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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
 

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ゼシアン・シベル

 各クラス主席のお披露目が終わると、それぞれのグループでの実習訓練が始まる。

 シュウゼルのいる下位グループの担当顧問は、担任を受け持つ教師の中で一番若い戦士科の教師になったのだが……


「……」

「い、いやぁ~お久しぶりだな、クラウス。」


 戦士科の担任であり、入学試験を担当もしていたブライスが苦笑いを浮かべて話しかけてくるが、シュウゼルは眉間にしわを寄せながら無言でブライスを睨み続ける。


「え、え~と……とにかくすまんかった!」

「なにが?」

「それは勿論……え、えーと、例の件の事だけど」

「例の件ねえ……」


 ブライスが手を合わせて頭をさげるも、生徒の眼もあるから具体的な言葉は言おうとしない。

 他の生徒たちは魔法科最下位の生徒に会っていきなり謝る戦士科顧問の姿に状況がわからず、少し困惑を見せている。


「ま、別にいいけど。この埋め合わせは絶対してもらうからな。」

「あ、ああ。」


 シュウゼルが空気を読んで打ち切ると、ブライスも少し安堵の様子を見せる。そして改めて実習に入っていく。


「いいか、例え実力がなくても連携を揃えれば実力者に勝てる可能性は十分にある、そして更に実力を身に付ければ更に上をも目指せる、だからこそ下位グループは連携の重要性をよく知ってほしい。」

「「「はい!」」」


 実習に入るとブライスも気持ちを切り替えたのか教員らしく、指導する。

 各科の同じ順位の生徒二人組で組ませて、一組ずつ連携を見て対応や連携方法を丁寧にアドバイスしている。

 生徒たちも成績が良くない下位のグループである分、強くなろうと皆、ブライスの言葉に貪欲に耳を傾けている。

 そしてシュウゼルの番になると、シュウゼルは回復術師科の女子生徒と組むこととなった。


「クラウス君、援護をお願い……」

「わかった。」


 シュウゼルはブライスに習った連携で式神と戦い始める。

 バフの魔法を詠唱中の彼女に敵である式神が近づかないよう魔法で援護する。

 シュウゼルと同じく最下位の子だけあって、詠唱にもたついてはいるが、シュウゼルが魔法でしっかり自分を守っているの確認すると、徐々に落ち着き始め時間をかけながらも身体強化の魔法を発動させる。

