」


 魔法科主席と剣士科主席の二人を見て、バダック達があきらめ気味に言う。

 実際、フローラがいれば回復科最下位でも、優勝できるだろう。


 ――ホント、遠くに行ってしまったな。


 入学して一ヶ月、出会っても遠くから見るだけで会話もままならない。今のフローラは公爵令嬢でありシュウゼルは平民だ。平民と貴族の関係はシュウゼルは()()知っている。

 トーマスが膝を付きフローラに手を差し伸べる。どちらも美形でまるで物語の王子と姫のように絵になっている、実際は王子と騎士なので逆ではあるが。

 皆の前でよくできるなとシュウゼルが関心しながら見てると、何故かフローラはその手を取らずに頭を下げ、そのままこちらに向かってきた。


「シュウゼル・クラウス、私はフランソア・ロンダブルと言うものだが、明日のタッグ戦、私のパートナーになってはくれないか?」

「……ん?」

「……は?」

「……え?」

「……えぇ⁉」


 そして未だに聞き慣れない名前を名乗ったフローラが、シュウゼルにタッグを申し込んでくると、関係を知らない四人がそれぞれに見合った反応を示す。


「……」


 シュウゼルはその手を取るか考える、今の自分は平民でフランソアは公爵家であるそんな気軽に手を取っていいものなのか。


 ――……いや、そんなこと考えるのはらしくねえな。


 ()()()()は身分など考えるような性格ではない。

 なら申し出を断る理由などない、何故ならこの日のためにシュウゼルはここにいるのだから。


「ちなみに拒否権は?」

「勿論ないよ。」


 そう返事をしたフローラの顔は、ロンダブル公爵家の天才剣士ではなく、自分のよく知るパン屋の娘だった。


「そっか……じゃあ、仕方ねえよな!」


 そしてシュウゼルはフローラの手を取った……。


「ふざけるな!そんなの認めない!」


 二人のやりとりを見ていた、トーマスの取り巻き二人が抗議の声を上げると、フローラが再び凛々しい顔つきに戻る。


「認めないとは?」

「あ、いや、あなたとその生徒じゃ余りに釣り合わないんじゃないかと、ほら、そいつ成績最下位だし……」

「私としてはそちらの方が都合がいいですよ、私はロンダブルの人間としてより険しい道を歩みたいのですから。」


 実際その考えは間違いでもない。タッグ戦とはいえ片方一人の一方的な活躍で勝ったところで評価されるのは片方だけ、だが逆に個人で評価が欲しい者は弱い相手と組んだ方がより自分の実力を示すことができる。


「だけど……それでも彼は平民です!」


――お、本音が出たな。


「おい、貴様も断れよ。」


そして取り巻き二人が今度はシュウゼルの方に標的を変え噛みついてくる。


「断る理由が見当たらない。」

「なんだと⁉」

「この学園では身分は問わないのがルールだろ?なら戦士科首位からのお誘いを断る理由なんてないだろ。」


そう言われると、向こうは反論できずに歯ぎしりをしながらひたすらシュウゼルを睨みつけている。


「そう言う事です、では私たちは明日のついて話をするので失礼します。」


 そう言うと、フローラはシュウゼルの手を取り、空気の凍った教室を後にした。

 そして、人気のない校舎裏まで行くと、フローラは立ち止まり大きく伸びをした。


「ふう、やっと落ち着けるところまで来れたあー」

「あれ?さっきまでいた凛々しい公爵令嬢は?」

「フフッ懐かしいクラシアの匂いに引っ込んだかな?」


 そう言ってフローラが後ろを振り返りおどけてみせると、改めてシュウゼルの姿を見てにっこり笑った。


「二年ぶりだね、シュウゼル!」

「ああ、フローラ。」


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