 そしてそれを確認すると、シュウゼルはバフの効果を口実に魔術師らしからぬ動きを見せてダガーで式神を斬り捨てた。


「やった!」

「よし!」


 連携で式神を倒すと、二人でハイタッチをして喜びを分かち合う。


「……やはり惜しいな」


 シュウゼルの動きを見たブライスが、ぽつりと呟くがシュウゼルは気づくことなく元の列へと戻っていく。


「よし、そこまで。二人とも、いい連携だったぞ。じゃあこれで一通り終わったな、じゃあ次はパートナーを変えて――」

「なんだと⁉もういっぺん言ってみろ!」


 ブライスが次の指示を出していると、その声を遮るように少し離れたところから怒鳴り声が聞こえて来た。

 皆が一斉にそちらに顔を向けると、実践中の上位グループで男女が何やら言い合っていた。


「何度だって言ってやるわ、あなたは他の人と比べて圧っ倒的に実力不足なのよ、下位どころか入学すら怪しい実力(レベル)じゃない!」

「貴様!俺が誰だかわかってるのか⁉俺はシベル侯爵家の長男――」

「知ったこっちゃないわ!ここは実力主義の騎士団学校よ、身分じゃなく実力で黙らせなさいよ!」


 言い合っているのは、回復術術師主席のハロルドと、戦士科次席であるゼシアン・シベルだった。

 それを見たブライスが呆れたように大きなため息を吐く。


「またあいつらか……」

「……なあ、シベルって奴は落ちてなかったか?」


 シュウゼルがシベルの姿を見てブライスに尋ねる、あまり人の顔を覚えるのは得意ではないが試験の時もああやって騒いでいたのでよく印象に残っていた。

 そしてその質問にブライスは答えない。


「言わせておけば……ド田舎から来た平民の分際で――」

「いや、彼女の言う通りだよ。」

「で、殿下⁉️」


 シベルとハロルドの言い合いに、王子の身分であるトーマスと、ハロルドと顔見知りらしい

 弓科主席のクルーズが仲裁に入る。


「ここは実力の世界だ、立場を持ち出すのは間違っている。」

「しかし、この女が――」

「ゼシアン・シベル。」

「……はい。」

「……お前も、わざわざ刺激するようないい方はするな。」

「フン、ハッキリ言わないと舐められるでしょ?」


 二人の仲裁により、争いこそ止まったが、今のやり取りは全生徒の目に留まり、大いにざわつかせていた。


「はあ……一番実力のあるあなた方が一番連携が取れないとは、折角これほどの逸材が揃っているというのに――」

「ハッハッハ、でも逆に言えばタッグ戦や試験でも色んな選手にチャンスがありそうですな。」


 頭を抱えるとブラットとお気楽そうに笑う、弓科担任の中堅教師のモービス。

 色々と課題や問題が見え隠れしたまま、第一回目の合同実習は終わりを告げた。

 そして、そんな実習から一週間後、明日に最初の試験が行われるはずだったのだが……


「突然ですが、皆様に連絡です。昨日通達があり、今年の試験はタッグ戦の後に行われることになりました。」


 突然の連絡に教室がざわつく。


「どうしてですか?」

「私も日程の都合としか聞いていませんので詳細はわかりかねます、試験は順位の入れ替えは勿論、タッグ戦のパートナー選びや、戦う際に参考にする個々の能力の情報の更新も兼ねているので、本来であれば先に試験を行うのですが……まあ上から声に我々は異を唱えることはできませんので。」


 そう言って話を切り上げると、ブラットは酷く疲れた顔で教室を出ていった。

 そして、教師がいなくなって教室が生徒たちの時間になると、一気に今の話で持ちきりになり、寮部屋メンバーも、その話をしにシュウゼルの席に集まっていた。


「……いくら何でも急すぎじゃない、試験は元々明日だよ?」

「ブラット先生も対応に追われてたのか、凄い疲れた顔してたしな。」


 先ほどのブラットの表情も見てもこれがあらかじめ決まっていたことではないのは分かる。

 問題は何故急に予定が変わったのか。


「今の順位でタッグ戦に臨みたい奴の差し金じゃないか?まあ恐らく貴族だろうな。」

「でもそんな急に変える必要性ってあるのか?」

「順位は大事だよ。先生も言ってたけど試験の成績は実力をタッグ戦は基本自由に組む相手を決められるけどその時に順位も参考にすると思うからね。」

「特に初め試験は順位変動が大きいって話だ、家庭教師のいた貴族たちは入学当初こそ優位だったけど、授業が始まって徐々にその差が縮まり始めるからな。」


 確かにこの前の合同訓練で見た時も実力が見合っていない順位の生徒たちが何人かいた、試験を受ければ恐らく大きく順位を落とす可能性は十分ある。


「あまり大きい声では言えないけど、王子と主席組を組ませやすいようにしたんじゃないかな?タッグ戦は国の上層部にも伝わるし。」

「元々実力のある王子がわざわざそんなことする必要はないだろ?どちらかと言えばシベルじゃないか?」


 シュウゼル出した名前に四人は納得の声を上げる。

 組む相手は自由と言っても、流石に一位であるフローラと王子であるトーマスは組むことになるだろう、本人もそれを望んでいるようだったし。そう考えると怪しいのはやはりゼシアン・シベルになる、合同授業でも順位と実力の差が目立っており、ブライスの反応を見るに問題児なのは確かだ。

 

――それにあいつは不合格を言い渡されてたのに、入学してるのも怪しい。


「ゼシアン・シベルか……侯爵家のようだが、それほど権力があるのだろうか?」

「さあ、平民の俺達に貴族の事は分からねえよ、」


 なんにせよ何らかのの思惑はあるようだ。





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